11.校外学習 その後の顛末【オリビアの騎士団事情 6】
オリビアの返事を聞いたマサトは、カイルに目くばせをした。
カイルは向けられた視線の意味がわからなかったが、とりあえず、発言、行動を、反射的に行わないように注意した。
結果、それがマサトが望んだ行為となっていた。
『これも推測で悪いが――おそらくその偽ニック、この国の者じゃないぞ』
「……え?」
オリビアは驚いた表情をのぞかせた。
初めて耳にした情報であり、かつ、想定すらしていなかった情報なのだろう。
「なぜ、そう思うの」
あえぐように尋ねるオリビアに、マサトは嘆息を交えて続けた。
『使ってた魔法が違った。カイル殿下もフィーナも聞いただろ?』
「単に、二人が知らない魔法だったのでは――」
『魔法にも種類があるのは知っている。
が、唱える前詞、その後の呪文までの行程同じだろ。
前詞を唱える、唱えないにしてもだ。
奴らが口にした呪文は、ここでは聞かないものだった』
「それだけで――他国の者だったのではとわかるの?」
『実際、直に聞いてみればわかるよ。言葉では説明しづらい、感覚的なものだから。
――正直、このことは言うつもりなかったんだ。
はっきりしていないことが多いからな。いずれは話すつもりだったが、もっといろいろ調べてから話そうと思ってた。
けど王女様の警護の質を問われるんだったら、偽ニックが他国の者である可能性を言えば、「だったら仕方ない」とかになるんじゃねーの?
まずを持ってだ。危険な輩が国内に入っている事自体――ってか、そっちの方が問題だろ? 国の防衛はどうなっているのか、他国籍の襲撃者など想定していない、対処は難しかった。
――ってな感じで、責任転嫁する方法もあるが?』
それには、フィーナが使用した魔法も、この国の魔法からは異質であることを口にしない必要があるが。
窮地でのフィーナと伴魂が使用した魔法を、唯一、間近で見ているカイルに『余計なこと言うな』と釘をさして告げた伴魂の言葉に、オリビアは身を乗り出した。身を乗り出して、カイルとフィーナに「本当なの?」と尋ねてくる。
二人は頷いてマサトの言ったことに同意した。
「――確かに。そうすれば論点をぼかせるわ」
そうオリビアはつぶやく。しかし思慮をめぐらせた後、目を閉じて小さく息をついた。
「――その件は、今回は口外しないようにしましょう。
憶測の域にしても、何の確証もなく、軽々しく口にしていい事ではないから」
『それもそうだな。俺としても、手札として使えればと思っただけだ』
「情報としては、ありがたい限りよ」
今回の話は、そこで終了した。
順次、席を退席していく中、カイルがフィーナに声をかけた。
「話がある」
緊張を帯びた視線は、フィーナと、彼女の白い伴魂、マサトに向けられてる。
鈍いフィーナにも、カイルが何を聞きたいか、察しはついていた。
その件に関しては、全てマサトの判断次第だ。
フィーナは困り顔で、腕に抱きかかえる自身の伴魂に視線を向けた。
白い伴魂、マサトにも、カイルが何を思っているのか、わかったのだろう。
しばし考えた後、小さく息をついた。
『わかった』
そう、了承の答えを出したのだった。
今回は少し短い更新です。
きりのいい所まで。だったので。




