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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第三章 アールストーン校外学習
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39.校外学習二日目【襲撃者の狙い】


「結局――目的は何だったんだ?」


 オリビアの元、駐屯地へ向かいながら、カイルが問いかける。


 フィーナも気になっていたのだが、ニックがカイルに対して剣を向けた状況を思い出すと、口にできなかった。


『俺を強奪しようと見せかけて、王子を狙ってたっぽいな』


 さらりと告げる自身の伴魂に、フィーナはハラハラした。


 自分が標的となっていると知らされるのは、気持ちのいいものではない。


 フィーナは気を使って口にしないようにしていたのに、白い伴魂はぺろりと話してしまう。


『最近、きな臭い話もチラホラ出てたからな。

 ――だろ?』


「なぜ――……。

 ……いや、聞くだけ無粋か」


 カイルは軽く目を見張りつつ、途中、諦めたように吐息をついた。


「ごくわずかだ。

 噂の域を出ないと思っていたんだが」


『その噂が当人の耳に届くって時点でアウトだろ』


「『アウト』?」


『ダメだってこと』


「……そうだな」


「――ちょっと――」


 カイルと白い伴魂の話の途中、フィーナが声をひそめて自身の伴魂に話しかけた。


「もうちょっと言葉づかい、どうにかできない?

 カイル、王子なんだよ?」


『お前だって普通に話してるだろ』


「私はセクルト貴院生だもん。

 カイルと同学年だし、カイルも認めてるし」


(――認めたか?)


 妙な間合いで口ごもるサリアには許した覚えはあるが、フィーナは苛立ちを噴火させてから、なし崩しだったように思う。


 結果として、嫌な思いもなかったし、気が楽だったので放置しているが。


『俺だって人間じゃねーもん。

 人間の礼儀作法なんて関係ねーし』


「………………。

 …………あれ?」


 言われればそうだ。


 伴魂に人間の王族への礼儀作法を求めるなど、聞いたことはない。


 フィーナは伴魂を抱えて歩いている。


 時折、ニックに受けた打撃箇所が痛むらしく、小さな声を上げて顔をしかめていた。


 白い伴魂が、フィーナに負担をかけないようにと自分で歩くことにする。


 腰をおろして休んでいたフィーナの様子を伺った後、カイルは口を開いた。


「もう、あんな真似はするな」


「あんな真似……?」


 痛みはあるが、しばらくじっとしていると収まってくる。


 そうして休み休み歩いていた時に、カイルが告げた。


 フィーナは痛みで顔をしかめつつ首を傾げた。


「王族だからと庇わなくていい」


 言いつつ、カイルはその時の情景を思い出して、口を固く引き結んだ。


 振り降ろされるニックの剣、その軌道上に自分を庇って躍り出たフィーナ。


 崩れ落ちる姿――。


 今、思い出しても、すっと足元が冷える恐ろしさを感じる。


 フィーナはカイルの言葉に眉を寄せていた。


 何か言おうかと考えていたが、結局、上手い言葉が出て来ない。


 結果――。


「――カイル……」


 呼ばれたカイルが顔を寄せたところを、彼の両頬を、両手でつまんだのだった。





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