表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第四章 人語を介す伴魂
129/754

3.校外学習 その後の顛末


 アールストーン校外学習を予定より早く切り上げて一週間後。


 校外学習に参加した護衛騎士陣、校外学習運営陣、その他の関係者が集められた。


 集められた理由は、校外学習での事実確認と、それぞれの状況確認、公にしていい内容、できない内容の確認だった。


 教師陣には別で話をするらしく、集められた、王城の来客室にその顔触れはなかった。


 オリビアを中心に、右手に騎士団面々、校外学習運営陣面々が長机に向かって座っていた。


 アルフィードはオリビアの左隣に、ディルクは右隣に立って控えている。


 校外学習運営陣は、オリビアに近い方からカイル、フィーナ、ジェフ、サリアの順で座り、騎士面々は見慣れない面々が二名、並んで座っている。


 アレックスとレオロードは、カイルの護衛だからと、彼から少し離れた後方に並び立って控えていた。


 座る騎士の面々を、カイルとジェフは見知っているようだったが、フィーナとサリアはアルフィードを通じてオリビアの側仕えの女性たちと接することが多かったため、顔に見覚えはあっても名前まではわからない。


 そうした中でも、オリビアに近い上座に座る、年の頃、五十代ほどだろうか。


 中年の男性騎士は、フィーナもサリアも初めて見る騎士だった。


 若いころは黄金色だったろうと思われる髪は、加齢によるものだろう、白いものが混じり始めている。


 鼻下と口の周りに蓄えている口髭も、頭髪と同じ色合いを見せていた。


 灰褐色の瞳は、光りの具合によって薄い青の色彩がのぞく。


 長年、騎士を勤めている風合いを覗かせる男性は、重厚な威圧感を覗かせた。


 所作から厳格さを覗かせる男性は、その表情も厳しく、眉をひそめていた。


 彼がオリビアと同じように、一つの騎士団の統率をとる長、ゼファーソン・ランセブルクだと、オリビアの紹介で知った。


 オリビアは揃った面々を見まわした後、先に騎士団席に座る面々を生徒側に紹介した。


 ゼファーソンの隣にはディルクの弟、リーサスが座っている。


 リーサスは校外学習に参加していなかったが、後々の為にと呼ばれたらしい。


 騎士の二人を紹介した後、オリビアはカイルから席順に、セクルト生徒を紹介した。


 騎士志望のジェフは、騎士の二人とすでに顔見知りらしい。


 カイルは王族である立場から、これまでにも接点があったようで、ジェフとカイルに関しては、騎士の二人は動じた様子はなかった。


 フィーナとサリアの素情を知ると、騎士二人は興味深げな視線を送る。


「あなたがアルフィード嬢の妹君……」


「あなたがかの大臣の御息女……」


 フィーナもサリアも、暗に含まれる感情に、胸の奥に何とも言えないざわつく想いを感じつつ、ぎこちない笑みを浮かべて小さく頭を下げたのだった。


 室内の面々が、互いの素性を確認したのを見届けた後、オリビアはつと、アレックスとレオロードに目くばせした。


 事前に打ち合わせしていたのだろう。


 二人はオリビアの目くばせを受けると、カイルの背後から部屋の出入り口へと移動した。


 二人が扉の前についたの確認して、オリビアは再度、室内の面々を見渡した。


「先に言っておくけれど。

 この場でこれから話す内容は、この場と、それぞれの胸の内に留め、他言しないことを命じます。

 守れない者は先にこの場から出て行ってもらってもかまわないから」


 急に告げられた実質的緘口令に、居合わせた面々に驚きの色が浮かぶ。


 驚いたものの、命じたのは王女、オリビアだ。


 従う以外の選択肢はなく、室内の者たちはぎこちなくだが頷いた。


 ――王族であるカイルを覗いて。


「それは罪人に関しても口をつぐめということですか」


「――結論としては、そうなるわね」


「でしたら従えません。

 この場でどのような話をしようと、それを私が聞かずとも構いません。

 私は私で、見たままを報告します」


「カイル――」


 オリビアが制する声をそのままに、席を立ったカイルは部屋から出ようとしたのだが――アレックスとレオロード、二人の護衛が扉の前で、カイルの進路をふさいでいた。


 カイルは眉をひそめて、二人にどくよう告げるのだが、二人は従わなかった。


「殿下。せめて話を聞いて下さい」


「聞いてから判断しても遅くはないでしょう」


 説得する二人に、カイルも感づいた。


 二人は、ある程度、事情を知っている。

 事情を知った上で「話を聞いた方がいい」と感じたのだ。


 振り向いてオリビアを見ると、姉は「仕方ない」とばかりに嘆息した。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ