表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第四章 人語を介す伴魂
184/754

57.国交とフィーナの立場 13


 意識下で呼び寄せると、モモンガはすぐさまリーサスに駆け寄って、肩まで登った。


 主を心配する伴魂を観察すると――確かにフィーナの言うように、無理を強いた疲れが見受けられた。


 伴魂は魂の伴侶だ。伴魂に必要のない負担を強いるのは、リーサスとしても本意ではなかった。


 フィーナに指摘されるまで伴魂の状態に気付かなかったこと、これまでの経緯もあって、リーサスはバツの悪い思いを抱えながらも、反論する理由もなかったので、頷いて了承した。


 それを見たフィーナは、安堵に頬を緩めたのだった。


 そうした経緯の後。


 フィーナとリーサス、ザイルとマサトのやり取りで、当初、考えていた段取りがうやむやとなったが、マサトはフィーナに当初の魔法を所望した。


 ザイルとしては、フィーナが魔法を使用した状況を見せることで、リーサス、並びにフィーナの魔法を知らない面々に周知しようとしていた。


 結果として、呪文ルキのみで水宴アクアフェストを成し、その上、ザイルに一杯食わせたフィーナの行動は、リーサスも一目置くものだ。


 ザイルとしてはすでに目的を果たしている。


 ……が。


『見たくねーの? フィーナが試そうとしたこと』


 意地悪くほくそ笑むマサトに、ザイルは即答する。


「見たいですよ」


 マサトが敢えて望むのだから、通常と異なる珍しいものなのだろう。


 ザイルも、フィーナが試そうとする魔法の概要は聞いていたが、どうもピンとこなかった。


 当初の予定と異なったものの、呪文ルキ水宴アクアフェストを成したフィーナは、ザイルの目的である「フィーナの能力披露」を終えたと思っていた。


 しかしマサトとザイルに請われて、仕方なく、事前に告げていた魔法を試みることとなったのである。


「誰かさんたちのせいで、疲れたんだけど……」


『そう言うなって。フィーナが試そうとしてたこと、他ではなかなかできないだろ?

 ドルジェ近くの森も、こんなに広くないし』


 確かに。


 騎士団の屋外鍛練場となっている平地は、ドルジェの森の鍛練場より数倍広い面積を有している。


 手入れも行き届いていて、茂る草はくるぶしより低い高さとなっていた。


 マサトの言葉を受けて、フィーナも思い直した。


 マサトの言うとおり、周囲を気にすることなく、広範囲の魔法を使用できる場所は、そうそうない。


 フィーナは魔法を試そうと平原の中央に向かって歩み出た。


 コテージから十数メートル、ザイル達から十メートルほど距離を置く。


 マサトは伴魂として、フィーナの足元に控えていた。


 フィーナは改めて周囲を見渡し、空を仰いで地形を確認した。


 そうして地形を脳裏に刻んで、深い呼吸を繰り返し、気持ちと体内を巡る魔力を静やかな物へと調整する。


 静かに目を閉じて、深い呼吸を続けつつ、胸元で両手の指同士を合わせた山なりの形を手で造った。


 意識は、暗く静やかな状態へ落ちていく。


 意識が澄んでいくのをフィーナは感じていた。


 ――ピチョン


 暗い洞窟の中。凪いだ水面に天井からの一滴が落ちて、波紋が広がる。


 そうした意識の中、フィーナは静かに口を開いていた。


「全ての母にして全能なる水の女神、アクアリューネよ。その恵みを我がに――」


 前詞アンセルを静かにつぶやいて、目を開ける。


 そうしながら、合わせてた両の手を、左右に開いて両腕を広げた。


 両手と顔で空を仰ぐ。


 意識を、鍛練場広域に向けて、同時に水球を思い浮かべた。


「――水宴アクアフェスト


 フィーナの呪文ルキで、鍛練場内に無数の水球が出現した。


 親指と人差し指で造った輪ほどの大きさの水球だったが、その数、ざっと見ても数百に及ぶ。


 並びは不規則ながら、上は数メートル上空、下はフィーナの背丈ほどの高さで、水球が生じていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ