第22話 いざ行かん!冒険の世界へ
久々に地上部まで来た。
熱心に分析していたダミーの噴水や崩れ落ちた遺跡など、転移してきた頃の姿そのままだ。
シャル様とエラさんが見送りに来てくれた。
「生ものと水には気をつけるんですよ~。」
「分かってますって。」
子供みたいな扱いだ。エラさんから見ると、俺は歳の離れた出来の悪い弟みたいな存在らしい。寿命という概念が無い吸血鬼達からすれば、今年で29歳の俺なんて鼻垂れ小僧もいいとこだろう。
「ジロキチよ。これを持っていけ」
シャル様に指輪を手渡された。素材が銀。図案は月下のコウモリとなっている。
「これは一体?」
「それはわらわの印章指輪じゃ。」
「ジロキチが、我が一門の者としての身の証になる。簡単に言うと、吸血鬼間の身分証じゃ」
(名刺みたいなものか?)
「それだけではなく、精神干渉をレジストする効果付きじゃ。」
「魅力、混乱、恐怖、洗脳など、精神関連の魔法全て効かぬ。」
ありがたく頂戴し嵌めてみる。磨きあげられた表面は美しく、月下のコウモリが精緻に彫られていた。側面にはこちらの文字で下僕ジロキチと刻まれていた。指輪の鑑定なんて出来ないが、給料3ヶ月分では到底買えないだろう。
「お心遣い。誠にありがとございます。」
「よい。気にするな。こちらにも事情があってな。他家の者が、知らぬうちに、わらわの下僕に手を出すと、お互い不幸になるからのぉ。それを防ぐ為じゃ。」
下僕とはいえ主人の庇護下みたいな扱いなのか?
どちらにしても、身の安全になるのなら大歓迎だ。
これで準備万端だ。いまから周囲200kmの大森林『黒い森』を突破する。
「それではジロキチ行って参ります。」
「うむ、帰還への手掛かりは焦らず探せ。それよりも、今後、身の振り方どうするべきか考えておけ。」
「ジロキチくんは、弱いんだから修行しながら、旅をした方がいいですよ~」
そうだ。自分がどう生きるのか?それを決める旅でもある。帰還出来ないなら、こちらで生活基盤を築く必要がある。それも追々考えないとな。
俺は大きく手を振り、二人に背を向け歩きだした。 御二人へのご恩は一生忘れないだろう。いつか必ず返さないとな。
そう思いなから俺は旅立った。
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