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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第四章 人語を介す伴魂
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36.アルフィードの懸念【ドルジェ実家の書庫】


          ◇◇           ◇◇



 フィーナの伴魂――マサトが人の言葉を話すと知った時。


 アルフィードは驚いたものの、同席する面々ほど大きなものではなかった。


 驚いたものの、なぜか納得した。


 フィーナの伴魂は当初他の伴魂と大きく異なると感じていた。


 ――それが何か。


 問われてもうまく説明できず、そう思うからとしか言えなかったので、他の誰にも――フィーナにも言えずにいた。


 ドルジェに帰省した時。


 セクルトで見かけた時。


 都度都度、注意を払っていたのだが――。


 人語を介する件は「だから他の伴魂と異なる印象を受けたのだ」と思えたのだが。


 事が「イセカイテンセイシャ」という、わけのわからないものに及び。


 ……何より。


 その後、白い伴魂が口にした内容の方が、アルフィードに衝撃を与えたのだった。




 アールストーン校外学習時の確認事項を行った週、その休日の翌日。


 オリビアの招集を受けた場で、フィーナの伴魂、マサトの話を聞いた。


 彼の素性、これまでの経緯。


 そうした話の中でアルフィードは息を飲んでいた。


 ――アブルード。


 国交が断たれて久しい国の名を、アルフィードは覚えていた。


 マサトの話を聞いた時、驚きと共に身の内に起きた感情を何と言えばいいのか――アルフィード自身、説明できない。


 息の止まる驚きと――困惑。


 なぜ、それが関係してくるのかと動揺した。


 アルフィードは同じ時にその国の名を耳にしたリーサスを、そっと伺い見たが――。


 リーサスは気付いていないらしく、アブルードの国名を聞いても、驚いた様子は見られなかった。


 リーサスの反応に、アルフィードは我知らず安堵した。


 この場に置いて、同じ状況を経験したリーサスが気付いていないのが、救いだった。


 安堵しながら、思考を過去へといざなう。


 どのような経緯で、どのように知ったのか――と。


 思い、考え、過去を振り返る作業を、目まぐるしい速度で行っている時だった。


「アル?」


 オリビアに声をかけられて、ハッとした。


 声につられて見ると、怪訝な面持で自分を見ているオリビアと目が合った。


 そこでようやく、アルフィードは自分の置かれた状況に思い至った。


 オリビアは、自分とディルクに、アブルードとの国交がどうなっているか、尋ねていたのだ。


 声は聞こえていた。


 聞こえていたが、思考の隅に追いやられていた。


 アルフィードはオリビアに頷いて肯定を示し、了承の意志を伝えた。


 アルフィードの返事を聞いて、オリビアがディルクに話しかける素振りから、アルフィードへの助力を頼んでいるのだろうと思えた。


 これまでだったら「一人で大丈夫」と虚勢を張れたのだが――。


 今はどうしても、気がそぞろになっているので、きちんと仕事をこなせる自信がない。


 オリビアから申し渡された内容は、ディルクが理解している。


 そうした状況が、アルフィードには肩の荷が下りる心地だった。


 ディルクも共に対処してくれるなら、今現在、気になっていることを解消したあとで、ディルクに尋ねて、それからきちんと仕事をこなせばいい。


 そう、思っていた。


 今はアブルードとの国交確認より、アブルード自体に関して、調べたいことが、いろいろとあった。



       ◇◇        ◇◇



 フィーナと白い伴魂に施した、戒めの輪。


 それがアブルードの鑑定書付きだったと、アルフィードは覚えている。


 アブルードの名は、世界各国の国の一つとしての認識があるだけで、特段、気にしていなかったのだが、フィーナと白い伴魂に施した戒めの輪の存在から、アルフィードの意識に残る国名となった。


 国交が断たれて久しい国の名で書かれた鑑定書が付いている物を、なぜフィーナに施そうとしたのかと、アルフィードはその段階から振り返った。


 戒めの輪の存在は、以前から知っていた。


 なぜ知っていたのか。


 そうして考えを振り返った時、思い出したのは、ドルジェの家に保存されている書物の数々だ。


 先祖代々、薬屋を営む関係上、薬草に関する膨大な書物が、エルド家の書庫に保管されている。





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