第11話 覚悟のススメ
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パチパチと焚き火の音だけがする。
外は明かりなどない真っ黒な暗闇で何も見えない。ジロキチはヨロヨロと壁にもたれ掛かる様に背を当て、何もせず、だだ燃え盛る炎を眺めながめていた。
「………………………」
言葉もない。
文字通り言葉が出てこない。彼は調子に乗っていた、少し前の自分を蹴り飛ばしてやりたい気分であった。
(帰還は、ほぼ絶望的だ…………。)
ジロキチに3つの問題を解決する力はない。
知識もない、力もない、そして覚悟もない。なぜ、手掛かりを掴んだと思った瞬間に、奈落の底へ叩き込むような真似をするのか?運命の残酷さを恨まずにはいられなかった。
(神様や仏様にお祈りしたいが、どうやら異世界は管轄外のようだぜ。)
彼の家は先祖代々、氏子や檀家として、神仏を拝み奉ってきた。しかし、この酷い仕打ちはいくら何でも無いだろと、小言の1つや2つは言いたい気分だった。
(少しぐらい御加護とか御利益とかあっても、バチは当たらないと思いませんか?ねぇ神様仏様。)
(ダメだ。逆境すぎる事態に、心が弱って思考が他力本願になっている。日本で働いていた時から、社畜に甘えは無いと、ウンザリするほど理解してきただろう。)
頼れるのは自分だけ。彼はそう思ってノルマの地獄を潜り抜け、厳しい競争社会で生きてきた。この程度で落ち込んではいられない。
例え日本に帰れないとしても、異世界で生活の基盤を作り上げ、これからの人生を生きねばならない。助けてくれる親兄弟や友達は、誰1人こちらには存在しないし、社会保障なんて甘えたものも多分無いだろう。
生きる為には就職してカネを稼ぐ必要がある。それは異世界でも日本でも変わりはない。ジロキチは生きねばと改めて思った。
(こんなところで女々しく立ち止まれるか?社畜なら社畜らしく生き抜いて死ね!それが社畜として、苦労を積み重ねてきた俺の生き様だ。なら、こちらでもそれを貫き通すだけだ。)
異世界人とやらに、ジャパニーズ社畜の崇高な“戦いの作法”を見せつけ、泥の中に咲く一輪の蓮花のように美しく咲いてみせる。これは生死の問題ではない。生き方の問題である。ジロキチは生きる覚悟を決め、睨むように吸血の姫と向かい合う。
*
「どうやら決心が着いたようじゃな」
彼女はボンヤリと焚き火のそばに座っていた。
ジロキチはスッと立ち上がり、彼女に近づいた。
そして、極限にまで洗練された、非の打ち所のない動作で“土下座”した。
「シャル・カリ・シャッリ様!どうか、わたくしを雇って下さい!!!」
こうして彼の長い異世界1日目はついに終わった。
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