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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第四章 人語を介す伴魂
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51.国交とフィーナの立場 7


 フィーナとしては良かれと思っての助言だ。


 リーサスは貴族籍ながらの豊富な魔力を有しているし、ザイルの弟である。


 少し助言をすれば、苦手だという魔法も、鍛練次第で無駄な魔力を使用せず、行使できるのではないかと思ったのだ。


 前詞アンセルを唱えても呪文ルキを唱えても、作用の片鱗さえ伺えない生徒を、フィーナはラナの友人である同学年生で見知っている。


 指導をして欲しい。


 請われたものの、フィーナには彼らに何を助言すればいいのかわからず、苦い思いを噛みしめた経験があった。


 けれど。


 リーサスの魔法の発動時の前詞アンセル呪文ルキ、そして起きた魔法。


 その流れの中で、フィーナも気付いたことがあった。


 奢りなどなく、リーサスの助けになればと告げた言葉だった。


 対して、リーサスはリーサスで、フィーナに忸怩じくじたる思いを抱いていた。


 魔法が苦手だと、リーサス自身、理解している。


 その点に関して、一つ年下のアルフィード――そのアルフィードよりさらに六つ年下の少女に、助言を受けようとしているのだ。


 それがリーサスには我慢ならなかった。


 フィーナに対する言葉を聞いたカイルが、眉をつりあげて、リーサスに口を開こうとした。


 カイルは、先の来客室でのやりとりから、鍛練場に到着してからもフィーナのすぐ後方に控えていた。


 フィーナは「魔法を近くで見たいのだろう」と思っていたようだったが、カイルの本心としてはリーサスを牽制してのものだった。


 フィーナと近しく接してきたカイルには、フィーナがリーサスに告げた言葉が、彼を思ってのことだと理解できた。


 自分の経験が参考になればと、秘匿することなく助言するフィーナの心根を、カイルも理解していた。


 そのフィーナを無下にするリーサスの言動が、カイルは我慢ならなかった。


 そうして発言しようとするカイルの肩を、ザイルがつかんで押しとどめた。


 ザイルの行動にカイルは顔をしかめたが――ザイルの表情と雰囲気を感じ取って、自身の行動を押しとどめた。


 ザイルは、カイルがこれまで見知っているどの状態よりも、恐ろしい畏怖を体に纏っていた。


「殿下の御心をわずらわすまでもありません。

 身内のことは身内で始末します」


「――大事おおごとにはするな」


 カイルの言葉には返事をせず、冷たい笑みを口元に浮かべて、頭を下げるに留めていた。


 ザイルの纏う雰囲気が余りにも冷徹で――冷酷で。


 リーサスに対して怒りを覚えていたカイルが、リーサスの身を案じる立場となるほど、ザイルの怒りと侮蔑は顕著だった。


 フィーナはリーサスの言葉を受けて、自分の立場を再認識していた。


 ここはセクルトではないのだ。


 近しい面々が側にいるから勘違いしてしまったが、リーサスは貴族籍の騎士だ。


 ザイルとのこれまでのやりとりから、家族であるリーサスにも同じ態度をとってしまったが……罰せられてもおかしくない行為だった。


 リーサスとは初対面に近しい関係だというのにだ。


 ザイルもカイルもオリビアも。


 アレックスもレオロードも、フィーナが身分の違いを感じることのない態度で接してくれている。


 それが普通でないのだと理解していて、頭の片隅には常に置いていたつもりだったが……体に沁み入るほど覚悟はしていなかった。


 フィーナは俯いて唇を引き締めると「申し訳ございません」とつぶやいた。


「出過ぎた真似を致しました。心証を害する行為であったこと、重ねてお詫び申し上げます」


 簡易な挨拶を行い、謝罪の旨を明らかにする。


「――けれど」


 謝罪の意志は明らかにした。謝った。


 謝った上で、フィーナはどうしても伝えたかった。


「どうか今一度、魔法の鍛練方法を見直してみてください。

 前詞アンセルを間違っても魔法が発動するのですから、能力的には――」


「あなたの助言など必要ないと言ったのが、わからないのですか?」


 関わるな。触れるな。


 そう牽制した部分に踏み込んでくるフィーナに、リーサスは反射的に告げていた。


 魔法が苦手だと――長兄、次兄、二人を見てきてリーサスも自身の能力を理解している。


 良くも悪くも注目を集めるベルーニア家の跡継ぎである長兄、ザイルは、幼いころから勉学も武術も高評価を得ていた。




リーサスの胸中に絡む話になってしまいました……。

私の中でのリーサスは、フィーナ同様、ぽやっとした子で、好きなことには周囲の迷惑にかまわず夢中になる。

……ってイメージだったんですが。

いや、根本は変わってないけれど。

う~ん。

年の経過も関連してるんですかね。

私の知らないところで。(苦笑)

すみません。もう少しリーサスに関する件、続きます。

リーサスと言うより、ベルーニアの長兄と末弟の絡みになります。

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