56.国交とフィーナの立場 12
「いじめっ子は嫌いよ!」
「い……いじめっ子……?」
想定外のフィーナの言葉に、ザイルが戸惑う。
「実力の差が大きくて、それを捩じ伏せて!
私はザイルの訓練受けてたから、何をしようとしてるのか、何となくわかるけど!
リーサス様はそうじゃないでしょ!?
それなのに、いきなり攻撃されても、何をすればいいか、わかるわけないじゃない!」
「言いましたよ、硬盾で守れと――」
「それだけでわかれってほうが無理よ!
硬盾で守れ?
何を?
硬盾を成すことが目的?
硬盾で自分を守ること?
それとも他の何かを守れってこと?
――そんなの、ザイルの考えがわかってないと、対応できるわけないじゃない!
マサトも!
なに他人事として見てるのよ!
止めてって言ったら止めてよ!」
『いや、リーサスも騎士だからな。
あれくらいでどうにかなるような、やわな奴じゃねーよ』
「うるっさいわね!
私の伴魂でしょ!? こういう時くらい、主の言うこと聞きなさいよ!」
『うわぁ~……。無茶ぶり、きたぁ~……』
「それとザイル!
リーサス様の件はもういいでしょ!?
ザイルに邪魔されたけど、私、まだ話終わってないんだから!」
「しかし――」
「しかしもでももないわ!
これ以上、とやかく言うのなら、グラタン、ザイルには食べさせてあげないから!」
「『ぐらたん』!? 何ですか、初めて聞きますよ!
『すいーとぽてと』もまだだというのに!」
「スイートポテトはマサトに言って! 私は知らないと言ったでしょう!?」
「わかりました! わかりましたから、せめて『ぐらたん』は作って食べさせてください!」
食を人質にとって、ザイルに口出しさせない約束をとると、フィーナはリーサスの側に歩み寄った。
ザイルにねじ伏せられていたリーサスも、長兄から解放されて、剣の鞘を支えに立ちあがっている。
土で汚れた頬を拭いつつ、フィーナとザイルのやりとりを呆気にとられて見ていた。
そうしていたところへ、自分の側に来たフィーナに、自然と身構えてしまう。
不機嫌と怒りの表情を浮かべるフィーナは、ザイルとマサトに対する苛立ちがおさまりきらないまま、肩をいからせてリーサスに対峙した。
……苛立ちの一部分は、リーサスに対するものでもあった。
フィーナは物怖じすることなく、リーサスを正面から見上げて、口を開いた。
「リーサス様。
リーサス様の気分を害することを申し上げたことには謝罪いたします。
そうしたことを理解したうえで、あえて申し上げさせて頂きます。
どうか、今一度、魔法の使用方法を見直して下さい。
正直に申し上げます。
あなた様の魔法が上達しようがしまいが、私にはどうでもいいことです。
これまでと同じ方法で魔法を使い続け、リーサス様の体にどれほど負担がかかろうが、知ったことではありません。
ですが――そのせいで伴魂に負担を強いていることは御理解下さい。
先ほどのように、リーサス様が前詞を間違い、補正を伴魂が行った。
それは通常より数倍の負担を伴魂に強いているのです。
――お気づきになりませんか? ご自身の伴魂の呼吸が荒くなっていることに。
お願いですから、ご自身の伴魂に無理を強いる魔法の使用を見直して下さい」
「お願いします」と告げて頭を下げるフィーナに、リーサスは唖然とした。
フィーナがリーサスに苦言を呈したのは、リーサスの伴魂を思ってのことだと、考えもしなかったのだ。
リーサスはつと、地面を見下ろした。
リーサスの伴魂であるモモンガは、ザイルの攻撃を受けた時、大事をとってリーサスから離れていた。距離をとっていたものの、伴魂がリーサスを心配する意識は、ずっと感じていた。




