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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第四章 人語を介す伴魂
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45.国交とフィーナの立場


 マサトが自身の事情を話してから二週間ほど後のこと。


 マサトとフィーナは、マサトの事情を話した面々と共に、以前訪れた来客室に、再度、集まった。


 声をかけたのはオリビアだ。


 マサトが依頼していた件に関して話をと、設けた場だった。


 揃った面々を目にして、オリビアが口を開いた。


 内容は、アブルードとの国交に関することだ。


 必要最低限の慶弔の場に書面を寄せることはあっても、式典には都合がつかないからと参加を見送り続け、ここ数十年、疎遠となっている。


 完全に国交を絶ったわけではないのだが、貴族籍の面々の中でも、アブルードの国の名を聞いても、それが国の名とさえ認識できない者が多いと言う。


 そうした関係にある国は、アブルードに限ったことではない。


 他にもそうした国々はあるので、アブルードに関しては「距離的にも関係的にも遠い国」とされていた。


「正直。国交を絶っててくれた方がありがたかったんだけど……」


 渋い表情でオリビアが呟く。


 マサトの件、ひいては主であるフィーナを思っての発言だと、当事者である二人はすぐにわかったので「気にしないでください」『そこはそこ。これはこれ。話は別だろ』と、それぞれの思いを口にした。


「国同士の関係としては、正式な手続きを経て要請があれば、無下にはできないの。

 その点は、わかって」


『この国とアブルードがどう言った関係か。そこを知りたかったんだ。

 思ったより、早く知れてよかったよ。

 状況を把握できれば、こっちも準備できるからな』


「準備って……」


『心配すんな。めちゃくちゃなことをするつもりはないから。防御策を準備するだけさ』


「防御策……」


 困惑気味につぶやくオリビアに、マサトは苦笑する。


『だから心配すんなって。奇抜なことはしないから』


 フィーナと彼女の伴魂であるマサトを見て、オリビアは嘆息した。


「事情が事情だから、表立ってフィーナを護衛の対象と出来ないのよね」


 マサトに関する様々な件をつまびらかにしていない状態では、護らなければならない理由がない。


 マサトの過去を明らかにしたとしても、護衛の対象とすると反発を受ける可能性もあった。


「アルと同じように、私の側仕えとすることも可能だけれど……」


 歯切れ悪く、困った表情を浮かべるオリビアに、マサトが首を傾げた。


 オリビアがそうした申し出をする可能性は考えていて、断ることを考えていたマサトとしては、言い淀むオリビアの反応の方が意外だった。


『そこを頼るつもりはなかったが……何か不都合があるのか?』


「フィーナがアルの妹で、セクルト貴院生だから。……と理由で、重用するのはおかしくない話なのだけれど……。

 マサト。あなたが過去のことなり人語を介すことを除いても、誰の目から見ても、珍しい伴魂だから」


『ん? 珍しい伴魂だと都合が悪いのか?』


「私は既に、アルを側仕えとしているわ。

 アルの伴魂も珍しい伴魂なのよ。

 そのアルを側仕えとしている上に、妹だからと言って、フィーナまで側に置くと、それを良しとしない輩が出て来るでしょうね。

 ……兄上の近辺の方々が。

 珍しい伴魂を有している者を召抱えるだけでも、人目を惹く行為だから。

 騎士団を持っている、その上、珍しい伴魂所有者を次々と取り込んでいる――。何てことになると、反発されるのは目に見えているし、フィーナは兄上が召抱えるべきだ。……何て話になりかねないのが、怖いのよ」


『いっつも思うけど。めんどくせーな。王族も貴族も』


「その話ですが」


 オリビアの話を聞いていたカイルが口を開いた。


「フィーナは、私の庇護の元にあるとしようと考えていました。

 マサトが自身の事情を明かす条件として、私の庇護の元に置くと約束していたのです」


 カイルの発言に、オリビアが「そうなのか」とマサトに目を向ける。



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