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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第一章 魂の伴侶
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20.事情説明とこれからのこと


 気がつくと、フィーナはベッドで寝ていた。


 フィーナの意識は森で途切れている。


 ――あれからどうなったのか。どうやって家に戻ったのか。


 思いつつ、寝ぼけてぼんやりしながら体を起こした。


 記憶をたどる途中で、黒マントの男を思い出し、はっと意識が覚醒する。


『大丈夫だ』


 恐れで体を強張らせていると、聞こえてきた声。


 聞き覚えのある声は、これまでに何度か聞いたことのあるもので、森でも聞いたものだ。


 ずっと聞きたいと思っていたけれど……今は怖い。


 森での出来事が、本当にあったことなのだと実感してしまう。


『大丈夫か?』


 体調をうかがう声は意識下でなく、フィーナの耳で聞こえた。


 若い青年の声だった。


 ネコはもう、フィーナには人語を話すのを隠すつもりはないらしい。


 フィーナとしてはそれが恐ろしくもあった。


 森での出来事を思い出し、無関係ではないと思えたのだ。


 黒マントの男は……ネコを狙っていた。ネコはフィーナの伴魂。


 ネコを得るために、伴魂の主であるフィーナに危害を加えようとしていた。


 フィーナはネコに「大丈夫」と答えて「あの男の人は?」とおそるおそる、どうなったのかを尋ねた。


 動けないようだったが、それからどうなったのか、不安だった。


 捕まって牢に入れられたと、ネコは説明する。


 ウソではない。


 ザイルを通してオリビアが隔離し、事情を聞き出しているだろう。


 フィーナがアルフィードほどの年齢だったら「どうやって」「だれが」「何の罪で」と不思議に思うのだろうが、フィーナはまだ世間一般的な常識を理解してはいなかった。


 状況だけを見ると、フィーナにも伴魂にも危害を加えられた可能性があるだけで、実質的な危害は及んでない。


 「かもしれない」では罪には問えないとまでは考え付かなかった。


 フィーナは自分に危害を加えようとした、怖い人が牢に捕まっていると聞いて、自身の身の安全を確信し、安堵する。


 それからネコは、一応のあらましを説明した。


 男が狙っていたのは、自分だということ。


 伴魂の主であるフィーナに危害を加えて、ネコを捕えようとしていた。


そして、人の言葉を理解して会話を成り立たせる獣は、本当に珍しく、その希少価値のために、手荒な手段を講じても手に入れようとする輩が存在するだろうと。


「だから……話そうとしなかったの?」


『知られない方がいいと思っていた。

 下手に話が広がるよりはな』


「……ごめんなさい」


 自分の不用意な発言が、危険を招く可能性があったと知り、フィーナは肩を落とした。


 物わかりのいいフィーナに、ネコは多少拍子抜けしつつ、理解を得られことに安堵する。


 フィーナも言葉だけでは訝っただろうが、現実として不審な男と対峙している。


 恐怖が色濃い中、信じざるをえない状況でもあった。


 それからネコはフィーナに、他の人には人語を話せることを言わないようにと約束させた。


 話せると周囲に知れて、余計な危険を増やしたくないのだと説明した。


 フィーナは素直に了承した。


 ……ザイルの件が、ネコの頭の片隅にあったが、変わった気性の持ち主だと把握している。


 自分の望む物を得られるうちは、興味を持っている間は他言しないだろう。


 たとえ、相手がオリビアでも。


 忠誠心よりも、特別な事象を一人占めしたい傾向が強いと考えていた。


 そうでなければ、これまで漏らしていた人語による独り言も、オリビアに筒抜けだったろう。


 先日来訪したオリビアを見る限り、彼女が知っている様子はうかがえなかった。


 それからネコはフィーナと、これからについていくつか決めごとを交わした。


 必要な時は出向くが、あまり人前には出ないようにすること。


 人語を話すことは両親にも姉のアルフィードにも内密にすること。


 そして――もしもに備えて、魔法を教えるので習得すること。


「今日のって、やっぱり……」


 習って告げた言葉に反応して、起きた事象。


 それは……。


『魔法だ。ごく簡単なものだがな』


 簡単と言えるもので気を失ったフィーナの不安を先どって、ネコは『練習すれば大丈夫』と告げる。


『今日は無駄が多かった。

 訓練すれば無駄は少なくなるし、魔力も増える』


「え」とフィーナは目を丸くした。


「魔力って、増えるの?」


『簡単じゃないがな。

 どんなことでも、練習すれば上手になっていくだろう? 

 魔法も魔力も同じだ』


「そうなんだ」と感心するフィーナに、ふと……前々から思っていたことを、ネコは口にした。


『嫌か?』


「何が?」


『俺が……伴魂だというのは』


「どうして?」


『危ない目にあったし、これからも怖い思いをするかもしれないし……訓練、必要になるし。

 面倒だろ?』


 ネコの言葉にフィーナは「う~ん」としばらく考えた。


「よくわかんない」


 想定外の答えに、ネコは拍子抜けする。


「怖いけど、仕方ない」「嫌だけど、仕方ない」契約を解除できないのだから。


 そんな返事を想定していた。


「ちょっと怖いなって思うけど。

 危なくなったら、今日みたいに守ってくれるんでしょ?」


『……ああ』


「だったらいいよ」


 言いながら、フィーナはネコに手を伸ばし、白い体毛に包まれた体を抱きしめた。


「気持ちいいしね~」


 体毛に顔をうずめて心地よさを堪能している。


 能天気なのか危機感が薄いのか。


 拍子抜けしながら『まあ、いいか』とネコは人知れず嘆息した。


 図らずして伴魂契約を交わしてしまったが。


(守るよ)


 今度こそは。


(……リージェ)


 守っているつもりで、守られていた。


 君の分も含めて、守ってみせる。


 そう、決意して。





文量、少なめです。

ちょっとだけですが、話が進展しました。

次回は数年後がメインです。

小児校卒業して、中児校最後の年です。

さらりと時が経過します。


どこが転生要素か、わかったと思うので、あらすじ書き変えないとなー。

けど、まだまだ明らかになっていない所は多々あります。


それは後で少しずつ。

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