2.前期定期試験の結果【サリアの成績 2】
同室者としてそうした素振りは全く感じなかった。
それだけでなく、サリアが成績が悪いと、どうしても思えなかった。
聡明で、思慮深いサリア。
短絡的になりがちなフィーナに、先を見越した助言を呈し、全体に目を向けれる視野の広さも持っている。
ずっとフィーナを助けてくれていたサリアが、クラス落ちの危険があるほど成績が芳しくないと思っていなかった。
(――うんん……)
思って、考え直す。
予兆はあった。
夜遅くまで自室で勉学に励んでいたのは、フィーナも知っていた。
成績が伸び悩んでいるとも聞いていた。
……なのに……。
「……私の……せい……?」
女子寮の副学年寮長として、サリアにまかせっきりの件がある。
セクルト入学して数カ月。
慣れてきたから、フィーナが最初任されていた部分以上に、仕事を振ってくれてもいいと告げたのだが、サリアに断られた。
曰く「こじれるのが目に見えている。後のフォローが大変だから遠慮する」……と。
貴族特有のやりとりには、まだまだ不慣れだったので、サリアの言い分に納得して、そのまま任せていた。
それだけでなく、当初はほぼサリアに任せっきりだった。サリアに教えてもらいつつ、ようやく、大部分をこなせるようになってきたのは、一月、二月たったあとだった。
おまけにアールストーン校外学習の運営陣も担っていた。
俯いて、机に置いた手を握りしめるフィーナに、カイルは言いにくそうに口を開いた。
「それも原因の一端だろう。
フィーナのフォローで自学の時間を取られたこともあるだろうが……本来、サリアの成績では副寮長は過ぎた役割だ。
女子寮生徒は事情を知っているだろうが、何も知らない者からすれば、奇異に映る。
……それは校外学習の件に置いてもだ。
校外学習の件は、俺にも責任がある。
サリアを頼り過ぎていた」
言って、カイルはやるせない息をつく。
アレックスは「校外学習の運営をする時間がありながら」等の、サリアに対する担任の皮肉も耳にしていたという。
フィーナも、サリアに申し訳ない気持ちでいっぱいになり、きつく唇を結んでいた。
反省するフィーナとカイルに、意を唱える声が、足元から上がった。
『あのなぁ。二人とも根本が間違ってるぞ?』
『ふぁぁああ』と、あくびを漏らして、マサトが口を開く。
足元からの声に、フィーナとカイルは軽く目を見張って目を合わせ、足元に視線を落とした。
フィーナの足元で休んでいるマサトが、眠そうな顔をして、二人を見上げていた。
『副寮長も校外学習運営陣も、サリアが引き受けたことだろ?』
言いながら、すっくと立ち上がると、軽い身のこなしで机に上がった。
机に腰を下ろすと、フィーナとカイル、二人と視線が近い位置となる。
マサトは二人を見ながら口を開いた。
『サリアだってこなせると思ってたんだ。実際、校外学習も大丈夫だったんだ。
問題は担任だよ、担任。ダメだろ、あれは』
「担任?」
どういうことかと、カイルが眉をひそめる。
『俺、最近でこそ、フィーナに付き添って教室にいるけどさ』
「あれで付き添ってるの? 丸一日、側にいたことないけど。他の子の伴魂は、常に一緒なのに」
疑問を口にするフィーナの発言は無視して、マサトは話を続ける。
『前は気ままに過ごしてたろ。校内をうろついてたとき、それぞれのクラスの授業内容、聞いて確かめたりしてたんだが』
「そんなことしてたの?」
『成績順にクラス分けしてんだろ? なら、それぞれ見合った教え方してんのか、気になってさ。
ほとんどのクラスはまともなんだが、いくつかのクラスはそうじゃないとこがあってな。
中でもサリアのクラスは最悪だ。
サリアの成績の件も、誰のことかわかる含みで話してたの見りゃあ、どういうやつかわかるだろ?
教師のすることじゃねーよ。
ここの教師の選定基準、どうなってんだか』
「――アレックス」
カイルは教室前に立っている護衛を呼び寄せた。
サリアのクラスの担任が誰だったか、話を聞いたアレックスに尋ねると「――確か」と思い出していた。
「クレア・キャンベルだったかと……」
「キャンベルだと?」
名を聞いて、カイルは眉間にしわを寄せた。
「誰?」
首をかしげるフィーナに、カイルは重々しく口を開いた。
「フォールズの縁者だったはずだ。血筋的には遠縁だが、フォールズの取りまきとして懇意にしていたはずだが……なぜあのクラスの担任になる」
※(2019.11.25現在)
すみません……。やらかしました……。
フォールズとスチュード逆です……。
訂正しました……。
すでに読まれてる方、すみません……。
そのため、明日以降、違和感あるところがあるかもしれません……。




