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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第四章 人語を介す伴魂
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29.白い伴魂の事情【校外学習時の事実 魔法】


 フィーナの様々な規格外のことは、校外学習事後の報告時の話から、彼女の白い伴魂が絡んでいるのではと、考えていた。


 フィーナは小児校時代、伴魂強奪未遂を経験している。


 そのため、オリビアはザイルを護衛として付けていたが(数か月後からは、ザイル本人の希望で、エルド家で薬草に関して、学ぶために住み込みとなり、結果、護衛として側に居続けることになったのだが)、フィーナと伴魂は自分たちで身を守ろうとしたのではないか。


 市井の民に魔法の授業はない。


 生活に必要な魔法は、親から子へ、または知り合いから知り合いへ伝えられていく。


 セクルトで学ぶ魔法は、一人が数人に教授し、段階を経て、高度なものを学んでいく。


 入学前に個人的な教授を経て、変な癖がついてしまうと、後々、生徒自身が苦労することとなる。そうした観点から、貴族籍の面々は、子供にセクルトに入る前に魔法の指導をしないのだ。


 そうした点は、フィーナも、ラナを見て理解していた。


 ラナは前詞アンセルを唱えずに点火ランカを使えるが、逆に前詞アンセルを唱えてだとなかなか点火ランカを使えない。


 点火ランカに限ったことで言えば、それでも構わないのだが、前詞アンセルを唱える風習がなかった村で育ったラナにとって、新たな魔法を取得する際、前詞アンセルの概念をなかなか理解できず、苦労している。


 新しい魔法を、前詞アンセルを唱えず出来るようなら、それでも構わないのだが、さすがにそれは難しかった。


 前詞アンセルは古代の人々が、魔法の構造を露わしたものでもあるのだ。


 ちなみにフィーナは、その辺りはきちんと叩きこまれているので、前詞アンセルを唱えて成せと言われれば、それもできる。


 フィーナの状況は、極めて特異なものだった。


 通常、市井に魔法を教授できる者はいないのだから。


 それも高度な魔法まで――他国の魔法まで。


 基本もしっかり学び、応用も可能なほど、叩きこまれている。


 ぼうぜんとするオリビアに、マサトは小さく肩をすくめた。


『身を守るためだ。仕方なかった』


「仕方なかったけど……ホントにきつかったです……」


 あはは……。とフィーナは渇いた笑みを浮かべて、焦燥激しい、遠い目をしていた。


 オリビアは次第に表情を厳しくして、今度はザイルに視線を向けた。


「ザイル――。これはどういうこと?」


 名指しされたザイルは、小さく息をついて、オリビアに答える前に、マサトに目を向けた。


「この為に、私を呼んだのですか?」


『うんにゃ。王女様とザイルの話は、そっちはそっちでやってくれ。

 ――心配すんな。

 今日、ザイルもこの場に呼んだのは、ずっと知りたがってたことを話すからだ。

 別々に話すの面倒だから、聞いといた方がいいだろうって面々を呼んでもらってんだ』


「出来れば先に聞いておきたかったものですね……」


『悪いな。俺も先にザイルに話しとこうかとも思ったんだが。

 何度も話すの、ホント、面倒なんだよ』


「私は何年も待たされて……。

 ぽっと出の方々と同等の扱いですか」


 皮肉に笑うザイルに、マサトは苦笑した。


『だから悪いって、本気で思ってるから。

 その分の埋め合わせは、考えてるよ』


 マサトの言葉に、ぴくり、とザイルの眉が動いた。


「私が満足できるものでしょうか?」


『自信はある』


 ふふふ……。と二人して不敵な笑みを浮かべる様子に、周囲がたじろいでいる中。


 二人のやり取りに慣れているフィーナが「もうっ!」と声を上げた。


「やめてよ、二人とも!

 そんな悪だくみするみたいな会話!

 みんなびっくりしてるじゃない!」


 言われて、マサトとザイル、二人は周囲を見渡した後、互いに顔を見合わせた。


「『悪だくみ?』」


 違うよな? と、二人して申し合わせている。


「私は違うってわかってるわよ!

 だけどザイルにマサトっ!

 私は知らないからね! 二人でどうにかしてよね!」


 そう告げたフィーナに、ザイルは焦った様子を見せる。


「そんなフィーナ……。あなたでなければ誰が作ってくれるのです?」


「ああ、やっぱりっ!

 私が作る前提になってるし!」


『俺、作れねーもん。道具使えねーし』


「だったら他のもので交渉してよ!」


『スイートポテトってのはどうだ? ちょうど芋の収穫時期だ』


「おおっ! これまでにないものですね!」


「ザイルっ! 料理は不器用なんだから諦めてよ!

 ホント、私知らないから!」


『フィーナは興味ねーの?』


「う……っ! そ、そうじゃないけど、今、話す内容じゃないでしょう!?」




マサトとザイル……。

二人の会話になると、どちらも勝手に話し始めます……。

特にザイル。

書くのは楽しいし、楽なんだけど、話が長くなります……。

横道それるし。

楽だけれど、舵取りが大変です。

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