24.珍しい伴魂
◇◇ ◇◇
見つけたのは偶然だった。
「なぜ見つけたのか」「なぜ気付いたのか」
聞かれても、小首をかしげながら「何となく」としか答えられない。
フィーナが授業を終えて寮室へ戻ろうと廊下を歩いていると、外の茂みの揺らぎが視界の隅に映った。
(――何?)
鳥にしては茂みの下部が揺らぐ。
セクルトには小動物は入り込めない造りだと聞いているが――。
怪訝に思って足を止めて茂みを見ていた。
腰の高さに切り揃えてある低木は、地面側から小さな葉が茂っている。
その一部分が時々、ガサガサとうごめいた。
(何かいる……)
思ってフィーナは、校舎を出て植木部分に足を向けた。
フィーナは動物に対して恐れはない。
大半の人が苦手とするねずみも「つかまえて」と頼まれれば躊躇なく手を伸ばせる。
衛生的観点から、両親に「触らないように」と禁じられているので、必要に応じてになるが。
セクルトの校内は、校舎だけでなく庭園や他施設を含めて、野生動物の糧はない。
飢えるとわかっているのを見過ごせず、フィーナはそろそろと茂みに近寄った。
迷い込んだ動物だったらかわいそうだと思いつつ、危険な動物だったら人に被害を与える前に捕まえなければとの思いもあった。
(ヘビだったらどうしよう)
気を付けないと腕に絡みついてくるので捕獲が苦手だ。
ヘビだけでなく、危険な動物だったら、どのように人を呼ぼうか、どう対処しようか。
状況を想定しながらフィーナは揺れた茂みにそっと近寄った。
ドルジェ村で、薬草を取りに森に入っていたフィーナには、動物に対する心得も経験もある。
息をひそめて近寄ると――揺れた部分に明るい土色の塊が見えた。
(土? 見間違いだった?)
「なんだ……」
ほっと息をついて、それまで足音をたてないように注意して歩いていた行為をやめて、踵を返して通常の歩行に戻した時だった。
ぱきん、と小枝を踏んでしまう。思いのほか大きな音がした。
その音に反応して、茂みが――明るい土色の塊がビクリと飛び上がる素振りを見せた。
「え?」
土が動いた?
思ってその場に目を向けると――。
「ガゥッ!」
唸り声を上げながら、フィーナを威嚇する動物が茂みの奥にいた。
茂みの揺らぎは見間違いではなかった。
全身、明るい土色の短い体毛、顔立ちはマサトを彷彿させる似かよった造りとなっている。
顔の周辺の体毛は他より長い。
マサトと同じほどの大きさだった。
先ほどは頭を茂みの奥に、フィーナ側に後ろ足を向けていたため、土色の塊に見えたようだった。
警戒心をみなぎらせ、鼻先に皺を寄せて牙をむき出し、低いうなり声を上げる――。
フィーナも攻撃を警戒しつつ、ゆっくりとした動作で膝を折って、警戒心をあおらないよう注意しながら、その動物を確認した。
もしかしてと思っていた。驚きを隠せない。
「――ライオンの、子供……?」
グルグルと喉奥で唸りを上げて警戒し続ける、黄土色の体毛の生物。
実際、見たことはないが、書物で見た絵と酷似していた。




