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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第三章 アールストーン校外学習
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57.校外学習二日目【人語を介する伴魂】


 ディルクとオリビアが休憩所に戻ると、姉の無事を知ったカイルは安堵に頬を緩めた。


 ディルクがカイルから事態を聞いて飛び出してからこれまで、顔を強張らせて口数少なく、ずっと心配していたのだ。


 元気のないオリビアを、襲撃を受けたショックからだと思い、休憩所についた時には意識を失っていたアルフィードの体調を気遣い。


 そうしながらカイル達は、校外学習の運営陣として今後の日程、生徒達の安全確保を、教師陣と護衛陣と話し、予定より早いが校外学習を切り上げて、城に戻る方向で話がまとまった。


 ちなみにオリビアはアルフィードと共に、同室で休息を取っている。


 オリビアに代わって護衛陣の統率はディルクがとっていた。


 話がまとまると、教師陣は生徒に指示を出しに行った。


 運営陣は、構成員であるフィーナとカイルが標的になったことを考慮して、どのように帰路につくか、別室でディルクと打ち合わせをすることとなった。


 来る時はフィーナとカイル、ジェフとサリアの四人が馬車に同乗していた。


 フィーナとカイル、護衛の騎士二人の編成にするか、それとも行きと同じ編成で、横に護衛の騎馬をつけるか。


 いや、それだと逆に目立ってしまうのでは。


 しかし馬車に余裕はない。


 では騎馬の心得があるジェフともう一人、同じく騎馬の心得のある生徒を捜してその二人が馬で、騎馬で来たカイルの護衛二人と交代し、サリアはうまく調整しようと話が進んでいた。


 そうした話が進む中、終始落ち着きのなかったフィーナが我慢できず「……あの」とディルクに口を開いた。


「ネコ、見ませんでした?」


 オリビア達が戻ってから、キョロキョロと周囲を捜していたフィーナの言葉を聞いて「そう言えば」とカイルも周囲を見渡した。


 ディルクに見なかったかと尋ねるも、ディルクは首を横に振るだけだ。


 フィーナとカイルは顔を見合せた。


 オリビアの元へ危険を知らせるために、先んじて飛び出したはずなのだが……。


「――もしかして」


 はっとしたフィーナはおもむろに口を開く。


「――わかってたフリして、迷ったとか?」


 何て間抜けな。


 そうした感情を覗かせて告げたフィーナの言葉に、間髪いれずツッコミが入った。


『誰がだ、コラ』


 軽い足音を立てて、白い伴魂がテーブルに乗ると腰を下ろした。


 ため息交じりに告げられた言葉に、周囲は一瞬、静寂に包まれた。


 ディルク、サリア、ジェフが、同様に硬直して時を止めていた。


 目の前で起きたことを信じられないように、視線がフィーナの白い伴魂へと注がれる。


 フィーナの伴魂が人語を操ると知っていたカイルは、どうしたものかと戸惑っていた。


 カイルも知ったのは先ほどのことだ。


 隠していたのだろうと想定していたので、今後も必要以上に知られる風にはしないと思っていたのだが。


 主であるフィーナをつと見ると、彼女も想定外だったのだろう。


 自身の伴魂の行動に、泡食っていた。


「ちょっ――っ!」


 口に立てた人差し指をあてて「しーっ! 声出てるっ!」と忠告するが、当の伴魂は面倒そうにため息をついた。


『もういいんだよ』


 言いながら、眉をひそめてパタパタとテーブルを尻尾で叩いている。


「でも他の人には知られないようにって――!」


 言ってきたではないか。


 そう慌てるフィーナに、白い伴魂は主を見て小さな笑みを漏らした。


『前はな。

 あの頃は伴魂としての繋がりが浅かったから、横やりの可能性を避けたかったんだよ』


 横やり――暗に含んでいるが、伴魂強奪の意味だろう。


 察する周囲の思考を白い伴魂も感じ取った。


 それに則って話を続ける。


『繋がりが深くなった今では、それも難しいからな。

 契約解除しようとしても、そうそうできるもんじゃないんだよ。そうだろ?』


 白い伴魂に視線を向けられ、問われたディルクは、そこでハッと正気に戻った。


 目の前の状況に戸惑いつつも「……ええ」と肯定する。


「良好な関係が築かれてきた伴魂を奪うと、伴魂自身にも負担がかかると聞いています」


 断言できないのは、そうした事例が少ないからだ。


 少ないのも当然だ。


 通常、契約を交わした伴魂を奪うなど、ありえないのだから。


 少ない事例ながらも、そうした状況になった場合、後の伴魂は短命になるというのが通説だった。




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