16.密談【カイルの懸念 5】
これから話があると思ったのだが、マサトは確認事項を告げてくる。
『俺たちの疑いが晴れれば、今後、王族の庇護下に置かれると思っていいんだな?』
「そこは約束する。
カイル・ウォルチェスターの名に置いて、二人を保護する」
『判断は話を聞いてからでいい。
疑いが晴れても、厄介な存在になるかもしれないし』
含みを持った発言に、カイルは一瞬、ひるみそうになったが、了承の意を告げた。
「なんでそんな、大変そうな話になるの?」
一人、会話についていけないフィーナが戸惑いをにじませている。
そのフィーナをマサトがつと見て、カイルに告げた。
『話はするが、日を改めてくれないか? 同席する者を他にも呼びたいんだが』
「たとえば?」
警戒気味に尋ねるカイルに、マサトは続けた。
『王女様、フィーナの姉ちゃん、ディルク……まあ、そういった面々だ。俺が名前を上げるから、口が軽そうな奴がいたら、そちらで判断してはじいてくれ。
話は今回のように、極秘裏に頼む。
あとザイルも呼ばないとな。後で知ったら、うるさそうだから』
「ザイル? ザイルも、事情を知っているのか?」
カイルに聞かれて、マサトは『まずった』とバツの悪そうな表情を浮かべたが『いろいろと疑われてる節があったんだよ』とごまかした。
嘘ではない。話す事実等、いくらか事情を話しているが、詳しい話はまだしていない。
『フィーナには先に話しておきたいんだ』
「え?」
急に話を振られて、フィーナはきょとんと眼を瞬いた。
「そうなの?」
よくわからない表情を浮かべていたが、了承した。
二人の様子を見て、カイルは「もしや」と思っていた疑念の確証を得る。
あまりに情報を知らないフィーナ。
マサトは――フィーナの伴魂は、自身の主に話していない部分が多いのではないのかと。
フィーナ自身、無頓着な部分があるので、普通なら不思議に思うところも「そういったものだから」と受け止めていたのではないか。
フィーナの性格から、カイルはそう考えていたのだが、実際、その通りのようだった。
最後に、マサトはカイルに念押しした。
『フィーナが身を挺して庇ったのだけは、疑わないでくれよ」
「わかっている」
答えるカイルを見て、マサトは小さく息をついた。
『あの時は俺も肝が冷えたんだ。終わったと思ったからな。
まさか硬盾使う機転きかすとは思わなかった』
「あれって、そんなに無茶なことだった?」
『無茶も無茶。大無茶だよ』
「大無茶って――。でもその割には、鬼のように魔法唱えさせてたよね?」
『やっとかなければ、意味なかったからな。
簡単に解けない捕縛かけとかないと、逆にやばかったんだよ』
「おかげでこっちは、しばらくつらかったんだけど……」
と、フィーナは口をとがらせていた。
話はそこで終了となり、後日、詳しい日程、招集をかける人物等、調整することとなったのであった。
密談はひとまず終了です。
カイルも、自分の気持ちの変化に少し気付いた――ってかんじです。
伴魂の過去の話。
少しずつ触れていきます。




