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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第四章 人語を介す伴魂
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6.校外学習 その後の顛末【オリビアの騎士団事情】


「姉上は今回の件、心当たりはお有りなのですか」


 カイルの質問に、オリビアは少々考えて「マサト――と、呼んで構わないかしら」と白い伴魂に伺いをたてた。


 白い伴魂の了承を得て、オリビアは話を続ける。


「カイルから話を聞いているけれど、耳にした内容、詳しく思い出せないかしら」


『思い出そうとしてるんだが……大きな声じゃなかったし、気にしてなかったからなぁ……。

 それに俺、知ってる人間少ないし』


 マサトは知っている人間の数が少ない。


 フィーナはセクルト入学前にアルフィードから指導を受けたので、主要な貴族籍の名は覚えている。


 指導の場に、マサトは同席していなかった。


『逆に聞くが、王女様はなぜ勘付いていたんだ? 

 そこの兄ちゃんもフィーナの姉ちゃんも、気付いていなかったようだが』


 話を振られたオリビア、ディルク、アルフィードが共に、何とも言えない複雑な表情を浮かべた。


 オリビアは気まずそうに、ディルクはバツが悪そうに、アルフィードはふがいなさを恥じるように。


 それぞれ三者三様、思うところがあるようだった。


「庇うわけではないけれど、アルもディルクも気付かなくて当然なの。

 その場に二人は居なかったのだから。

 私も、直接的なことや仄めかすことを言われたわけでもないの。

 ただ……第二王妃様の物言いが、気になってね」


『第二王妃?』


「――これから話すことは、全て私の主観です。

 くれぐれも他言しないように。

 オリビア・ウォルチェスターの名を持って、この場にいる全ての者に命じます」


 告げて、オリビアは室内を見渡した。


 頷く面々を確認して、オリビアは静かに話し始めた。


「もともと、第二王妃様は私が騎士団を所有しているのを快く思っていらっしゃらないの。

 王女が男性に混じって、血なまぐさいことに手を染めるべきではないとおっしゃっているし、それに関しては父である国王陛下も同じ考えよ。

 お母様も表立って反対はしないけれど、本心では賛成しきれていないとわかっている。

 お母様は、私の思いを汲んで、何も言わずにいてくれてるけれどね。

 第二王妃様には何度も、遠回しに騎士団を手放すよう、言われてきたわ。

 兄上――第一王子も騎士団を持っていないのに、私が所有しているのもおもしろくないんでしょう。

 だからと言って、兄上が騎士団を所有するとなると、緊急時において、活動しなければならなくなるから、それはさせたくないのでしょう。

 私はそうした場合、率先して動くつもりだし、それが可能な団員を揃えている自負はある。

 ――なんて。

 本心だけど、建前でもあるの。

 自分で自分の身を守るために、必要だったのが、騎士団を持った始まりなの」


 初めて聞く話が多かったのだろう。


 姉の話をカイルは終始、驚いた顔で聞いていた。


「騎士団を持った理由は――何かあったのですか」


 何か事があったから、自分の騎士団を所有するにいたったのか。


 オリビアは少々思考を巡らせて、「その話は今度機会があったときに」と話した。


「その経緯を話すと長くなるから。

 私としても、道楽で騎士団を所有しているわけではないの。

 御立派で純粋な信念からだけでもない。

 私の為に必要だった。

 そうした事情があるから、よほどの事がない限り、騎士団を手放すつもりはないの。

 校外学習前にはいつも第二王妃様から皮肉を言われるのだけれど――今回はいつもと様子が違っていた。

 いつものことだから、いつもの返事で流して。

 これまで第二王妃様は渋い顔で不機嫌に口を曲げていたのだけれど――今回は違っていたわ。

 いつものように、流した返事をしたのだけれど――それを聞いた第二王妃様は閉じた扇子で口元を隠してくつくつと喉奥で笑っていた。

 目元も笑みの形に下がっていたし、笑っていたのは確かよ。

 ――それがどうにも気になっていたの。

 その場にはアルもディルクも同席していなかったから、二人は知らない事情よ。

 今年はカイルが校外学習に参加する関係で、これまで以上に警備が必要だった。

 これまでは私が持つ騎士団で間に合っていたけれど、さすがに人手が足りなかった。

 それで信頼が置ける団長に応援を頼んだの。

 第二王妃様の小言を聞いたのは、人集めに奔走している時だったから、それを嘲笑されていると思いたかったけれど――どうしても、嫌な予感は拭えなかった」


 そこでオリビアは一つ、息をついた。


「私の騎士団の中に、勘が鋭い者がいるから、その者に同行を頼んだけれど、彼の事情で断られたわ。

 彼が同行してくれていたら、何かしら気付いてくれたかもしれないけれど」


 オリビアがその話を口にした時に――誰にも気付かれない程度、ディルクが眉を寄せていた。


「私もディルクも指示を出す側に徹するから、現場は見れないから。

 どうしても、端々までは目が届かないから、彼が現場に居てもらうことで、気付いことを報告してくれると思っていたの。相手構わず、苦言を呈してくる者だから」


 苦笑を浮かべるオリビアを見て、カイルはふと思い出した。


 校外学習の護衛の打ちあわせの折、アルフィードの立ち位置に関して苦言を呈した輩がいた。


 オリビアが話しているのは、その者のことだろう――。





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