30.白い伴魂の事情【マサトとザイル】
レビュー書いて下さった方。
ありがとうございます!!
すごく励みになります!
感想欄は返信欄で書けますが、レビューはそうした所がないので、この場をもってお礼を言わせていいただきます。
「異世界転生のお話は好きだけれど、それを題材に、少々変わった設定で書いてみたい」と思って書き始めた作品なので、そうした面の感想も頂けて、嬉しい限りです。
今後とも、よろしくお願いいたします。
言って、フィーナは周囲に目をむけるように身振りする。
フィーナの動作につられて、ザイルとマサトは周囲に目を向けた。
オリビアをはじめ、同席している面々が、二人と一匹のやり取りを呆然と見ている。
呆然としながら、誰しもわかったことがあった。
声にしたのは、オリビアだった。
「ザイル――あなた、マサトのこと知ってたの?」
親しげに話す素振りは、今日初めての事でなく、長らくそうした関係であったとうかがえるものだ。
「マサト?」
誰のことだと眉をひそめるザイルに、マサトが尻尾をピンと伸ばした後、ゆらゆらと揺らした。
『俺だ俺』
「マサト――、という名でしたか」
『そういや、言ってなかったか?』
「初めて知りましたよ」
「――知っていたのでは、ないの?」
わけがわからないオリビアに、ザイルは少々考えて口を開いた。
「名は初めて知りましたね。なくても不便はなかったので。
――話すかどうかは、ええ。知ってましたよ」
悪びれることなく告げるザイルに、オリビアは怒りを顔に灯した。
「――何かあれば、報告するようにと言っていたはずだけど」
「そうですが『襲撃を受けるような何か』はなかったので、その通りに報告していましたが」
「ザイル――っ!」
鈍いと言われるフィーナにも、オリビアの怒りを感じた。
ザイルの返答は、言葉遊びのようなものだ。
オリビアの言う「何か」とは、通常とは異なる出来事をさしていたのだろう。
フィーナでさえそう思うのだから、ザイルがわからないわけがない。
オリビアの真意に気付きながら、言葉の意味を取り違えたと言っているのだ。
――本当はオリビアの本意を知っていたのに。
たぎるオリビアに、ザイルは大げさに息をついた。
「お側にいない間、少しは成長なさったかと思いましたが――以前と変わられていないのですね」
「――何ですって?」
「お叱りならば、どうぞ。お受けいたしましょう。罰すると言うのならば、ご存分に。甘んじてお受けいたしますよ。
――ですが。
私がフィーナの伴魂――マサトが人語を介すると報告していたら、おそらく彼の伴魂は、姿をくらましていたでしょうね。
フィーナとの契約を解除することなく、中途半端な状況、そのままに。
そうした状況にならないよう、対処に苦慮した私の配慮を、少しでも思い至る思慮深さを習得して欲しかったのですが……高望みしすぎたようですね」
「――――――っ!」
肩をすくめながら告げるザイルの言葉に、オリビアは言葉に詰まる。
ザイルの苦言に唇をかみしめながらも、そうした行動をとる可能性があったのかと、尋ねるように視線を向けたオリビアに、マサトも肩をすくめた。
『ザイルを庇うわけじゃないが。可能性としてはあったな』
「そのつもりだったでしょうに。
幾度か私がオリビア様にどのように報告するか、潜んで確認していたでしょう?
しかも、あなたから聞いた話、前提の報告をわざとさせたりして――。
嘘をつくわけにもいかず、どう上手く状況を切り貼りして、つじつまが合うように報告しようかと苦労しましたよ」
『ちっ。バレてたか。ホントお前、かわいくねーのな』
「人を散々試してようやく『敵でない』認定する方に言われたくないですね。
今も『味方でない』部類なのでしょう、私は」
『いや。ちょっと格上げしてんぞ?
『あれ? こいつ、もしかして無害?』……くらいには』
「どこまで辛口なんですか、全く……」
ザイルはマサトとそのような話をした後、オリビアに向き直った。
「このように、警戒心の塊ですからね。まずは信頼を得てからと思っていたのですよ。
フィーナの伴魂――マサトが話す件については、偶然目にしたので、隠しようがなかっただけのこと。信頼されて明かされたわけではありません。
私も知らないことばかりです。
いずれは明かしてくれるのではと思っていましたが、残念ながら、その機会はこれまでありませんでした。
信頼を得て、話を聞いていれば、いずれはオリビア様にも御報告する予定でしたよ。
――彼が許してくれる前提で、ですが」
ザイルはオリビアにそう告げると、今度はマサトに向き直った。
「そうして長く話さずにいたことを、急に話す気になったのは、そうせざるをえない事情が生じた、ということでしょうか?」
『そんなところだ』
マサトは苦笑して肩をすくめた。
「ふむ」
マサトの返事を受けて、ザイルは少々考え込んだ。
そうして室内にいる面々を見渡して、口を開いた。
「彼も事情を話すつもりのようですし、ここからは口をはさまず、話を聞きませんか。
聞きたいことがあれば、後ほどまとめて聞くと言うことで――」
混ぜ返しているのは、マサトとザイルだろう……。
誰もが胸の内に抱えた思いだったが、話が進まないのは確かなので、在席する面々はザイルの提言を受けいれた。
事情説明を促されたカイルは、話を再開したのだった。
今、気付きましたが、ザイルって久々の登場なのですよね。
なのに、ブランク感じない……。
勝手に話してくれます。わお。
<ちょっと予告>
近々(……と言っても数か月内)、番外編的な、小話集を、関連性のある別タイトルで掲載予定です。シリーズとしようと思ってます。
準備中です。どうした形式にしようかで悩んでいるので、そこを決めるのに時間がかかるかも。
早く掲載したいけれど。
考えていたけれど、話の流れにならなかったものだったり、考えてたけど、本筋進めるのに焦って忘れてたり(←あ。)、したものです。
……掲載しなくても、大丈夫だったから掲載しなかった。ってのが、一番の理由ですけど。
軽~い話からそうでないものまで、単発の話の集合体としたもので考えています。
コメディ的なものを書きたいのです……(切実)




