表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第四章 人語を介す伴魂
189/754

62.魔法の作用 2


 人の姿をしていた気配、精霊ではないのかという点を、マサトはいぶかっているようだった。


 カイルの言葉に、マサトは答えず、肩をすくめるに留めている。


『けど王子様の様子じゃあ……それが何か、見当ついてるみたいだな』


「そう言うわけじゃないが……」


 カイルとしては、フィーナとマサトに尋ねれば、答えが得られると思っていた。


 まさか二人が「わからない」『見えない、感じないし、勘違いだろう』と言いだすとは思っていなかった。


 戸惑いながらも、カイルは自分の考えを口にした。


「水の女神では……ないのか?」


「え? そうなの?」


 おそるおそる口を開くカイルに、フィーナは単純に驚いて、マサトは軽く目を見張った。


『精霊より大層な御方だな。なぜそう思う?』


「似ているだろ」


「そうなの?」


『そうなのか?』


 カイルとフィーナとマサト。


 それぞれの見識の違いが明らかとなり、三者三様、戸惑いを覚えていた。


「似ていただろ?」


 カイルは、存在を感知し、姿も見えたフィーナに確認した。しかしフィーナは「え……」と困った表情を浮かべた。


「だって……私、水の女神様がどんな御姿をされてるのか、知らないもの」


「――あ……」


 言われてカイルも気付いた。


 神々の御姿は、一般には秘匿とされている。


 神々の御姿を写した聖画は、王族、教主だけが閲覧できる物だった。


 聖典には神々の御姿に関する記述があるので、王族、教主以外の者は想像するしかない。


 既存の物語の挿し絵にも、神々の姿は描かれず、明確に描かない、さまざま手法をとっていた。


 王族であるカイルは、教養の一つとして神々についても学んでいた。その際、聖画も目にしていた。


『そう言えば、国王と教主では、役割違うんだよな?』


 マサトの言葉に、カイルは頷いた。


「国王は神々の声を民に伝える。

 教主は民の声を神々に伝える。

 それぞれの役目の関係から、王族と教主は聖画を見ることを許されている」


 そうした関係で、カイルはどの神がどのような姿をしているのか、知っていた。


『――ってことは、フィーナと王子様が見たのは、水の女神ってことか?』


「わからないから、聞いているんだが」


『ああ、そうだったな。

 フィーナ。

 その気配ってのはどんな感じだった?』


「どんなって――。

 なんか、瑞々(みずみず)しい感じ?」


『それ、水の女神って聞いたから言ってるんじゃないのか?』


 じとりと淀んだ眼差しを向けるマサトに、フィーナは頬をふくらませた。


「違うわよ。――けど……水宴アクアフェスト使おうとして、水に意識を向けてたから……そのせいで水に対する感覚が強くなってたかも……」


 その時を思い出しながら、フィーナも自信なさそうに告げる。魔法に集中していたので、気配を感じて、伴魂との意思の疎通に似たやり取りを、意識下でしたのは確かだが、詳細は気に留めていなかった。


 フィーナとカイルの話を小馬鹿にすることなく、頭から否定することなく、マサトは聞いてくれるが、信じていない様子はカイルも感じていた。


 正直なところ、カイル自身、信じられないのだ。


 まさか「過去には接触した者もいるが、今現在、見た者、接触した者はいないとされているものの、存在は確かな」な神の一人(と思しき存在)を、間近で感じることになろうとは、思ってもみなかった。


『王子様の言うように、それが水の女神さまだったとして。

 何かあるのか?』


 首を傾げるマサトに、カイルは「……いや……」と言い淀んだ。


 何かあるか。


 あるに決まっている。


 神を降臨させたと騒がれてもおかしくないのだが、気配を感じたのは唱えたフィーナと側にいたカイルだけという状況が、彼の思考を混乱させた。


 マサトが見ていない、感じない状況も、カイルに「見間違いだったのでは」と思わせた。


 とりあえず、不可解な部分が多すぎるので、フィーナとカイルが感じた存在は、二人が感じたのだから、何かしらあるだろう、ただ、それが何かわからない。


 ……という状況に留めおくことにした。


 マサトは終始、鼻じろんでいたが、カイルとフィーナには証明する術はなかった。





昨日は更新できなくてすみません。

一昨日(下書きする日)は上司が休みで、その上司に対する問い合わせに答える作業(急ぎの案件)に、てんてこ舞いになってました。

帰ってからは疲れて、寝てしまってました……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ