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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第三章 アールストーン校外学習
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41.校外学習二日目【カイルの伴魂の能力】


「痛っ!」


 最後の一つねりにカイルが声を上げる。


「エルド家流のお仕置き。

 お姉ちゃんにもそうやって怒られてたんだよね~」


 フィーナは笑いながら告げる。


 最後の方は、カイルをからかう素振りが覗いた。


 カイルも気付いていたが、ため息をつくに留めて、気付かないふりをした。


 そうした二人の様子を見ていた白い伴魂が、自分の主に非難がましい視線を向ける。


『お前……人には「言葉づかい気をつけろ」とか言っときながら、自分の方が王族の扱い、雑すぎだろ』


「そう?」


 フィーナの痛みも収まってきたので、再び歩き始めていた。


 白い伴魂、フィーナ、カイルと道を横に並んで歩調を合わせている。


 カイルは自身の伴魂を腕に抱えていた。


 肩にとめてもいいのだが、長時間歩く分には疲れてしまう。


『殿下もびしっと言った方がいいぞ~。

 こいつ、すぐ調子に乗るから――』


 フィーナとカイル、二人が道の中央に並んでいて、白い伴魂は添え物程度に側にいる状態だ。


 カイルに話を振った白い伴魂が、話の流れでカイルを見上げた時。


 何かに気付いたように言葉を止め、探るように、しげしげとカイルを眺める。


 カイルも視線に気づいて「どうかしたか?」と尋ねた。


『体、何ともないのか?』


「体?」


『ひどく疲れたりとか――』


「特には……」


 怪訝な面持で答えるカイルに、白い伴魂は舌を巻いた。


『さすが王族。魔力の量、半端ねーのな』


 白い伴魂の言葉に、カイルの伴魂が鳥の鳴き声で「ピーピー♪」と、嬉しそうに鳴いて羽をばたつかせる。


「暴れるな。大人しくしてろ」


 諌めるカイルだったが、自身の伴魂の声は意識下に届いていた。


(――そうそう♪ 

 カイル、すごいんだよ、すごいんだよ。

 初めてなのに、全然疲れてないんだもん)


 主が褒められたことに、嬉しげだ。


 そうしたやり取りから――カイルは何となくだが、感じるところはあった。


「どういうこと?」


 不思議に思ったフィーナが首を傾げる。


 白い伴魂が、少々考えてから答えた。


『ソイツの特異能力、転移なんだよ』


 白い伴魂が言う『ソイツ』の視線の先には、カイルの伴魂がいる。


 フィーナの伴魂が言うには、魔力の強い伴魂の中には、特異能力を持つものもいるらしい。


 そうした伴魂の能力は特別なもので、強力なものもあるという。


 ただ――そうした能力を使う分には多大な魔力が必要で、主の魔力負担も大きいらしい。


 フィーナが初めて魔法を使った時のように卒倒してもおかしくないし、命の危険もあるはずなのだが、カイルを見る限り、本人はケロリとしている。


 白い伴魂の話を聞いて、カイルも驚いていた。


 そのような気はしていた。後で人目がないところで、自身の伴魂に尋ねようと思っていた。


「なぜ知っているんだ?」


『本人から聞いたからな。伴魂は伴魂で付き合いがあるんだよ』


「そうなの? 

 ――あ。だからしょっちゅうムダンガイハクしてるんだ」


『お前……意味わかって言ってんのか?』


「え? 

 夜帰って来なくって朝になって戻ってくるの、そう言うんだって聞いたよ?」


『間違いじゃないが……微妙に意味が違ってるんだよな……』


「じゃあ、こっちがあってる? ホウトウモノ」


『どっちもどっちだ。

 違うし』


 憮然とする白い伴魂。


 機嫌を損ねるのはよくあるので、フィーナは放置した。


「でもすごいね。

 転移? っていうの? 

 だからこうして来れたんだ」


「すごいすごい」とフィーナは目を輝かせるが、カイル本人は、困惑しているようで、浮かない表情をしている。


「自分でも、何が何だかわからないから、実感がない。

 ――フィーナが日ごろ「目立ちたくない」と言っていたこと、今なら何となくだがわかる。

 自分でもよくわかっていないことで周囲が騒ぐと、どうしていいかわからない。

 転移の件は、他に話さないでくれないか?」


「いいけど……転移する前は側には誰もいなかったの? 

 側に居たんなら、私が黙ってても話、広がるんじゃない?」


 フィーナの懸念は、カイルも想定していた。


 完全には無理だろうが、緘口令かんこうれいを敷くつもりではある。


 ……いずれは多数の者に知られることとなるだろうが。


『だから考えなしに能力使うなって言ったんだよ』


 ぎろりと厳しい眼差しで、白い伴魂はカイルの伴魂に目を向けた。


「ピィ~~~~…………」


 その点は反省しているのだろう。カイルの伴魂は肩をすぼめて、しゅん、と頭を垂れていた。





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