5.校外学習 その後の顛末 3
『俺も口を挟むだろうからな。
話の途中で騒ぎになって、話の本筋がぶれても困るだろ。
俺のことは「話すネコ」くらいに考えてくれ』
「なぜ話せるかは、聞いてもかまわないかしら」
オリビアの問いに、白い伴魂は肩をすくめた。
『王女様の瞳や髪がなぜその色なのかと尋ねることと同じだよ』
白い伴魂の返答に、オリビアとカイルは顔を見合わせた。
「王族の血筋だからだけれど」
オリビアの返答に、白い伴魂は『しまった』との表情を浮かべた。
『あー……。
確かに、そうだったな。
違くて。
言いたかったのは――そうだな。
フィーナがなぜこの髪の色と瞳の色をしているのかと聞くようなもんだと言いたかったんだ。
そんなの、自分でも説明できないだろ。
姉妹でも、ねーちゃんと髪質も違うんだし。
血筋が同じでも違うんだ。
同じ伴魂でもいろいろとあるんだよ』
――姉妹でも髪質、瞳の色が異なる
白い伴魂がそう口にした時、誰にも気付かれない程度、アルフィードはびくりと小さく震えた。
それは本人しか気付かない程度の震えで、肩に止まっていた伴魂が『どうしたの?』と首を傾げる程度のものだった。
近くにいるディルクもオリビアも、白い伴魂に意識を向けていたので、アルフィードの変化には気付かなかった。
アルフィードは誰にも気付かれていないとわかると、安堵し、白い伴魂の話へ意識を向ける。
白い伴魂はアルフィードの様子に気付くことなく、話を進めていた。
『――結論としては。
鍛練は必要だったが、生まれつき、出来るようになっていたらしいとしか、俺もわからんよ。
わかる範囲で言えるとしたら、伴魂にも個性があるってことだ。
カイルの伴魂も個性があるし、フィーナのねーちゃんの伴魂も然り。
伴魂でもみんなが特異な個性持ちってわけじゃないが、俺が特別ってわけでもないからな。
俺はこうして話が出来るから、目立つだけなんだよ』
話の中に、カイルとアルフィードの名が出てきて、それぞれに視線が向けられる。
アルフィードは自身の伴魂の「個性」に全く心当たりがないので、驚いて慌てて向けられた視線に首を横に振った。
カイルも同じく、驚いた後、首を横に振ったが――こちらは心当たりのある確信犯だ。
今はまだ明かすべきではないと思ったのだろう。
白い伴魂も気付いていたが、何も言わなかった。
オリビアも白い伴魂の話に納得したのだろう。
個性に関する部分は、気になる表情を浮かべていたが、それ以上、尋ねることはしなかった。
代わりに、視線をフィーナへと向ける。
「名はつけていないの? 話がある時、名があったほうが勝手がいいのだけれど」
「名前、ですか?」
言われてフィーナは自身の伴魂と顔を見合わせた。
「呼ぶ時はどうしているの?」
「……特には。
意識下で来てほしい時は「来て」と呼び続けると来てくれるので。
あえて言うなら……「ネコ」?」
『やめてくれ。マジで。
それ、名前じゃないから。
種別の名前だから』
げんなりとフィーナに告げる白い伴魂は、少し考えて『だったら』と口を開いた。
『マサトでいいよ』
「マサト……? あまり聞かない響きね」
オリビアは怪訝そうにつぶやきながらも「まぁ、いいわ」とその点に関して、深く追求しなかった。
話を先に進めることを選んだのだ。
そうしてオリビアは、調査等の結果、判明したことを話し始めたのだった。
今回も短いです……。
キリのいい所で考えてたもので……。




