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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第五章 それぞれの勉学事情
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10.サリア宅、訪問 3


 話終えたフィーナに、ガブリエフは「なるほど」と口を開く。


「こちらで事前に掌握していた内容と大差ない。

 ごまかしはないようだ」


「知っていたことを、敢えて話させたのですか」


 真実を話すかどうか。


 フィーナとサリアを試したのかと、サリアは眉をひそめる。


 非難する娘にかわまず「ところで」とガブリエフはフィーナとマサトに目を向けた。


「スーリング祭では離れていて、よく見えなかった。

 珍しい伴魂だと聞いていたが……なるほど。

 初めて見るな。

 他国にはいるらしいが」


 主であるフィーナを見て、伴魂であるマサトに目を向ける。


 子供用の椅子に座っていたマサトは、肩から上がテーブルから見えている状態だった。


 ガブリエフの言葉に、マサトは鼻じろんだ。


『はっきり言ったらどうだ? 知ってるんだろ? 俺がしゃべるって』


 嘲るマサトに、フィーナが「ちょっと……!」と慌てる。


 マサトが人語を操ることは、国王にも明かしていない。


 第一王子に関する不明な点を解消するまで伏せていたほうがいいと、校外学習後にそう話したはずだ。


 焦るフィーナを『ふん』とマサトが鼻で笑った。


『寮の部屋割騒動、寮長絡み、校外学習も把握してんだろ?

 俺が話すと知っててもおかしくない。

 ……どうやって知ったのかは、気になるところだがな』


 最後の方はガブリエフに向けて告げる。


 マサトの言う通りなのだろう。ガブリエフはマサトが人の言葉を話しても、軽く目を見張った程度だった。


「話には聞いていたが……実際、目の当たりにすると、何とも面妖めんようなものだな」


『当人目の前に良く言うよ。

 ……で? ご多忙な宰相様が貴重な時間を割いて、何の用だ?』


「宰相様?」


 マサトの言葉に、フィーナが驚きに目を見開いた。


 宰相。


 国王に次ぐ、政治的権力を持つ役職である。


 それぞれの役割を担う大臣を統括する者だと、フィーナも理解していた。


 理解していたが、知識として認識しているだけだった。


 フィーナは目を見開いたまま、ガブリエフとサリアを交互に見つめる。


 幾度かそうした行為を繰り返した後、サリアに「……本当に?」と小声でたずねていた。


 フィーナの問いに、サリアはバツが悪そうな表情を浮かべて、父親であるガブリエフをちらりと見た後、フィーナに視線を戻して、小さく頷いた。


 頷いたサリアを見たフィーナは驚きを深め、体の強張りを強くする。


 市井出身であるフィーナが、まつりごとを統括する宰相と接する機会など、まずありえない。


 国王もセクルト貴院校絡みの催しがあるからこそ、対面する機会が生じた。


 宰相はセクルト貴院校絡みの催しに参加することはあっても、生徒と接する機会はなかったはずだ。


 今回、サリアの父親という繋がりで顔を合わせることとなったのだが……フィーナとしては内心、頭を抱えていた。


 サリアの父が、重職についているとは理解していた。


 理解していたが、サリアを「宰相の娘」と呼ばれるのをフィーナは耳にしたことがなかった。


 重職であると匂わせつつ、明言しない。


 そうした呼び名が貴族籍のたしなみだろうと思っていたが……思い起こせば、他の貴族籍の生徒は、親の役職をはっきりと耳にする機会もあった。


 明言しないくだりは理解しがたいが、それより何より、なぜサリアに彼女の父の事をたずねなかったのかと、過去の自分を叱責したい思いにかられていた。


 ガブリエフもフィーナの様子から、心情を汲みとっていた。


 娘に目を向けると、視線を合わせたサリアは、バツが悪そうな表情で小さく頷いた。


 サリアも、フィーナが自身を「宰相の娘」と気付いていないと感じていた。


 セクルト貴院校に通う貴族籍の生徒は皆、サリアが「宰相の娘」だと知っている。


 ――同時に、ガブリエフ・スチュードが宰相となった経緯も知っている。


 父が宰相になった経緯もあって、サリアは「父は宰相」とフィーナに明かしたくなかった。


 今日、ガブリエフの希望で設けられた席だったが、宰相だと明らかにならないと思っていた。


 ガブリエフ当人が「自身が宰相」とひけらかすことはなかったし「宰相」と呼ばれるのを厭っていた。


 宰相となったのは、成り行き上、国の為に仕方なかったこと。


 ……と、ガブリエフ自身、思っているものの、できることなら関わりたくなかったのが本音だったからだ。


 ガブリエフとサリアが明かさなかった事実を、フィーナの伴魂に明らかとされた。


 想定外だが……いずれは知られることだ。


 覚悟するサリア、意外そうなガブリエフ、驚きを禁じ得ないフィーナ。


 三者三様の想いの中。


 水を差す口火を切ったのは、白い伴魂の、主に対する呆れた声だった。


『お前、宰相の名前も知らなかったのか?』



 

久しぶりの更新です。

すみません。

ガブリエフがなかなか動いてくれなかったこと、リアル(生活)での悩みが重なって、書いても書いてもうまくいきませんでいた。

数日後、あえて創作作業、作品に触れずに絶つ状況にしたことで、見直すことができました。

正直、今のカテゴリ……っていうか、ガブリエフが関わっている限り、更新頻度がどうなるか、わかりません。

今は少し落ち着いています。

見えなかった、少し先の状況も、今は違和感なく見えています。

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