1.前期定期試験の結果【サリアの成績】
◇◇ ◇◇
フィーナはカイルから話を聞いて、事情を知った。
それまで、何も知らないまま過ごしていた。
――自らが望んだ同室者だというのに。
誰よりも近しい場所で、共に過ごしてきた友だというのに。
セクルト貴院校に入学して半年。
セクルト貴院校では、年に二回、前期後期に分けて定期試験が行われる。
授業の進み具合によって、各クラス担任が行う小テストとは異なり、定期試験は同一日同時間帯、各教科ごと、同じ問題を各学年一斉に行われ、結果は記録に残り、前期後期、総合した結果が一学年の成績となり、次学年のクラス割りに関わってくる。
通常、一学年時に分けられたクラスから大きく変動することなく、ほぼそのまま持ちあがりになるという。
定期試験は、入学試験と異なり、これまで授業で学んできた内容から試験に出題される。
応用は施されているが、これまでの授業を理解していれば、合格点となる半分は取得できる問題となっていた。
「……サリアが……クラス落ちするかもしれないってこと?」
放課後、他のクラスメイトが居ない時にカイルが切り出した。
クラスの後方隅に、カイルと向かい合って座り、教室の出入り口にはアレックスとレオロードが護衛として控えている。
フィーナの足元では、マサトが体を丸めていた。
護衛二人には話が聞こえない距離で、フィーナとカイルは話していた。
カイルの話を聞いて、フィーナは目を瞬かせた。
空耳ではないか、内容を勘違いしているのではないかと思ったが……神妙なカイルを見て、現実なのだと実感した。
フィーナの反応を見たカイルは「……やはり、知らなかったか」と息をつく。
「俺も、きちんと聞いたわけではないんだ。アレックスがサリアの教室の前を通った時に耳にしてな。
最初は意味がわからなかったらしいが、思い返して、そういった内容の話だったのではないかと、話してくれた。
フィーナはサリアと同室だろう。何か聞いているかもと思ったが……やはり聞いていなかったか」
フィーナの様子とサリアの性格を考えて、カイルはその可能性を考えていた。
アレックスからカイルに視線を戻したフィーナは、緩く首を横に振った。
「……何も……聞いてない……」
試験の結果が個人に通達されたのは、一週間前のことだ。
試験結果は公表されず、自ら明かさなければ他の者にはわからない。
「どうして……カイルは知っているの?」
当初、カイルはフィーナにこう切り出した。
「サリアから、クラス落ちの話は聞いていないか?」……と。
クラス落ち。
一学年時に割り振られたクラスが、ほぼそのまま持ちあがりとなるセクルト貴院校に置いて、成績順で決まるクラスが落ちることは、著しく成績が悪いことを意味していた。
個人の成績は本人しかわからない。
なぜカイルが知っているのか。
「アレックスが聞いたのは「クラス全体の成績を著しく落としている生徒がいる。親が聡明な大臣でも、子がそうであるとは限らないようだ。このままだとクラス落ちも仕方ない」。……そのような話をサリアの担任が話していたらしい」
「先生が?」
フィーナは耳を疑った。
サリアの父親が何かしらの大臣だと、フィーナも知っている。他に大臣の子女の話を聞いたことがないので「大臣の子」と言われれば、それはサリアを指しているも同然だ。
成績は本人にしかわからない仕組みになっているのに、先生が話した内容はサリアの成績を端的に公表しているも同じだ。
その状況に、フィーナは驚きを隠せずにいる。
カイルも苦い表情を浮かべていた。
「事実を確認しておきたかった。話を聞いていればと思ったんだが――」
本人に直接尋ねるのも気が引けるので、万が一の可能性を考えて、先にフィーナに聞いたのだという。
(サリアが……クラス落ち?)
フィーナには信じられなかった。
活動報告にも書いてますが。
3つ候補にあったネタのどの話を持ってこようか、迷って、こちらになりました。
サリアの勉学事情は、第二章から考えてたものでした。
校外学習が終わったところなので、それをからめて話ができるな。とも考えたので。
数日間、更新できなかったのは、どのネタにするか、迷ってたからです。
書き始めれば、それほど時間かからないのですが。(苦笑)




