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転勤先は魔法の国  作者: NTかわち
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第3話 箱の中身をチェック

誤字・脱字・ご感想お待ちしています

 梱包されていた物を一つ一つ取り出しながら、ジロキチはさらに混乱した。


 まず目についたのは、何かの革で出来た頑丈そうなブーツだ。履いてみると、ゴツい見た目とは、裏腹にしっかりとしたクッションで意外に履き心地が良い。


 次にヒラヒラした生地で作られた布を発見する。フード付のポンチョであった。

 裏地はウールで、外側が撥水性が高そうな皮革素材。

 ポンチョはもともとアンデス山脈に住む、先住民の民族衣装が原型だ。

 高地の厳しい気候に適応するため、撥水性と保温性を高めている。


 その利点に目をつけたのが軍隊である。

 アンデスで発明されたポンチョは、過酷な戦地の環境にもよく適応した。


(よくハリウッドのベトナム戦争映画でポンチョを見掛けるが、アメリカ軍が採用したのは1850年代。)

(なんと南北戦争からだ。)


 それ以降、改良を重ねたポンチョは軍隊から民間へ広まった。

 昔よりも軽く丈夫になりコンパクトにもなった。


 このポンチョもアウトドア向けに作られた逸品。

 そこそこ値段が張りそうな品である。


(雨具として使われることが多いが、野外の寝具としても使えるんだよ。)

(外の環境は分からんが、あって困るもんでもねぇし、有り難く頂いておこう。)


 ポンチョを脇に置き、さらに箱を確認すると水筒と非常用の乾パン2袋を見つけた。

 なぜか水筒もポンチョ同様に革製だ。


 理由はよく分からないが、頂ける物は頂くのがジロキチの考えだ。

 対価は既に払っているし、自分宛てに届いた荷物だ。

 ならこれは自分の物。そう考えても問題ないたろう。


「そもそもだ。所有権を主張したいなら、まずココに来い。そして俺に状況を説明しろや。」

「突然過ぎて、コッチは理解の範疇を超えてるんだよ!」



 状況すら分からない理不尽さに、文句の1つも言ってやりたい気分だ。

 だが、ここで憤っても状況は好転しない。

 状況は刻一刻と変化する。現実を直視して対応するしかない。


 不気味なほど静まり返った、どことも知れない石造りの部屋。

 そんな場所で怒り狂うほどヒマでは無い。

 とにかく、状況の確認。それ以外に優先すべきことなど存在しない。



(そうだ。自分の置かれた状況をしっかり確認する。これが最優先の行動だ。)

(荷物の確認を済ませ、周りの様子を伺う。そっからキレても遅くねぇよ………………。)


 気を取り直したジロキチは、再度、荷物の検分に戻った。



「おー!これは、メタルマッチじゃねーか!」


 ここ数年で急速に普及してきたアウトドア・キャンプ用品だ。

 本体そのものが、マグネシウムの様な燃焼性の高い金属で作られ、キャンプの火起こしに使用する。


 使い方は簡単。

 最初に、火種にする松脂や木クズの上にマグネシウムを少量削り落とす。

 次に、本体とナイフをこすり合わせて火花を飛ばし、飛ばした火花で火種になる松脂や木クズを着火させる。

 これだけだ。


 ライターやマッチと比べると、確実性に欠ける様に思われるがちだが、決してそんな事はない。

 火花を飛ばす点のみコツがいるが、着火作業に不自由はない。


 むしろ、ライターとマッチにはない圧倒的な利点がある。

 使用回数である。


 メタルマッチの使用回数は商品によって違うが、おおむね数千回。物によっては1万回を唄っている。

 精々、数百回のライターや数十程度のマッチとは別次元なのだ。


 そして水にも強い。

 水没しても水分を布で拭けば問題なしの親切設計。

 言うなれば〈現代版火打ち石〉。


 これがあれば、原始人の様に棒をクルクル回さなくても火起こしに困らない。


(イイね。何だが分からんが楽しくなってきた。)




 しかし、楽しい気分もそこまでだった。


 箱の中をさらに探すとナイフを発見した。

 肉厚が有り刃渡りも約30㎝ほどあるサバイバルナイフだ。

 凄味を感じる鈍い光がギラリと見る者を威圧する。


 素人が見ても殺傷能力は十分あると感じるほどだ。


(マジかよ……………、これ軍用だろ。こんなの梱包して送ったら一発アウトだぜ。)

(おいおい、会社もヤベェけど、受けた配達屋もヤベェぞ。)


 配達出来ないと明確に定義された凶器だ。そもそも銃刀法違反で所持すら出来ないだろう。

 こんなナイフを送り付けた会社の真意が読めないが、自分に何をさせようというのか。

 それが分からないだけに不気味だった。


(俺の会社がガチンコの凶器を送ってきた件………………。意味不明だぜ。)

(普通に怖ぇわ。マジで一体何をさせたいんだ?)


 残りのアイテムが気になり更に箱を調べると、会社のロゴが入った薄っぺらい封筒を発見した。

 ジロキチは直感的に嫌なものを感じ、そっと箱に戻したい気分だったが、状況が状況だけに読まずにはいられない。


 猛烈に悪い予感を感じながら、ジロキチは封筒を開封するのであった。

実際のところ、ナイフの刃渡りが30センチなら所持・携帯どっちも銃刀法違反です。あと宅配便も勿論ダメ。

この作品はフィクションです。

現実には法律違反になります。真似しないで下さい。


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