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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第四章 人語を介す伴魂
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55.国交とフィーナの立場 11


 リーサスが苦悶の呻きを漏らす。


「マサトもやめるように言って!」


 こんなつもりではなかった。


 リーサスに進言したのは、魔法を行使する際の負担が減ればと思っただけだ。


 フィーナの願いに、彼女の伴魂は肩をすくめて『だから無理だって』と告げる。


『ザイル、結構いっちゃってるもん。俺の言うことなんて聞きゃしねーよ』


「でも――っ!」


『人の話を聞こうとしなかった、リーサスの自業自得だろう? ほっときゃいいんだって』


 フィーナが頼んでも、他人事として態度を崩さない自身の伴魂、「やめて」と声を上げても聞き入れないザイル。


 一伴魂と一人の態度と行動に、フィーナの焦りと苛立ち、怒りが頂点に達した。


 その怒りで、身の内で何かが弾けたように思えた。


 そう思った時には、考える間もなく、行動を起こしていた。


「ザイルっ!!」


 怒りにまかせた声は、腹部の奥底が震えるほどの力がこもっている。


 それまで見向きもしなかったのに、その声にザイルは驚いた表情を向けた。


 フィーナは叫ぶと同時に、肩に乗っているマサトを両手でつかんでいた。


『――え?』


 状況が理解できず、きょとんとする白い伴魂を――フィーナは力任せにザイルに投げつけた。


『はっ!? え、ちょっ! ニギャッ?!』


「なっ――!」


 さすがのザイルも、マサトを木棒で打ち払うわけにもいかず、リーサスから離れて投げられたマサトを避けた。


 マサトは猫特有の軽い身のこなしで、うまく着地する。


 着地はうまくいったものの、想定外の出来事に、心臓がバクバクと早鐘を打っていた。


『おまっ――! 何すん――』


「フィー――」


水宴アクアフェスト!」


 マサトとザイル、それぞれ抗議の声を上げようとするところへ、フィーナの呪文ルキが被さる。


 唱えたフィーナの右手には、両手で輪を作ったほどの水球が生じていて、フィーナはそれを投げつけようと、ふりかぶっていた。


 マサトもザイルもギョッとした。


 ザイルはフィーナの行動を予測できる。


 投球する動作で飛んできた水球を、ザイルは左に体を傾けて避けた。


 ザイルに水球が命中していれば、ザイルの足元にいるマサトにも水がかかる。


 ザイルが避けたことに、本人とマサトは、ほっと息をついて、フィーナに抗議の声を上げようとした――。


「フィー――」


『おま――』


 ――ところへ、フィーナが左腕で続けざまに水球を投げつけた。


「『っ!?』」


 完全に虚を突かれたザイルは、顔面にまともに水球をくらい、その水はザイルの足元にいたマサトにも降りかかった。


 フィーナは一度の呪文ルキで、二つの水球を生じさせていた。


 一つはザイルとマサトの死角に留め置き、最初の一つを投げて避けた油断をついて、残りの一つを投げつけたのだ。


 不意を打たれて濡れたザイルとマサトは、硬直して水を滴らせている。


「少しは頭、冷えた!?」


 数秒の硬直の後、ザイルは腕で顔を拭い、マサトは身を震わせて体毛にかかった水分を飛ばしていた。


「しかし――」


 ザイルとしてはリーサスを叱ったと同時に、フィーナを庇ったつもりだった。


 フィーナから見ると、リーサスに対する行為は行き過ぎて見えるかもしれなかったが、ザイルとしては「許容内」と判断していた。


 リーサスは騎士でもある。


 体躯は人より鍛えてある。


 そうしたザイルの想いは、フィーナもわからないではなかったが、行き過ぎ感がどうしても否めなかった。




フィーナの不意打ちです。

強力な力で問答無用に。

――ではなく、誰でも使えるもので、使い方次第で対処する。

この物語では、それを基本で考えています。

強力な魔法もあって、使う機会もいずれは出てくるかもですけど。

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