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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第四章 人語を介す伴魂
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24.フィーナの答え【フィーナの想い 2】


 最初は成り行きだと聞いた。


 それでも、後に解除も可能だったはずなのに、こうして今まで伴魂として側に居てくれる。


『それは――』


 ――都合がよかったから。


 そう答えるべきだと、マサトもわかっている。


 フィーナの今後を考えるなら、伴魂として側にいても、危険に巻き込む可能性が高いのだから。


 しかし、マサトはそう言えなかった。


 関わるのが最後だとしたら。


 離れなければならないのだとしたら。


 せめて、本心を伝えたいと思ったのだ。


 自己満足と言われてもいい。


 ――言わずに後悔することは、もう、繰り返したくない。


(リージェ……)


 危険を冒して逃がしてくれた宿人レイブラント


 普段から憎まれ口ばかり叩いて、本当は感謝していたのに、そうした気持ちを伝えたことがなかった。


 後悔は、今も胸の内にしこりとなって残っている。


『――離れたいと、思わなかったんだ。

 めちゃくちゃなこと、しでかしたり、危なっかしくて目が離せなくて――。

 ……何て言ったらいいんだろうな。

 ハラハラするけど、おもしろくて、楽しくて。

 居心地良くて……叶うのなら……危険が、追手が及ばないのなら。

 ずっとこのままで居られたらと、思っていたんだ』


「……そうなんだ……」


 マサトの言葉を、フィーナは静かに聞いていた。


 聞き終えた後、石製の欄干らんかんの上に両手を置いたまま、ついっと空を仰ぎ見た。


 夕焼けに染まりつつある天蓋は、東の空は夜闇に移ろい始め、西の空は夕暮れに転じようとしている。


「私が伴魂、なかなか決められなかったって、話したっけ」


『……何となくは』


 フィーナや彼女の家族から、はっきりした話は聞いたことはなかったが、それらしい話は耳にしていた。


「平気なフリしてたけど……結構、焦ってたんだよね。

 お姉ちゃんと比べられるところもあったし」


 告げて、フィーナはマサトへと顔を向けた。


「へへ」と、力なくぎこちない苦笑いを浮かべていた。


「伴魂、契約しないといけないってわかっていても、どうしても、お父さんとお母さんが準備してくれたのは嫌だったの。


 ドルジェの周辺で捕まえられる魔力を持った小動物って、赤い瞳の獣しかいなくてね。


 準備してくれた伴魂候補の瞳を見ると、どうしても気乗りしなかった。


 ――幼い頃だったから、それがなぜか、わからなかった。


 赤い瞳が嫌なんだと、思ってたんだけど。


 ――マサトと契約してから……どうして気乗りしなかったか、わかった。


 お父さんとお母さんが準備してくれた伴魂候補の獣は、私を怖がってたの。


 それが私自身か、捕まった状況かまでは、今となってはわからないけど……。


 警戒して、拒否されてるのは、無意識のうちにわかってたみたい。


 お姉ちゃんの伴魂は、最初、連れて帰った時から、お姉ちゃん大好きってわかる感じだったから、伴魂契約って、互いに気にいった関係で成るものだと、無意識のうちに思ってた。


 お父さんとお母さんの伴魂も、主と信頼関係が出来てて、仲が良かったから。


 ……お父さんとお母さんの伴魂は、長い付き合いから、そうなったのかもしれないけど。


 思い返すと、ドルジェの子の中には、最初、伴魂と馴染んでいなかった子もいたの。


 小児校最初の数年は、私もそうした伴魂の感情には気付かなかったけど。


 当初、伴魂と馴染んでいなかった子も、今では信頼関係を築けている。


 でも、小児校初学年の私は、気付いていなかった部分も多かった。


 事情を知っていれば、とにかく、伴魂契約を交わして、長い年月で互いに歩み寄って、いい関係を築くこともできたかもしれない。


 ……できたかも、しれないけど……。


 多分……その場しのぎの契約は、私はできなかった」


 そこでフィーナは話を切ると、幾ばくかの呼吸の後に、浮かべていた笑みを消した。


「……利用したのは、私も同じだよ」


 静かな声音で、フィーナは告げる。


 思いもしなかったフィーナの言葉に、マサトは目を見張った。





フィーナの想いです。

深く考えずに行動する性格ですが、いろいろと思ってるところはあります。


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