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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第四章 人語を介す伴魂
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47.国交とフィーナの立場 3


 オリビアの発言を聞いても、リーサスは納得できない部分があったのだろう。


 助けを求めるように、兄であるディルクにすがる眼差しを向けた。


 ……ディルクに助けを求めること自体、間違いなのだが、リーサスは気付いていない。


 ディルクはオリビアに忌憚なく接し、敬語を使用しないシンを、こころよく思っていないのだから。


 弟の眼差しに気付いたディルクは、晴れやかな笑みをたたえて口を開いた。


「シン殿をオリビア様の騎士団から除名しよう。

 いい機会だ。

 本人も望んでいるのだし、時期が来たら退団すると公言しているのだから」


「そんな、兄上っ!」


 焦るリーサスに、額を抑えたオリビアが「それは少し待って」と告げる。


「いずれ騎士団籍から、はずそうとは考えているけれど。

 シンから得たいものが、私にもあるのよ。

 そこはもう少し待って。

 ……リーサス。

 あなたもわかったでしょう?

 非難なり苦言なり呈するのは構わないけれど、あなた自身がそうした対象ときちんと向き合ってから行いなさい。

 先ほどの言葉も、フィーナとマサト、一人と一伴魂と接する機会があれば、認識も違ったはずだから」


 言われて、リーサスはしぶしぶオリビアの言葉を受け入れた。


 そうしつつ、ちらりとフィーナに目を向ける。


 自分より年下の少女。


 これまでの話に何かしら反応することもなく、聞き役に徹している。


 そうしたフィーナに訝しげな眼差しを向けて――。


 そうした目で見ている最中、ふとフィーナがリーサスの方を見た。


 フィーナがリーサスを見たこと自体、何の意味もない。


 何気なく行った所作の中で、偶然目があってしまっただけだ。 


 ぎくりと体を強張らせるリーサスに対し、初めてリーサスと視線を合わせてフィーナは、きょとんと眼をまたたかせた。


 そうした後、リーサスに小さく微笑んでから、オリビアやカイルなど、その時口を開いていた面々に視線を向けた。


「私はどうすればいいのですか?」


 フィーナの言葉に、オリビアは腰をおろしている椅子の背もたれに――後方に寄りかかって嘆息した。


「現状維持でいきましょう。マサトに関して、アブルードに関して、見知ったことは全て口外しないように。

 ……それがどの範囲まで含まれるか。

 前回の話で理解してくれているとは思うけれど」


 最後に一言、オリビアが釘をさして、その場は散会することとなった。


 椅子から立ち上がったフィーナを、ザイルが声をかけて呼び寄せる。


 ザイルは同時に、リーサスも呼び寄せていた。


 腕にマサトを抱いて、ザイルの元へ歩み寄るフィーナ、フィーナとマサトに対する警戒心を全身に纏うリーサス。


 側に来た二人を見て、ザイルはフィーナに尋ねた。


「最近、魔法の鍛練は行っているのですか?」


「うん。カイル達も一緒だから、魔力底上げの基礎鍛練ばかりだけど。

 ……あれって、限界までさせるから、地味にキツくて……」


「あはは……」と力なく苦笑するフィーナに「そうですか」とザイルは答えて、リーサスに目を向けた。


「伴魂は側にいますか?」


「……今は、騎士団に置いていますが」


「そうですか」


 答えて、ザイルはオリビアに顔を向ける。


 ザイルとフィーナ、リーサスの動きを見ていたオリビアは「何があるのか」と室内に留まっていた。


 オリビアだけではなく、室内に同席した面々全員、ザイルの言葉に聞き耳を立てている。


 カイルに至っては、フィーナに苦言を呈したリーサスが、フィーナの側にいる点を案じて、フィーナの背後に控えていた。


 ザイルはオリビアに口を開いた。


「騎士団の屋外鍛練場をお借りしてもよろしいでしょうか」


「なぜ?」


「『百聞は一見にしかず。』

 フィーナの能力に関しては、実際、目にしたほうが理解できるかと」


「『ひゃく……』?」


 ザイルが口にした、前半の言葉は、理解できなかったオリビアだったが、後半は理解でき、告げながらザイルが視線をリーサスに向けたのを見て、ザイルが何をしようとしているのか、漠然とながら理解した。


 理解すると同時に、オリビア自身、その場に立ちあいたいと思った。


 フィーナの能力は聞き及んでいるが、実際、目にしたことはなかったのだ。


「いいわ。私も同席するけれど」


 オリビアの発言は、ザイルも想定していたようだった。


「構いませんよ」と告げるその口で、室内の面々をぐるりと見渡した。


「他に同席したい方がいらっしゃるのなら、どうぞ」


「え? な、なんでザイルがそんなこと言うの?

 そんな話になるの?」


 フィーナは戸惑っていたが、ザイルはマサトに目を向けて「かまいませんよね?」と確認している。


 ザイルの考えにマサトも気付いて『仕方ない』と嘆息して了承した。


 結果、室内にいる者全員が同席することとなった。


 フィーナだけが、最後まで戸惑い続けていた。





PCの調子が悪く、更新時間、遅くなりました。

そして、ストック使い切りました……。

あわあわ。

最近、私ごと(入院中の家族に関して)で時間をとられてたので、ストック書けない日もあって。

今日はストック溜め、しとかないと。

あ。明日明後日は泊まりがけ研修だった……。(汗)

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