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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第四章 人語を介す伴魂
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49.国交とフィーナの立場 5


 オリビアの意図に気付いたのだろう。


 ザイルはオリビアとディルクに肩をすくめて見せた。


「フィーナの同伴者としてセクルトに滞在していた時に、この場にも足を運んでいたので。

 ……むしろ、お二人が知らなかった方が驚きですが」


 自身の管理下の現状を知らなかったのかと、暗に含んだ苦言に、オリビアもディルクも渋面で口をつぐむほかない。


 ザイルは現状を知らなかった二人をこんこんと責めるつもりはなかったらしく、すぐに話題を転じた。


 別馬車で到着したばかりのフィーナを呼び寄せて、平地を見せる。


「どうします?」


 どのような鍛錬を行うのかと尋ねるザイルに「ん~~……」とフィーナは考え込んで、腕に抱いている自身の伴魂に「どうする?」と尋ねていた。


『任せる。』


「えぇ……?」


『たまには自分のしたいことしてみろよ。

 こんだけ広い場所なんだ。

 普段しようと思っても場所の制限があってできないこと、あるだろ?

 ……あ。火炎属性はやめとけな。

 火事になったらまずいから』


「すでに制限されてるじゃない」


 口をとがらせながらも、フィーナは思うところがあったのだろう。


「じゃあ……」


 つぶやいて、マサトに耳打ちしていた。


『いいんじゃね?』


 聞いたマサトもおもしろげに口元をゆがめていた。


 フィーナの準備が出来たこと、フィーナが実演して見せようとする魔法をザイルに伝えると、ザイルもわずかに目を見張っていた。


 少々考えた後、リーサスを呼び寄せる。


 フィーナと並んでザイルと対面するリーサスは、居心地が悪そうな表情を浮かべていた。


 リーサスの腰には、モモンガが捕まっている。きょときょとと周囲を見渡す愛らしい仕草に、フィーナは懐かしい思いにかられた。


 ドルジェの幼馴染、ジークの伴魂もモモンガだった。


 ザイルはまず、リーサスに唱える魔法の指示を出す。


「なぜ」と言いたげに眉を寄せたリーサスだったが、口をつぐんでザイルの言葉に従った。


 コテージには柵付きのウッドデッキが設えてある。


 コテージ内から続くデッキには屋根もついていて、日よけ、雨よけも担っていた。


 そのデッキに、オリビア達は用意された椅子に腰をおろして、リーサス達の様子を眺めている。


 リーサスとフィーナが並び、側に立つザイルが指示を出し、マサトは今のところフィーナに抱きかかえられていた。


 ザイルに指示を受けたリーサスは、ザイルやフィーナ達より数歩、前に進み出て、平地の方へと足を運んだ。


 そうしたあと、少々考えて、半身をザイルを含む、後方の見学者にも自身の魔法が見えるような体勢をとった。


「魔法は苦手なのですが……」


 リーサスは武芸の鍛練ばかり励んでいた。


 魔法は鍛練の指示があったとき、必要最低限しか取り組んでいない。


 長兄に告げると、ザイルは腕を組んで目をまたたかせた。


「それが?」


「いえ……何でもありません……」


 言い訳が通用しない雰囲気を察して、それ以上、リーサスは武芸に励んでいた事情を話すのを諦めた。


 諦めて、腰にしがみついていたモモンガを肩に乗せて、その額に頬を寄せる。


 嬉しげに頬にすり寄ってくる伴魂に、これから魔法を使うこと、使用する魔法を意識下で伝えて、助力を頼んだ。


 そうして息をついて目を閉じると、腰の高さに上げた右手の手の平を空に向けて、意識を集中させた。


「全ての母にして全能なる水の女神よ。その恵みを我がに――。

 水宴アクアフェスト


 前詞アンセルの後、唱えた呪文ルキに応じて、リーサスの手の平のわずか上方に、手の平サイズの水球が出現した。


 球状の水は、たわんでひずみ、形を保てず、数秒後にはリーサスの手に落ちて彼の手と地面を濡らした。


 水宴アクアフェストは水を出現させる魔法だ。


 水を必要とする時、重宝されている。


 苦手な魔法だが、発動できたことに、リーサスは胸をなでおろした。




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