32.白い伴魂の事情【使用された魔法】
騎士団の面々もよく使っていたのだが、無効化する魔法を見たことがなかった。
オリビアの言葉を聞いて、カイルはマサトに目を向けた。
その視線を受けて、マサトが小さく息をつく。
『――間違い、なさそうだな』
マサトの言葉を受けて、カイルはオリビアに向き直った。
「以前――この場で、校外学習時の騒動の確認をしているとき、マサトは偽ニックが他の国の者である可能性を口にしたでしょう。
――偽ニックが使用していた魔法。
フィーナが使用した魔法と、似ていました」
『どちらもアブルードの魔法だからな』
「アブルード?」
オリビアが首を傾げる。
カイルとザイルから諌める眼差しを受けて、オリビアは口をつぐんだ。
質問は後でと、非難を含んだ眼差しだった。
「フィーナとマサトは連携して魔法を使用していました。
――人語を介す伴魂自体、特異なので、その連携は二人独特のものでしょうが。
問題は使っていた魔法です。
騒動の時は、高度な魔法だと思っていたので、文献をさがせばあるのだろうと思っていましたが――どこにもありませんでした。
事実確認をしたときに、マサトが偽ニックが他国の者である可能性を口にしたのを聞いて――疑問がふと、答えを持ったのです。
偽ニックとフィーナが使用した魔法は――この国の魔法ではないのでは。……と」
カイルは一度、そこで言葉を切った。
しん、と、室内が静寂に包まれる。
同席する面々は、所在なさげに体を小さくしているフィーナに目を向けた後、堂々としているフィーナの白い伴魂――マサトに向けた。
誰も、何も言わない――言えない。
口にするには、あまりにも事が大きすぎて――誰も口火を切ることができずにいたのだ。
寄せられる視線を受けたマサトは、くっと小さく笑った。
『――正直。王子様が自ら書物をあさって、魔法に関して調べようとする気概があったとは思わなかった。
そんなことはしないだろうと、なぜか思いこんでたから、口を滑らしてしまったんだ。
――非難してるわけじゃねーよ。
話の運びも妥当だ。
同席する者が多い場合、時系列をおって話した方が、理解を得やすいからな。
――話を戻すが。
俺について話したほうが、良さそうだな。
俺はここにいるフィーナ・エルドの伴魂だ。
フィーナを我が主として忠誠を誓っている。
だが――。
フィーナの伴魂となるまでは、アブルードの子飼いとして使われていた異世界転生者だ』
短めですが、キリのいいところまで。
オーロッドもアブルード関係者だとの確認作業でした。
偽ニックに関しては「アブルードの者」と断定していましたが、オーロッドはまだだったので。
同じところの繰り返しで申し訳ないです。
これからマサトが異世界転生者であることを明かしていきます。