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集合と散在3

 二人は新しい世界に降り立った

 

「次こそはきちんと挨拶しよう。 挨拶は物事の基本らしい」


「わかったわ。 でもまた棒で刺してきたら?」


「その時は今度は私がやるよ」


 二人は楽しげに笑いあう

 そこには全く悪意はなく、まさに無邪気だった

 二人の認識は、ただ単に自分たちを害したからやり返しただけというもの

 

 今度は歩くのではなく、自分たちの体を変形させて空を飛んでいくことにした

 集合体であるメロの背中から大きな翼が開く

 流れてきた情報と不要物で出来たいびつな翼をはためかせ、フィフィを抱えて空を飛んだ


「すごい、すごいわメロ! これが、楽しいなのね!」


「私も楽しいよフィフィ、それにね、私はフィフィが喜んでくれるのが一番うれしいんだ」


「まぁ、それは私もよメロ、あなたは私の一番だもの」


 二人は空中でお互いを愛し合う言葉を交わした

 二人は幸せだった。 お互いがお互いを思いやり、今自分たちが存在できていることをよろこんだ


「見て、街があるわ。 大きな建物も!」


「ほんとだ。 あれは城とかいう建物だね」


「城?」


「支配者が建てた建物だよ。 なんでそんなものを建てるのかは分からないけどね」


「ねーねー、私も欲しいわ」


「いいね、頼んでみよう」


 二人は城の広場に降り立った

 中庭のような場所で、衛兵たちがそこかしこに配置されている

 その中心に下りた二人を見て衛兵たちは慌てて取り囲む


「何者だ! ストノロア城に何用あって来た!」


「この城を私たちにくれないか? 私の可愛いフィフィが欲しがってるんだ」


「まぁメロ! 可愛いだなんて…。 あらあら、これは、これが恥ずかしいという感情? 照れるってこういう感じなのね!」


 フィフィは顔を赤くしてメロに抱き着く

 メロは愛おしそうにフィフィの頬にそっと指を這わせる


「なんだこいつらは? 訳の分からないことを!」


「とにかく捕縛しろ!」


 隊長らしき少しいい装備を着用した兵士が剣を二人に向け斬りかかった


「アンッ!」


 フィフィを斬りつける

 あっさりと背中を斬りつけれたことに兵士たちは少し拍子抜けして同時に斬りかかった


「おい、私のフィフィに何してるんだ?」


 メロはそれこそ悪魔のように醜悪な顔になっている

 それを見て兵たちはたじろいだ


「ひるむな! 簡単に斬られるような相手だ! 弱いぞ」


 隊長が笑いながら再びフィフィを斬りつけようと剣を振り下ろすが、その剣は届かなかった

 気づくと体長はグシャリという音と共に野球ボールくらいに丸められていた


「っひ! た、隊長が」


 メロは止まらない


「集積しろ」


 メロが手のひらを兵士たちに向けて握ると、兵士はまとめてボール状になった

 血液すら一瞬で沸騰する圧縮


「あぁ、大丈夫かい? 私のフィフィ、痛むかい?」

 

 涙を流すメロ


「大丈夫よ私のメロ。 もう治ったわ」


 傷口はすでにふさがっている


「あぁ、よかった。 君にもしものことがあったら私は」


「泣かないでメロ、私は絶対いなくならないから」


「フィフィ、君のためにこの城をプレゼントしよう。 それが君に傷をつけさせてしまった僕の罪滅ぼしさ。 ん? これは、この感情が罪悪感か!」


「すごいわメロ、どんどん感情を手に入れるのね!」


「あぁ、そうだよフィフィ、一緒に手に入れよう。 より何者かであるために」


 それから二人は城の人間を一人残らず殺しつくし、城を手に入れた

 そこには罪悪感は全くわかない

 その感情は二人の間だけで発生する感情だった


 城を手に入れて満足な二人は幸せそうだ

 二人の世界を築き上げている


 そして、二人はこの世界の知性ある者全てを殺しつくした

 自分たちにとって有益であるかないか、判断基準はそれだけだ


 誰もいなくなった静かな世界

 この世界には何もいなくなった


「つまらないわねメロ」


「そうだね。 次の世界に行こうか。 城はどうする?」


「またどこかで手に入れましょう」


「そうだね。 今度はすぐにくれればいいんだけど」


「くれるわよ。 メロは可愛いもの」


「フフフ、そう言ってくれると嬉しいな。 フィフィも可愛いよ」


 この世界から二人は消え、何もない空っぽな世界だけが残った


まもなくです

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