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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第四章 人語を介す伴魂
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30.白い伴魂の事情【マサトとザイル】

レビュー書いて下さった方。

ありがとうございます!!

すごく励みになります!

感想欄は返信欄で書けますが、レビューはそうした所がないので、この場をもってお礼を言わせていいただきます。

「異世界転生のお話は好きだけれど、それを題材に、少々変わった設定で書いてみたい」と思って書き始めた作品なので、そうした面の感想も頂けて、嬉しい限りです。

今後とも、よろしくお願いいたします。


 言って、フィーナは周囲に目をむけるように身振りする。


 フィーナの動作につられて、ザイルとマサトは周囲に目を向けた。


 オリビアをはじめ、同席している面々が、二人と一匹のやり取りを呆然と見ている。


 呆然としながら、誰しもわかったことがあった。


 声にしたのは、オリビアだった。


「ザイル――あなた、マサトのこと知ってたの?」


 親しげに話す素振りは、今日初めての事でなく、長らくそうした関係であったとうかがえるものだ。


「マサト?」


 誰のことだと眉をひそめるザイルに、マサトが尻尾をピンと伸ばした後、ゆらゆらと揺らした。


『俺だ俺』


「マサト――、という名でしたか」


『そういや、言ってなかったか?』


「初めて知りましたよ」


「――知っていたのでは、ないの?」


 わけがわからないオリビアに、ザイルは少々考えて口を開いた。


「名は初めて知りましたね。なくても不便はなかったので。

 ――話すかどうかは、ええ。知ってましたよ」


 悪びれることなく告げるザイルに、オリビアは怒りを顔に灯した。


「――何かあれば、報告するようにと言っていたはずだけど」


「そうですが『襲撃を受けるような何か』はなかったので、その通りに報告していましたが」


「ザイル――っ!」


 鈍いと言われるフィーナにも、オリビアの怒りを感じた。


 ザイルの返答は、言葉遊びのようなものだ。


 オリビアの言う「何か」とは、通常とは異なる出来事をさしていたのだろう。


 フィーナでさえそう思うのだから、ザイルがわからないわけがない。


 オリビアの真意に気付きながら、言葉の意味を取り違えたと言っているのだ。


 ――本当はオリビアの本意を知っていたのに。


 たぎるオリビアに、ザイルは大げさに息をついた。


「お側にいない間、少しは成長なさったかと思いましたが――以前と変わられていないのですね」


「――何ですって?」


「お叱りならば、どうぞ。お受けいたしましょう。罰すると言うのならば、ご存分に。甘んじてお受けいたしますよ。

 ――ですが。

 私がフィーナの伴魂――マサトが人語を介すると報告していたら、おそらくの伴魂は、姿をくらましていたでしょうね。

 フィーナとの契約を解除することなく、中途半端な状況、そのままに。

 そうした状況にならないよう、対処に苦慮した私の配慮を、少しでも思い至る思慮深さを習得して欲しかったのですが……高望みしすぎたようですね」


「――――――っ!」


 肩をすくめながら告げるザイルの言葉に、オリビアは言葉に詰まる。


 ザイルの苦言に唇をかみしめながらも、そうした行動をとる可能性があったのかと、尋ねるように視線を向けたオリビアに、マサトも肩をすくめた。


『ザイルを庇うわけじゃないが。可能性としてはあったな』


「そのつもりだったでしょうに。

 幾度か私がオリビア様にどのように報告するか、潜んで確認していたでしょう?

 しかも、あなたから聞いた話、前提の報告をわざとさせたりして――。

 嘘をつくわけにもいかず、どう上手く状況を切り貼りして、つじつまが合うように報告しようかと苦労しましたよ」


『ちっ。バレてたか。ホントお前、かわいくねーのな』


「人を散々試してようやく『敵でない』認定する方に言われたくないですね。

 今も『味方でない』部類なのでしょう、私は」


『いや。ちょっと格上げしてんぞ?

 『あれ? こいつ、もしかして無害?』……くらいには』


「どこまで辛口なんですか、全く……」


 ザイルはマサトとそのような話をした後、オリビアに向き直った。


「このように、警戒心の塊ですからね。まずは信頼を得てからと思っていたのですよ。

 フィーナの伴魂――マサトが話す件については、偶然目にしたので、隠しようがなかっただけのこと。信頼されて明かされたわけではありません。

 私も知らないことばかりです。

 いずれは明かしてくれるのではと思っていましたが、残念ながら、その機会はこれまでありませんでした。

 信頼を得て、話を聞いていれば、いずれはオリビア様にも御報告する予定でしたよ。

 ――彼が許してくれる前提で、ですが」


 ザイルはオリビアにそう告げると、今度はマサトに向き直った。


「そうして長く話さずにいたことを、急に話す気になったのは、そうせざるをえない事情が生じた、ということでしょうか?」


『そんなところだ』


 マサトは苦笑して肩をすくめた。


「ふむ」


 マサトの返事を受けて、ザイルは少々考え込んだ。


 そうして室内にいる面々を見渡して、口を開いた。


「彼も事情を話すつもりのようですし、ここからは口をはさまず、話を聞きませんか。

 聞きたいことがあれば、後ほどまとめて聞くと言うことで――」


 混ぜ返しているのは、マサトとザイルだろう……。


 誰もが胸の内に抱えた思いだったが、話が進まないのは確かなので、在席する面々はザイルの提言を受けいれた。


 事情説明を促されたカイルは、話を再開したのだった。





今、気付きましたが、ザイルって久々の登場なのですよね。

なのに、ブランク感じない……。

勝手に話してくれます。わお。

<ちょっと予告>

近々(……と言っても数か月内)、番外編的な、小話集を、関連性のある別タイトルで掲載予定です。シリーズとしようと思ってます。

準備中です。どうした形式にしようかで悩んでいるので、そこを決めるのに時間がかかるかも。

早く掲載したいけれど。

考えていたけれど、話の流れにならなかったものだったり、考えてたけど、本筋進めるのに焦って忘れてたり(←あ。)、したものです。

……掲載しなくても、大丈夫だったから掲載しなかった。ってのが、一番の理由ですけど。

軽~い話からそうでないものまで、単発の話の集合体としたもので考えています。

コメディ的なものを書きたいのです……(切実)


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