27.白い伴魂の事情【校外学習時の事実 カイル編】
◇◇ ◇◇
カイルに話し、オリビアに招集を依頼して数日後。
校外学習の事後確認で集められた部屋に、再度、召集がかかった。
招集された面々は、オリビア、ディルク、アルフィード、ザイル、ゼファーソン、リーサス。
そしてカイルとアレックス、レオロードに限られた。
話の中心であるマサトとフィーナは言わずもがな。
今回、サリアとジェフは召集メンバーから外された。
まだ学生である事を考慮してのことだった。
同時に、教師陣も、セクルト貴院校を運営するのが本業なので、召集メンバーから除外されている。
休日、実家に帰っていたフィーナとマサトだったが、ザイルとは今日の件に関して、何も話していない。
フィーナとマサトがドルジェに帰省する前に、オリビアから話があったはずなのだが、帰省した二人に、ザイルはその件を口にしなかった。
だからフィーナもマサトも、敢えて自分たちからその話を切り出しはしなかった。
ザイルは所用があったため、フィーナ達と別の馬車で王都に赴き、召集日の午前中、到着した。
召集時間は昼食後。
本来なら、セクルト貴院校で授業の時間なのだが、カイルとフィーナは免除された。
面々が揃ったところで、飲み物と軽い茶菓子がそれぞれの前に準備されて、侍女たちが退出した後、オリビアが揃った面々を見渡した。
席の配置は、この前とほぼ同じだ。
今回は前回、立っていた者も椅子に座っている。
長方形の机の、短い辺の箇所にオリビアが座り、その両隣にディルクとアルフィードが座っている。
オリビアに近い側からゼファーソン、ザイル、リーサスが並び座り、対面する位置に、カイル、フィーナ、アレックス、レオロードの順で腰をおろしていた。
本来、フィーナはレオロードの位置になるはずなのだが、今回の話の中心となる関係で、カイルの隣の席となっている。
カイルとフィーナの中間地点のテーブルの上に、フィーナの白い伴魂――マサトが、背筋を伸ばして座っていた。
体の大きさの関係で、フィーナの膝の上より、机の上の方が話がしやすいとの判断によるものだった。
オリビアが、一同が揃ったのをぐるりと見渡して確認した後、カイルに目を向けた。
「それで? 改まった話があるとのことだけれど」
フィーナとマサトが使用した魔法を知らないオリビアは、不思議そうな顔をしている。
マサトの存在自体、規格外なので、それに準じることなのだろうと思っているようだった。
カイルは答える前に、ザイルに声をかけた。
「アールストーンでの話は、どれほど聞いている?」
話を振られたザイルはカイルの質問の意図に気付いたのだろう。
「この場で話された内容は、オリビア様より伺っております」と返事をした。
ザイルだけが、校外学習での事後確認で召集をかけられた場に居なかった。
話を聞いていないのなら、まず、ザイルに校外学習時の出来事を話した方がいいと、カイルは思ったのだが――説明は不要だと知って、小さく息をついた。
そうした後、ちらりと、傍らにいるマサトに目を向ける。
視線に気付いたマサトは『話してかまわない』と告げた。
カイルとしては、マサトが口火を切ってほしかったのだが――逆に任されて、どこから話したものかと、逡巡した。
考えてたものの、結局、時系列で話した方がいいと判断して、口を開いた。
「偽ニックがフィーナを連れ出して、俺がその場に合流した件についてですが。
隙をついて、逃げ出したと話していましたが、実はフィーナの魔法に助けられて、逃げることが出来たのです」
「………………。
………………え?」
声は、オリビアが呟いたものだった。
校外学習の事後確認時、偽ニックに関して、フィーナとカイル、マサトはこう口裏を合わせていた。
――偽ニックの隙をついて、逃げ出した。
あとで迷って逃げ出した場に戻ってしまうと、偽ニックが自害していた――。
その時は、ニックの偽物と思っていなかったから、素性を知られているので、自害したのだろう――……と。(口裏を合わせた話で、偽ニックが自害した時には、フィーナもカイルもマサトも、ニックと偽った者だろうと話していた)
カイルの発言に、声に出して反応したのはオリビアだったが、それはこの場にいる誰もが抱いた疑念だった。
――ただ一人、ザイルを除いて。
ザイルは、オリビアから話を聞いただけで、フィーナとマサト、カイルからその時の状況は聞いていなかったが、ある程度、予想はしていたのだろう。
特段、目を見張った驚きはなかった。
フィーナの白い伴魂、マサトの事情を、フィーナ以外にも明かしていきます。
まずは、校外学習時の、偽ニックとのやり取りに関して。
ごまかしていた本当の状況を、明かしていきます。(一部限定)




