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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第四章 人語を介す伴魂
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1.カイルの鍛練



          ◇◇         ◇◇



「だから言ったのに……」


 傍らにしゃがみ込むフィーナの声を頭上で聞きながら、地に這いつくばったカイルは、ままならない自身の呼吸を感じつつ、指導を仰ぐ白い伴魂を睨みつけていた。


 傍らではカイルの伴魂が目を回して寝転がっている。


『慣れてないのに、よく付いてきてるほうだよ』


 側に来た白い伴魂の褒め言葉に、カイルは返事も出来ない。


 放課後。


 魔法鍛練用にと特別に解放された実践室で、カイルは白い伴魂の指導を受けていた。


 生徒の魔法鍛練事態、単独の自己訓練は禁止されている。調整が難しく、暴走してしまう生徒もいるためだ。


 そのため、教師が付き添う場合のみ、鍛練を許されていた。


 生徒が希望すれば、誰でも鍛練できるのだが、セクルトでは魔法の鍛練を行う生徒はいなかった。


 授業時以外に鍛練を行う発想がなかったのだ。


 鍛練をする生徒がいるとすれば、試験前くらいだ。


 それも「試験を合格するため」で「自らの能力を高めるため」の意識はない。


 校外学習からセクルトに戻り、騒動の報告やら事後片付けやらが落ち着いて、日常生活に戻った数日後。


 カイルは願い出て、白い伴魂から「魔法鍛練」を受けることとなった。


 魔法鍛練用の実践室には、ダードリアが付き添っている。


 カイルの護衛騎士二人も興味があるらしく、同席していた。


 フィーナも「大丈夫かな?」とカイルを心配して実践室に入っている。


 白い伴魂の申し出にそって、広い室内には一人用のテーブル一つと、その上に芯がむき出しのランプが一つ、あるだけだった。


 ちなみにダードリアにも、実践室に入った早々、白い伴魂が人語を話す洗礼を行っている。


 日ごろから生徒の突拍子もない行動に接しているからか、ダードリアは表立った動揺を見せることはなかった。


 ――それでも。


 静かに困惑しているのは、傍から見ても明らかだった。


 白い伴魂は『要は慣れだ』と細かな説明はしない。


「なぜ話せるのか」と聞かれても『話せてしまうのだから仕方ない。理由はわからない』としか答えようがなかった。


 テーブルにカイルを向かわせていると『さて』と白い伴魂は告げた。


『まずは点火ランカで百回、火付けな』


「百……!?」


 ぎょっとしたのはカイルだけではない。ダードリアも護衛騎士二人も、驚きに目を見開いている。


 フィーナも少し驚いた表情をのぞかせた。


「初めから百は多すぎない?」


「私が始めた時はもっと少なかったけど」そう呟くフィーナに『大丈夫だろ』と白い伴魂は告げる。


『フィーナは元の魔力が貴族籍の人間より、少なかったから、初めは少なめにしてたんだよ』


「しかし、いきなり百は……」


『ぐだぐた言う前に、とにかくやってみろ。

 出来る範囲でいいから』


 護衛騎士の提言を跳ねのける伴魂に、カイルは腹をくくって言われるまま点火ランカを唱え続けた。


 火が着いたり付かなかったりの中『火が付いて一回カウントな。付かなきゃ数に入らない』と言われる。


 レオロードが数を数え、アレックスが付いた火を消している。



新章開始です。

白い伴魂がしゃべるのも解禁となりました。


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