2-20
数日をかけて大きな街を人間を探して駆け回ったが、隠れている人もおらず、結局誰も見つからないまま時間だけが過ぎていった
そんな中、ルーナがテレビの付いている家を見つけた
かぎはかかっておらず、また、住人もやはりいないが、明らかに人の声がテレビから流れていた
「一連の連続失踪事件は調査隊や捜索隊までも行方不明となり、いったん捜査は打ち切られることとなりました。 これを受け、政府は…」
「連続失踪事件? もしかして、この街に人がいないのも? でもよかった。人はいるみたい」
ルーナは二人と合流すると、今見たテレビの内容を伝えた
「ということは、人がいる? ならばそこに行ってみよう」
「そうだぜな。 早く知識を得…。 この世界の人が消える謎を解こうぜな」
パリケルは早く知識欲を満たしたいようだが、それはとりあえずここでの異変を解決してからでもいいだろう
それに、転移用の魔力がここでは溜まりにくいようだ
数ヵ月はかかることを考慮しなければならない
「人のいるところは明京スタジオ、明京という場所がどこかにあるはずです」
「ふむ、私たちはこの世界の文字が一切読めなかった。 案内はルーナに任せるよ」
「はい」
この世界の文字はどうやら日本語と同じようで、テレビに映されていたテロップも日本語そのものだった
しかしながらたとえ読めなくともルーナは力によって翻訳できるので特に問題はない
早速その明京目指して進むことにした
ルーナは拝借した地図を調べて位置を確認する
現在地は小坂という地名、明京はどうやら隣の県のようだ
「ここから近いみたいです。 この道をずっと真っ直ぐ行って、次についた街を過ぎてさらに南へ行けば着くようですね」
「じゃぁさっそく行ってみるぜな」
ここから直線距離で約50㎞
歩いて行くには少し時間がかかりそうだが、歩くのに慣れている三人だったのでそこは問題ない
だが、大きな問題が一つあった
それは、ルーナの翼や角や尻尾、さらには体に生えるふわふわの体毛をどうするかだ
明らかに目立つであろうその姿はコスプレで押し通すことができないほどだ
なんせ翼は滑らかにはためくし、尻尾はシュルシュルと動く
どう見ても人工物ではなく天然物、明らかに生えているとわかってしまうのだ
リゼラスがそれを私的すると
「そう言えばそうでした。 でも大丈夫です! 私、変化できるので」
変化と言っても顔はそのままで、人間と同じ姿になれるくらいだが、それで十分だった
早速変化する
どうやったのか、白いワンピースまで着ており、年相応の可愛いいで立ちとなった
ちなみにパリケルはロリータファッション、リゼラスはどこかスーツに似た衣装なのでこの世界でも問題なく溶け込むことができるだろう
そこから歩いて数時間後、ようやく次の街が見えてきた
そこもやはり人がいない
念のため三人で手分けして探すが、やはり人がいた痕跡のみで誰一人として見つからなかった
とりあえず食料を拝借して次の街を目指す
もちろんお金代わりにリゼラスが持っていた本物の金で出来た金貨を数枚置いてきた
この世界の価値でおそらく20万ほどにはなるだろう
そしてさらに3時間ほどたち、ようやく車が走っているのが見えた
どうやらこの辺りから人がいるらしい
ほっと安心しつつそのまま街へと入った
多くの人が歩いており、この世界にも人間がいると再確認できた
しかし、魔物のいる世界のためか、一般人でも帯刀していたり、銃のような武器を下げていたりと意外と物騒だ
それでも社会が成り立っているのは人類に共通の魔物という敵がいるからなのかもしれない