表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転勤先は魔法の国  作者: NTかわち
29/188

第29話 ついに人間と出会う

 出発してはや3日。



 未だジロキチは人間とは出会えていなかった。


 何度目かのモンスターの襲来を蹴散らしながら進む。走らず歩いているので、エンカウントする機会が増えた。昨日は巨大イノシシに襲われた。



 藪がガサガサしたと思った、その直後、いきなり突進してきたのだ。だが、彼の問題ではなく難なく回避し、そのままやり過ごそうと思い、先に進んだ。しかし、その猪は何を思ったか、何度も突進を繰り返すのだ。仕方がないので、素手で腹パンし昏倒させてやった。



 なぜイノシシは異世界でも狂暴なのか? これが分からない。都市部の人は野生イノシシを知らないと思うが、イノシシの狂暴性は日本の野生動物の中でも、ヒグマの次ぐらいに危険だ。



 しかも以外に大きい。日本で捕獲されたイノシシの最大記録は240kgのオスである。ちなみに月の輪熊が120kgだ。なんと月の輪熊の2倍の重さだ。それが時速40kmで走る。この体重の突進でキバが刺さると、成人であっても足の動脈を余裕で貫通する。



 絶対に近寄ってはいけない。



 ジロキチが腹パンした個体は500kg以上あるだろう。一般人なら即死コースだ。あのイノシシはこちらが人間だと判断していた。それでも執拗に突進を繰り返したことから、ヒトとの戦闘経験があり、かつ「負けた」のではなく「勝った」経験があるからだろう。



(普通の動物は、痛い目に会うと学習するからね。あのイノシシに敗れた人達はどうなったのか?あんまり知りたくないね。)



 しかし、異世界は何でも巨大だ。魔力が影響している可能性もある。ジロキチは動物が大きくなっても何とも思わないが、ムカデ・ゲジゲジのような足が多い、グロテスク系は本当に勘弁して欲しいと切実に思っていた。




 忍よる影、無数にうごめく足、飛び散る体液。




(冒険者になって、討伐金が出たとしても絶対にイヤだ。勝つとか負けるとかの問題じゃなく、精神的に太刀打ち出来そうにない。ダメだ。考えただけでも鳥肌が立つ。)



(こういう時は、余計な事を考えず走ろう。走って邪念を振り払うべきだ。)



 ジロキチそう考えて無心に走った。







 数時間ほど森の中を跳ねるように走っていると、前方から怒号と剣戟の音が聞こえる。



(おお、ついに人間と遭遇か?)



 新作戦も思案済みだ。行くしかない。全速力で駆ける。もはや走るというよりも、数mを飛ぶといった状態だ。



(捉えた!)



 木々が無くひらけた広場で、豚人間が5匹と人間3人が戦っていた。人間が3人倒れている。劣勢だ。あの豚人間が竿師で有名なオークと呼ばれるモンスターだろう。一丁前に槍と棍棒で武装している。



 ジロキチが不埒な考えをしている間も激闘は続いていた。彼は加勢するつもりだ。当然、人関側だ。オークとコミュニケーションを取れるとは思えない。瞬間的に距離を詰め、彼らの前に飛び出した。



 ドゴオオォォォォォォン!



 ゴロゴロゴロ。




(やってしまった!勢いがつきすぎて着地に失敗した。くっそ、大恥かいちまった。しかし、間に合ったぜ。よし作戦開始だ!)





 名付けて【8代将軍オラつき作戦】だ。




 江戸に蔓延はびこる悪を裁くため、あえて身分を隠し、貧しい旗本として市中を見回る上様。



 超有能な上様の索敵能力は驚異的だ。



 “かならず”悪人に絡まれた町娘を見つけ出し、優れた剣の腕前で助ける。そして唐突に自己紹介を始めるのだ!!






「オレは貧乏旗本の三男坊、得田新之助」



 これだ!これしかない!







(この無理やり感がたまらんね。)



 オラつくオークを締め上げ、感謝されつつ、勝手に自己紹介。まさに王道である。




 よーし、まずオークを血祭りだ!


 クケケケケと奇声を上げながら、ジロキチはオークに突擊する。



「オラッ、作戦のために死ねや!!」



 振り上げた金棒が命中する。1匹目は衝撃で腹部が消しとんだ。2匹目が慌てながらジロキチを槍で突く、それを掻い潜りながら接近し、下から上へアッパー気味に金棒を振い抜いた。確認するまでもないミンチだ。



 3匹目は棍棒を上段に大きく構え、雄叫びを上げながら接近してきた。ブンッと棍棒が振られるが、素手で掴んで動きを止め頭突きで黙らせた。



 これで3匹は始末した。残りは2匹。問題ない。だが、仲間の惨殺を目撃したオークは戦意喪失し逃走した。



(いまだ!ここしかない!このタイミングだ。)



「オレは 貧しい下僕の ジロキチ。」



 テンプレ通りのセリフを言おうと、生存者に向かって振り向くと、そこには誰一人居なかった。残されたのは倒れ込んでいる2名の冒険者しか居なかった。



「まさか、なすり付け?」



 擦り付けとは、他者へ手に負えないモンスターを押し付ける行為だ。もちろんマナー違反。礼すら言わずに逃げるとは。呆れて物も言えなかった。



(倒れた2人もそのまま放置しやがった。仲間を見捨てるとは見下げ果てた奴らだ。)



 仕方がない。怪我を負い残された2名の様子を診るため、ジロキチは彼らに近づくのであった。

誤字・脱字・ご感想お待ちしています

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ