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2-18

「っく、なるほど分かったぞ。 貴様らは、最下層のゴミか」


 その声の主に一斉に視線が集まる

 シンガがそこに立っていた


「あら、あれで死ななかったの? あれ? でも、弾けたはずよね?」


 首を可愛らしくかしげるフィフィ

 大きな右手の人指し指をチョンと口元に当てる仕草は非常に少女らしい


「俺は神だぞ? 肉体の一つや二つどうとでもなる。 それよりもこれは予想外だった。 まさか最下層に住人が生まれるとはな。 大神様に報告せねばならなくなった」


 シンガはこの世界の女神を見据える


「おい女神ども、この世界の消滅は一旦保留だ。 まぁそこにいるパリケルをこの世界から消すというなら消滅自体をやめてやってもいい」


「パリケルを、ですか?」


「そうだ。 その者は俺たちの領域に触れすぎた。 もはや捨て置けぬ。 消せ」


 女神たちはおろおろしている

 上位の神に直接命ぜられたこと、普通なら彼女たちに拒否権はない

 

「「お断りします」」


 二人は声をそろえてそう言った

 パリケルは自分たちの世界の大切な住人だ

 いくら神の領域を犯すからと言ってそう簡単に割り切れるものではなかった


 シンガは二人の女神に近づく

 女神は身構えたが、彼は二人にしか聞こえない程度の小声で


「ならばルーナと共に旅に出せ。 実を言うと俺はあの者がどこまで神に近づけるのか見てみたい。 それがこの世界とあの者を救う唯一の条件だ」


 女神は驚いたが、シンガ以外の誰にも気づかれないようにうなずいた

 それにシンガも満足そうな笑みを浮かべて離れていく


「ヴァヌス、撤退だ」


「しかしまだ愚か者の始末が!」


「それよりもあの最下層の住人だ。 あれは我々を脅かしかねん。 それこそエイシャのことより優先すべき問題だ」


「く、確かにそうだな。 命拾いしたな愚か者よ。 貴様の命、次に会うときまで生きながらえさせてやろう」


 神兵を率いてシンガとヴァヌスは上位世界へと帰っていった


「なによ。 帰っちゃうの? つまらないわ」


「そうだねフィフィ、まぁ、この世界の住人とコミュニケーションをとってみようよ」


 一難去ってまた一難、二人の異常な存在は今度はこの世界の住人に興味を持ってしまった


「ねぇ、あなたたち、私たちはどう? 私たちを見てどう思う?」


 全員何が何やら分からない

 一体なにをいっているんだ? という表情で二人を見つめた


「もう、察しが悪いのね。 私たち、恋人に見える? 愛し合えてる?」


 イチャイチャと触れ合う二人は誰がどう見ても恋人だろう

 それこそ深く愛しあっているのがよく分かった


「は、はい、どう見ても恋人同士にしか見えません」


 恐る恐る桃が答えた


「まぁ! やっぱりそうなのね! メロ! 私たちってちゃんと恋人みたいよ!」


「うれしいよフィフィ、愛してるよ」


 少女二人が愛し合っている姿はどこか愛らしくも見えた


「じゃぁ皆さん、あの憎むべき神も去ったことだし、私たちは次の世界に行くとしよう」


 二人は丁寧にお辞儀をするとこの世界から一瞬のうちに消えた


「なんだったんだ? あれは…」


 ジェインがあっけにとられた様につぶやいた


 この世界の危機は脱した

 しかしいつあの消滅の神が気を変えて戻るとも限らない

 女神たちはパリケルに事情を告げた


「なるほどぜな。 いいぜな! 俺様もいろんな世界を回ってみたいと思ってたぜな!」


 パリケルは快く旅に出ることを受け入れた

 しかし、旅に出れば二度とこの地を踏めないかもしれない

 女神たちはそれを心配してくれていた


「ふむ、そりゃあ正直さみしいぜな。 トロンやアルに二度と会えないとなると、涙も出そうになるぜな」


 そう言ったパリケルの顔はなぜか笑っていた

 

「ふっふっふ、だがしかし! 俺様は天才ぜな! じゃーん!」


 懐から機械を取り出したパリケル


「これを見るぜな!」


 その手には小さな画面の付いたスマホのようなものが握られている


「これは?」


 桃の問いに自慢げに答える


「ふっふーん、これは次元通信装置だぜな! どこの次元だろうとこの世界と通信できるようにしておいたぜな」


「なるほど! その画面越しに顔を見せ合いながら通信、話ができるってことだね!」


「鋭いな桃、その通りぜな!」


 そう、パリケルが作り出していたのはテレビ電話のようなものだった


「これでいつでも話せるぜな」


 機械を何人かに渡し終えると、パリケルはルーナとリゼラスの元へ歩いて行く

 ルーナの力で三人で転移するためだ


「じゃぁ行ってくるぜな! また会おう!」


「皆さん、私もいつかこの世界にお礼をしに戻ってきます。 その時までお元気で!」


「アナサ、元魔人たち、私は君たちにひどいことを…いつか罪を償いに戻ってくる」


 三人はそれぞれに別れの挨拶を済ませると、ルーナの力によって転移していった


「行っちゃった」


 桃は少し寂しそうにつぶやく


「桃、あなたはどうします? 元の世界に戻りますか?」


「んーん、私は戻らない。 あの世界に私の居場所は、もうないから」


 寂しそうだがどこか吹っ切れた顔で桃は答えた

 これからはこの世界で生きていこう

 愛する人と共に

 そう決意した桃は元気よくアルに抱き着いた


いずれまた

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