22.告白【マサトの過去 5】
『王女様の話じゃ、第一王子を後押しする輩が関わっているだろうってことだったが、じゃあ、その誰がアブルードと関係があるのかがわかないんだ。
俺も、貴族籍の面々には詳しくないからな。
アブルードを警戒してたが、王族や貴族籍の人間が関係するとは思ってなかった。
――話を戻すが。
状況的には、かなりまずいところまで来ている。
アブルードが俺を――俺とフィーナを狙ってるだけでもヤバいってんのに、王族も絡んでくるようだと、身動きが取れなくなる可能性が出てくる。
普通なら、一庶民のフィーナが王族と関わるなどないはずなんだが、現に今、近しい存在になっている。
今後も、俺という珍しい伴魂を取得している限り、中央の奴らは国に関わる場所から離さないだろう。
フィーナの姉ちゃんは王女様との繋がりがあるから、危険を承知でも側から離れないだろうが――フィーナは、そんな義理だてする必要ないだろう?
近くに居れば、それだけ騒動に巻き込まれやすくて、最悪、王族を護るために、フィーナを切り捨てることもあり得るんだ。
それを避けるには、俺との契約を解除するのが最善の策なんだ』
そこまで聞いて、フィーナはようやく納得した。
「契約を解除しようって言ったのは……私のため?」
『……そうだ』
「イヤになったとかじゃ、ないの?」
『違う』
はっきり否定したマサトの言葉に、フィーナは安堵した。
「だったら――」
『よく考えろ。返事は今すぐじゃなくていい。身内を巻き込む可能性もあるんだ。
――その点を、よく考えてくれ』
「でも――それってお姉ちゃんと一緒って……」
『根本が違う。
フィーナの姉ちゃんは……アルフィードは、王女の庇護がある。
それは国が護るってことだ。
対して俺は、アブルードのお尋ね者で、厄介な存在でしかない。
罪を犯した奴を庇う道理など、この国でも一般論としてないだろ?
国交が断たれているとはいえ、何かしらの正式な手段をとられたら、断るのも困難なはずだ。
そうした時、フィーナまで受け渡しを要求されることはないと思うが――今のまま、伴魂として契約してると、フィーナに迷惑がかかるのは目に見えている。
そうした状況にしたくないんだ』
「――もし、アブルードが正式な手段取ったら、どうするの?」
『追手がかかる前に逃げるさ』
苦笑して告げるマサトの発言は、フィーナには発せられない続きが聞こえていた。
――だから、契約したままだと困るだろう?
『巻き込んだのは俺だ。
いくら謝っても足りないとわかっている。
だからせめて――。
これ以上、迷惑をかけたくないんだ』
『頼む』と、マサトはフィーナに頭を下げる。
少し低い位置にある白いふわふわの毛並みに包まれた頭を見つめて――。
「――わかった。考えてみる」
そう、フィーナは告げたのだった。
『そうか』
安堵の息をついて顔を上げたマサトは――。
白い伴魂は。
自身の願いを告げ、叶えられようとしているはずなのに。
どこか、寂しげな顔をしていた。
ひとまず、マサトに関する過去の話、それに伴う伏線回収ができました。
まだまだ伏線張ってるところがあります。
後になって「ここがこう繋がってた」ってわかるようにする予定です。
 




