第16 話 剣よさらば
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いまジロキチはどんな武器を持とうか悩んでいる。
エラさんから近接訓練するために、武器の選択を考えるように指示されたのだ。しかし、どの武器を使うのか、その判断については一任された。素人のジロキチより、教育係のエラさんが選んだ方が良いと思うが、考えながら選択するのも勉強です。と言われてしまった。
(その足で武器庫まで行ったんだが…………………。)
剣・大剣・斧・戦鎚・短剣・弓・槍・棍棒など、選択肢が多すぎて困っている。
何気に身長が190cmとかなり大きい彼は、毎日の訓練のためか、そこそこ筋肉質になった。だから、大剣のような重量のある武器でも、大抵扱えると思っていた。
無難に剣か?リーチ重視で槍も良いのでは?みたいな事を考えながら、朝からずっと武器庫で堂々巡りしているのだ。
「これジロキチ。何をしておる?」
そこに武器庫の前を通りかかったシャル様が声を掛けてきた。
「いえ、実は訓練用の武器を選びなさいと、エラさんから指示されたんですが、今まで、武器を触る機会も無かったので、どれにするか迷っておりました。」
「ふむ。武器とな?」
「はい。どの武器も一長一短有りますので、選ぶに選べないのです。」
(そうだ、シャル様の使う武器を参考にさせて頂こう。)
「差し支えなければ、教えて頂きたいのですがシャル様の使用される武器は、一体どんなものでしょうか?」
「わらわは、コレじゃ。」
そういうと彼女は両腕を前に突き出した。
「………?まさか拳ですか?」
「うむ、強化魔法で殴った方が早いからの。それに、わらわの力に耐えきれず、大抵の武器は壊れてしまうのでな。」
(さすがシャル様、何でもアリだな。どうしよう極端過ぎて、全く参考にならない。困ったな。)
このまま悩んでいても答えが出そうにない。ならば逆にどんな武器が良いか聞いてみる。
「もしシャル様が、初心者に武器を勧めるなら、どんな武器を勧めますか?」
「そうじゃな、剣と弓以外なら、何でもいいじゃろ。」
(うん?弓は何となく分かるが、剣がダメとは意外だ。)
「不思議そうな顔をしておるな。」
「はい。剣がダメな理由が分かりません」
「剣はな、当てたあとに、押すか引くかしないと、斬れないんじゃ。」
(どういう意味だ?)
「ジロキチよ。分からんか?仮にお前が包丁で野菜を切るとする。野菜に刃を当てた後に、どのような動作をする?」
「え、包丁を手前に引きます。」
「そうじゃ、それが答えじゃ、剣に限らず刃物は押すか引くかせんと斬れんのじゃ。」
(おお、なるほど分かりやすい。さすがシャル様だ。)
「それにのぅ、致命傷を与えるのが難しいのも剣じゃ」
(まだあるのかよ。)
「剣の切っ先だけで、斬ったところで致命傷にはならん。大きく踏み込んで刃の部分で、相手を斬る必要があるのじゃ。それがどういう事か分かるか?」
「武装している相手に、踏み込めるだけの、技量と度胸が必要ですね。」
「その通りじゃ。素人は剣の動きにしか目が向いとらんが、重要なのは足捌きや歩法じゃ」
(さすがシャル様だ。やはり強者の意見は違う。だが、剣が駄目となると、ますます選択に困ったな。)
「よく分かりました。剣は難しいですね。」




