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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第五章 それぞれの勉学事情
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9.サリア宅、訪問 2


「いえ。本日は御招きいただき、ありがとうございます」


 言って、頭を下げる。


 サリアは父にどんな話をしているのか気になったが、そこには触れずにおいた。


 ガブリエフはつと、フィーナの胸元に目を向けた。


「……確かに」


 目を細めながらつぶやく。


 胸ポケットの刺繍は、入学試験時の結果が記されている。


 ガブリエフはまず、そのことを確認していた。


「招待しておきながら申し訳ないが、あまり時間がとれなかった。

 悪いが、回りくどい話は抜きにさせてもらう」


「お父様――。そのような言い方と、尋問されているように聞こえます」


 ガブリエフの物言いに、サリアが忠告する。


「そうか?」とガブリエフは考えを巡らせ、顎を右手で数回しごいたあと、手を戻した。


「性分でこのような話し方になる。申し訳ないが、口調は気にしないでもらえないだろうか。

 エルド嬢にはいくつか聞きたいことがある」


「――なんでしょう?」


 外見は気丈に振舞いつつも、内心「何を聞かれるのか」とフィーナはハラハラしていた。


(サリアに仕事任せすぎとか、もっと自分で仕事しなさいとか、言われるんだろうな……)


 言われるだろうことを想像して、謝罪の言葉を考えていく。


「サリアはセクルトでうまく馴染んでいるだろうか」


「迷惑をおかけし――。え?」


「サリアの成績がよくなかったと聞いたが?」→「サリアに迷惑をかけてごめんなさい」との流れを想像していたフィーナは「サリア」と聞いただけで反射的に謝罪を述べようとした。


 しかしガブリエフが口にしたのは、サリアの日ごろの様子をたずねるものだった。


 ガブリエフは先走ったフィーナの言葉は聞かなかったこととして流して、言葉を続ける。


「我が娘ながら……我が娘だからか、融通がきかないところがある。

 セクルトでうまくやれているのか、気になっていた。

 サリア自身、セクルトの話をあまりしないので、状況がよくわからない。

 私も多忙で、ゆっくり話を聞く時間もない。

 兄にはいくらか話しているので、そこから聞く程度の情報しか聞いていなかった」


「何も、このような場で聞かずとも――」


「お前があまり話さないのだから、仕方ないだろう。

 それに、人の目からどう見られているのか、知っておきたいのが親心というものだ」


 サリアはガブリエフの話に戸惑っている。


 純粋に、サリアの話が聞きたいのだと感じたフィーナは、緊張を解いて口元を緩めた。


「サリア様には感謝しても足りないほどお世話になっております。

 他の生徒からの信頼も厚いですし、同室者としても心強い限りです」


「――その件だが……なぜサリアがエルド嬢と同室となる」


 眉をひそめるガブリエフに、フィーナは驚きで目を瞬かせた。


 サリアに目を向けると、左手で顔を覆って、項垂れている。


(もしかして――話してなかった?)


 同室者だと知っているようだが……経緯は知らないのか?


 懸念は、ガブリエフの言葉で確信に変わった。


「本来、首席であるはずのエルド嬢は、個室となるはず。しかし実際は個室でなく、同室者はクラスが違えるほど成績の離れているサリア。なぜこのような状況になるのか――」


「え……あの……」


 まさか経緯を聞かれると思っていなかったフィーナは、どう答えればいいのか、戸惑ってサリアに目を向けた。サリアがガブリエフに話していないということは、言わないほうがいい事柄が何かしらあるのだろう。しかし当のサリアはあさっての方に目を向けて、顔を合わせようとしない。


 何をどう話せばいいのか、どこまで話せばいいのか判断できず、フィーナが口ごもっていると、覚悟を決めたサリアが、ガブリエフに顔を向けて口を開いた。


「私から、説明させて頂きます」


「いや。エルド嬢。貴女から伺いたい」


「え?」


「そんな、お父様」


 ガブリエフの言葉に、驚くフィーナ、焦るサリア。


 ガブリエフは静かな眼差しをサリアに向けた。


「サリア。お前が話すと都合の悪いところはごまかすだろう?

 私は真実が知りたいのだ」


 ガブリエフの言葉に、サリアは反論できず、口をつぐんだ。


 そして申し訳なさそうに――何かを諦めた眼差しを、フィーナに向けた。


「ごめんなさい。フィーナから、話してもらえないかしら」


「……いいの?」


「ええ。……事実を、そのままに」


 請われてフィーナは、ぽつぽつと、過去に記憶を馳せながら話していた。


 時々、フィーナが勘違いしていた部分をサリアが訂正、もしくは言葉足らずになっていた部分を補足しつつ、同室者、寮長と副寮長、校外学習運営陣に関してまでをかいつまんでガブリエフに話した。


 ガブリエフはブリジットの名を聞くと、あからさまに眉をひそめたが、彼女の望みが通らなかった話は満足そうな笑みを浮かべていた。




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