第41話 愚者は経験に学ぶ
39話の重複を修正致しました。
指摘してくれたひろぽんさんありがとう。
「よお、メルとパコル!久しぶり!元気にしてたか?」
片腕を上げて挨拶すると、メルがニッコリと微笑んだが、パルは何処と無くイヤそうだ。思春期だから仕方ない。俺もあれぐらいの時は純粋だった。
「おい!メルとパコルってなんだよ。俺の名前はパルだ!パル!」
パルが青筋立てながら訂正する。ちょっとからかった位でそこまで怒るとは、度量の狭いヤツだ。大人になっても立派になれないぞ。
「ごめ~ん。間違えた。うっかりミスとか言うやつだ気にするな。ところで、木材の繊維で作られた紙って知ってるか?」
「何だよ、それ紙じゃないのか?」
さも当然そうにパルが言う。これだから鈍いヤツは駄目だ。知的な会話が楽しめない。発想が貧困過ぎて泣けてくる。
「パルプだよ。バーカ!」
*
真っ赤になって怒るパルを宥めながら、お世話になったお礼に、BBQのお誘いをしてみるが、反応が乏しい。まさか異世界にBBQが存在しないのか?そんなことはないだろう。野外で調理する形態なんて珍しくもない。何か事情があるのだろうか?
「メル、何か気にいらない点でもあったかい?」
メルの様子がおかしい。何かを躊躇っている。怒り心頭だったパルの様子もおかしい。何か言おうとするが、それを言葉に出来ず気持ちが揺れている。言いづらいことがあるのか?
「無理にとは言わないけど、差し支えなければ、2人の事情を教えてくれないか?」
そう優しく聞いてみる。無理矢理聞き出すなんて真似はしない。他人の心に土足で踏み込むような行為は厳禁だ。
「実は……私たち………」
「待てよメル。俺が言うから。」
メルの発言を遮り、珍しくパルが真剣な顔をする。なんだこの真面目な空気は?軽い気持ちでBBQのお誘いをしただけなのに。
「俺達は孤児だ。街の孤児院で生まれ育った。親も兄弟もいない孤児だよ。それでもジロキチは招待してくれるのか?」
孤児だから、BBQに誘っていけない法律でも存在するのか?真剣に悩んだ末の告白だろうが、いまいち理解出来ない。分からん。慎重に尋ねてみるか?
「あー、その、よく分からないのだが、孤児を誘うと問題なのか?」
困惑しながら、そう質問するとパル達も、こちらとの噛み合いが上手くいっていない事が、ハッキリと伝わったようだ。
「そういや、ジロキチはウルクに来たばかりだったな…………なら知らないか。ウルクじゃあ市民と孤児は“区別”されるんだ……。」
「町の人間達からすれば、俺達は泥棒か盗人みたいなモンなのさ。だから”区別”され白眼視しやがる。」
敵がい心を目に宿しながら、パルは吐き捨てるように言う。暗くて重い雰囲気を纏うパルは、15歳とは思えない。相応の悔しい想いをして来たのだろう。気持ちは分かる。俺も異世界に飛ばされて、日本との縁が全て消滅したから。
(でも、この空気で「ジロキチ29才。迷子です。」とも言えないよな………。)
「あー事情はよく解った。俺も親兄弟とは完全に離ればなれになっていて、2度と会えない可能性が高い。だから孤児とかそんなの気にしない。」
怒られかも知れないが、孤児ウンヌンは正直な所どうでもいい。俺にとって重要なのは、助けて貰ったからお返しする、ただそれだけだ。借りを返し、筋を通す。それが俺のルール。それ以外の何物でもない。
「おう、パルの分際で深刻そうな顔するな。俺は孤児とか気にしない。もし良ければ孤児院の皆さんも招待するよ。みんなで肉を焼こうぜ!」
そう言うとメルがホッと一息ついた。どうやら危険は回避出来たらしい。一安心だ。俺の数少ない冒険者仲間だ。これからも仲良くしていきたい。
「でも、孤児院の子供は30人居てるぜ。ジロキチ金持ってんのかよ?」
パルが軽い調子で、サラッと俺の懐具合を心配する。やっぱりコイツはアホだ。メルにも肘打ちされている。お前は俺のプライドを傷付けるのが趣味なのか?大きなお世話にも程がある。大人を舐めると痛い目をみると、何時になったら理解するのだろうか?
やはりパルには制裁が必要だ。準備するのはBBQだけじゃないと、固く決心するのであった。
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