2-21
街の人々はどこかピリピリしていた
人がいなくなる事件が相次ぐ中、次はこの街かもしれないという恐怖があるのだろう
街に入ったとたんに複数人の武装した男たちが向かってきた
「君たちは… 他の街からの避難民か?」
ルーナの力によってリゼラス達にも翻訳されて聞こえる
「は、はい、山向こうの町から来ました」
「なに!? 重森町からか! よかった。 あそこにまだ人がいたのか」
「一体何が起きているんだ? なぜ人が消える?」
「君はあの町にいたのに見ていないのか? 我々も原因を調査中なのだが調査団が行方不明になってしまって現在状況が全くつかめていないんだ」
「そうか、仕方ない。 我々もここで受け入れてもらえるだろうか?」
「もちろんだ。 ところでみたところ君たちは海外の人かな? その子たちはあなたの家族か?」
「あ、あぁ、仕事の関係であの町にいた。 あと、この子たちは私の妹たちだ」
子供というにはリゼラスの見た目は若すぎるため妹ということにしておいた
「なるほど、かわいい妹さんたちだ。 ではこちらへ、あの臨時仮設住宅を使ってくれ。 手続きもそこで出来るから」
「ありがとう。 助かるよ」
リゼラスについてルーナとパリケルは仮設住宅へと向かった
「やぁ、新しい入居者だね。 僕はここの管理を任されている真藤秀雄だ」
真藤と名乗った優しそうな表情のメガネをかけた男が挨拶をし、握手を求めてきた
リゼラスはその握手に応じて挨拶をし返す
「私はリゼラス。 海外から仕事の都合でこちらに来ていたら巻き込まれた」
「それは災難だったね。 今現在海外へ渡る手段は皆無と言っていい。 いつ戻れるかわからないけど、戻れるめどが立つまではここで暮らしてくれて構わないよ」
「ありがたく使わせてもらうよ」
仮設住宅は意外と快適で、隣に住む人たちともすぐ打ち解けた
三人とも見目麗しいので結構人気者になってしまった
数日間過ごしてこの世界の情報を整理した
この国の名前はニチモト国、小さな島国で、技術の発展した国だ
現在世界中で街単位での人の失踪事件が相次いでいる
新たな魔物の仕業や、魔王が復活したなどまことしやかにささやかれてはいるが、原因は未だどの国もつかめていないそうだ
ただ、失踪事件はこの国を含んだアディア圏という地域で多発しており、原因の大本はこのアディア圏にあるかもしれないということ
隣国とも情報を共有し、原因の究明をしているところらしい
「大本は恐らくこの国にある」
リゼラスは失踪事件の起きた場所を地図にチェックしてそう言った
最初に起こったのが世界中の首都
首都から一切の人が消えたのだ
そこから円状に事件が発生している
これは一応どこの国も把握していることだが、実は最も早く起こったのがこの国の首都である東都だ
あまりにも些細な時間のずれなので今まで気にもされていなかったが、東都は世界中の首都で起こった失踪事件よりほんの一秒早かった
ほんの一秒だが、この差に何かあるとリゼラスは睨んでいる
「では、東都に行ってみましょう。 何か見つかるかも」
「うむ、解析は俺様に任せろぜな」
ここから東都まではかなり遠く、普通はリニアを使って移動する
ここの技術は現在の日本より進んでいるらしく、当然のようにリニアは走っており、この明京という県からはおよそ一時間ほどで到着する
だが、リニアは動いていない
現在東都は人の立ち入りが禁止されているためだ
歩いて行くしかなかった
「大丈夫です。 飛んでいけばいいんですよ」
ルーナがいきなりそんなことを言った
「飛ぶ?」
「はい! 私、二人くらいなら飛んで運べますから」
ルーナには翼がある
空を飛ぶのもお手の物だが、ここには物理法則というものが存在しているので本来は二人も抱えて飛ぶことなどできない
しかしそこは力の神の力を持つ彼女だ
物理法則すら無視することができる
そんなものでルーナの力を縛ることなどできない
人目に付かないよう細心の注意を払いながらルーナは翼を広げた
そして、二人を連れて東都へと飛ぶ
とんでとんでとんでとんでとんでとんでとんでとんで
まわってまわってまわっておち~る~♪