集合と散在4
狭間の世界を漂いながら二人はひときわ力を放っている世界を見つけた
力に引き寄せられるようにその世界へと向かう
「なんだかとても懐かしいような、何だろう?」
「えぇ、私たちが生まれるよりはるかに昔の記憶、かしら?」
「やっぱりフィフィも懐かしいんだね?」
「メロ、行ってみましょう。 きっと楽しいわ」
「そうだね、行ってみよう」
二人は手をつなぎ、楽し気に狭間の世界を進んだ
力を放つその世界はオルファス、神々によって今まさに消滅させられようとしている世界だった
「見えてきたわ。 メロ、私すごく楽しみ」
「私もだよフィフィ、何が待ってるんだろうね?」
楽しそうな二人はとうとうオルファスに降り立った
それから力の出所をたどって歩き始める
初めは歩いていたが、時間がかかりすぎることに気が付きメロが翼を生やしてフィフィを抱えながら空を飛んだ
高速で移動したため数時間ほどで戦場へとたどり着いた
二人はその戦闘を見つめる
「あれは、何をしているの?」
「どうやら神がこの世界の住人に攻撃を仕掛けているようだね」
「まぁ可哀そう! ねぇメロ、助けてあげましょうよ」
「それはいい考えだよフィフィ。 それになんだか神って、なんだろう? 私はなぜ神に対してこんなにも怒りがわくんだろう?」
「私もよメロ、なんだかすごくイライラするわ!」
二人は憎しみのこもった自分の感情を全く抑えることはせず戦場の中心へと降り立った
それにより一時的に戦いは止まる
「フフフ、驚いてるわメロ」
「うん、それじゃぁやろうかフィフィ」
オルファスの住人たちはざわめき始めるが、神兵に感情はないためそのまま二人に襲い掛かった
「それ」
メロが手を向けて握りしめると、神兵はまとめて圧縮されてボールのようになった
「えいっ」
フィフィが手を広げると、さらに迫ってきている神兵たちがはじけ飛んだ
二人は楽しそうに神兵を壊していく
二人が降り立ち戦闘を開始してから数秒後、神兵を率いているシンガとヴァヌスはようやく二人の存在に気が付いた
「なんだあれは? オルファスの隠し玉か? いや、あれほどの力を持った存在がキュカの監視網に引っかからないはずがない。 あれは一体何なのだ!?」
驚き声をあげるシンガに二人が迫ってくる
「くっ、消えろ!」
力を解き放ち、二人に向けた
消滅の光はまともにメロにぶつかる
「あれ?」
何が起きたかわからないと言った表情でメロはジュゥと音を立てて消滅した
「メロ!!」
フィフィが手を伸ばしたが、その手を掴めることもなく目の前でメロが消えてしまった
「あぁあああ! メロ! メロ! そんなぁ!」
泣き始めるフィフィはその場にうずくまってしまった
「悲しい、悲しいわ! メロ! わたしとっても悲しいわ!」
泣き崩れているフィフィを見てシンガと戦っていたルーナや、この世界の勇者桃もどうしていいかわからずただただ見ていた
しかしシンガはまた消滅の光を溜めるとフィフィに向かって放った
「よくも…。 許さない」
フィフィは立ち上がり、その光を散らした
「俺の消滅の力を消し飛ばしただと!?」
ルーナならまだしも相手は得体のしれない存在
それでも自分よりはるかに格下だと思っていた
それが今簡単に力を消して見せたのだ
「メロを返して」
一瞬のうちに間合いを詰めると、シンガの腹部に手を当てて、弾け飛ばした
シンガは内部から破裂し、ボトボトとその肉片をぶちまける
「メロが! 私のメロを! あああああああああああああああああ!!」
狂ったように叫ぶフィフィ
その後ろから何かが立ち上がった
ぐじゅぐじゅと集合し始めるそれはゆっくりと人の形となり、フィフィを抱きしめた
皮のない筋肉のみのそれは口を開く
「ダイ、ジョ、ブダヨ、フィ、フィ」
やがて皮が張られていき、裸のメロがそこに現れた
「メロ! よかった、無事なのね!」
「そうだよフィフィ、私は集合体、死ぬことなんてないんだ」
二人はひしと抱き合って愛を確かめ合った
いつの間にかメロの服まで再生している
「メロに悪いことした奴は散らしちゃったわ」
「ありがとうフィフィ、私の愛しい子」
周囲はあっけに取られていた
神を一撃で屠るほどの存在に何もできずただただ呆けるしかなかった