第9話 ヒロイン登場?!
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「申し遅れました。わたくし姓は銭形、名が治郎吉と申しました。お気軽にジロキチとお呼びください。」
ジロキチは如才なく自己紹介する。
「そちらが名乗られたからには、こちらも名乗らなければなりませんね。わらわはキュロスの娘、シャル・カリ・シャッリと申す。」
(どれが姓で、どれが名前か分からねえ。それとも外国みてぇに氏族名とか有ったりするのか?)
ジロキチは内心の葛藤を出さず、愛想良く頷く。
「シャル・カリ・シャッリ様ですね。お会い出来て光栄です」
そう彼が答えると、なぜかシャル・カリ・シャッリは無表情だ。
「クックック……この名を聞いて恐れぬとはなな……………。」
「豪胆なのか?無知なのか?まさか本当に異世界より参ったか?」
突然、彼女の口調が変わる。ジロキチは困惑しながらも、なぜ恐れないといけないのか丁重に聞いてみた。
「ハッハッハ…………。千年前の【血の戦争】で暴れに暴れた、妾を知らぬ人族がおるとはな!我が名を聞けば人族共は震え上がるぞ!あの【恐怖と悪夢】の代名詞シャル・カリ・シャッリだとな。しかも我が父キュロス王の名にも反応せん。不可解な男よ。」
「今でも人族共は、我ら【血の一族】を恐れ、夜の闇に怯えおるというのに。」
(血だと?ファンタジーで血に関連する人型の生物なら、答えは1つしかない。)
「あの、もしやシャル様は吸血鬼なのですか?」
恐る恐るジロキチがそう聞くと、シャルは怒るどころか大笑いした。
「知れたこと!わらわは吸血鬼王キュロスが娘、真祖直系の第1王女ぞ」
(何だか物騒な単語ばかりだが、あえて無視だ。それよりも王女とはな。ラッキーだぜ、ここで何とか取り入れば…………。)
彼女の機嫌をとる為に軽く頭を下げて詫びる。
「何分、吸血鬼の方と会うのは初めてなので、どう反応したらいいのか分かりませんでした。」
「ほほう、そなたの国には、吸血鬼はおらなんだか?」
「私の国にはいませんでしたが、他国には存在したそうです。ただし、昔の事なので本当にいらっしゃたのか不明ですが、私が知っている有名な方ですと、串刺し公と呼ばれたヴラド・ドラキュラという方を存じております」
ヴラドと聞くと彼女は心底驚いた。先ほどまでの幾分、芝居じみた様子はなりを潜め、彼女本来の性格が見えてきた。
(しかしこの人、ほんとによく驚く人だ。間違いなく喜怒哀楽がはっきりするタイプだ。迂闊な事は言えねぇな。)
「よもや、叔父上の名を、そなたから聞くとは思わなんだ」
「叔父上は魔法の天才でな。人間共との戦でも大活躍したのだが、惜しいことに秘術の実験に失敗してな。それが原因で行方不明になったと聞いたが、まさかジロキチの世界へ転移していたとはな。」
(待てよ。ということは、地球側に転移技術が渡ったのは、ヴラド公が持ち込んだからか?)
ジロキチはその可能性について彼女に尋ねる。
「うむ、確かに可能性はあるな」