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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第五章 それぞれの勉学事情
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21.サリア宅、訪問 14


 マサトは再度、サリアとガブリエフに目を向けた。


『俺が基本を叩きこんで、あとはわからないところはフィーナに聞く。

 ……もしかしたら、小児校時代までさかのぼって基礎を叩きこむ可能性もある。

 最初につまづいたら、あとあとまで響くから、そこは一つ一つ、きっちり修めていきたい。

 そうしながら、授業は普通に受けてもらう。

 かなりキツイ二足わらじになるが……どうする?』


 サリアの意向をたずねたマサトだったが――答えは聞かずともわかっていた。


 マサトが話す内容を聞いていたサリアは、話が進むにつれ、瞳に生気を宿らせ、頬を紅潮させ、口元に笑みをたたえ、前のめりの姿勢となっている。


「お願いしてもいいの?」


『サリア・スチュード嬢以上に、うちの主が世話になってる人間はいない。恩人が困っているんだ。出来得る限りのことはするよ。

 ……大変なのは俺たちじゃない、サリア本人だけどいいのか?』


「かまわないわ」


 サリアの返事を聞いたマサトは頷くと、視線をガブリエフに向けた。


『――ってことだけど、いいか?』


「私から言うことは何もない。約束を守ってもらうだけだ」


「わかっています」


 サリアは力強く頷いた。


 サリアの成績の話がひと段落したところで、マサトがおもむろに口を開いた。


『で? 結局のところ、宰相様は何を確認したかったんだ?

 フィーナの成績確認する理由がよくわからないし、俺のこともどう考えてんだ?』


 マサトの言葉に、フィーナは意図をつかめず、小首をかしげている。


 ガブリエフはしばらく、探るようにマサトを見た後、小さく息をついた。


「エルド嬢が自分の置かれた状況を理解しているのか、確認しておきたくてな」


 言って、フィーナに目を向ける。


「深く考えていないのは理解できた。

 伴魂に関しては――単なる興味本位だ。

 心配せずとも、他言はせぬよ。……今のところはな。

 下手な混乱をまねきたくないのでな」


 言って、マサトに目を向けるとほくそ笑む。


 マサトはぞくりと背筋に悪寒が走るの感じて、嫌そうに舌打ちした。


『腹にいちもつ抱えてるって、隠そうともしないし』


 アブルードの件まで知っているのか――。


 気になったが、マサトは聞かずにいた。


 藪蛇になりそうな気がしてならかったのだ。


 その後もマサトはガブリエフを警戒しつつ、サリアの今後について話した。


 寮室で、まずマサトがサリアに基本指導を行おうと話がついた。


 話がまとまって、部屋を後にしようと椅子から立ち上がったフィーナとマサトに、同じく立ちあがったガブリエフが声をかけた。


「――サリアを、よろしく頼む」


 告げて、フィーナとマサトに最上級の挨拶を送る。


「ひぃっ!」とフィーナとマサトは震えあがった。


 国王に次ぐ、政治的権力を持つ役職者が、一庶民に頭を下げるなど、ありえないことなのだ。


 ガブリエフはすぐに体勢を整えたが、挨拶は本当の意志を込めたものだ。


 それから解散となり、寮室や執務室と、それぞれの場所へ足を向けたのだった。

 




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