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集合と散在2

 神すら転移以外で超えるのに苦労する次元の壁をいとも簡単に破り、二人は裂けた空間から現れた

 たどり着いた世界はあまりにも普通で平和な世界

 魔物が出るわけでもなく、人が争うわけでもない

 人々は幸せに暮らしていた


「見てメロ、あんな世界とは全然違うわ」


「そうだねフィフィ、まずはここの住人に挨拶してみよう。 やり方は分かるよね?」


「えぇ、流れてきたゴミにやり方が描いてあったわ。 共有する?」


「頼むよ」


 二人は手をつなぎ、情報を共有しあった

 どんな情報もあの世界では不要なゴミとして流れてくる

 情報を二人で理解しあうと今いた場所から歩いて移動することにした

 体を得たばかりで歩くのは少しぎこちなかったが、それでもゆっくりと歩みを進めた


 しばらく歩くと街道に出た


「これ、知識にあるわ。 ここをまっすぐ歩けば街というものがあるらしいの」


「その情報、私にもあるよ。 人間、というものがそれを作っているらしい」


「人間、どんなのかしら? 私たちを認めてくれそう?」


「それは会ってみないとわからないよ」


 二人は好奇心半分、恐怖心半分で街へと歩き始めた

 街まではどうやらかなりの距離があったらしく、歩けど歩けどたどり着かない

 そのまま三日が経ったが、二人は一切休むことなく歩き続けた

 彼女らに疲れというものは存在しない

 周囲の不要物を自動で取り込み続け、エネルギーに変換するので食事も睡眠も必要としないのだ


 やがて街が見えてきた

 大きな街、人間が数十万人単位で暮らすこの世界きっての大きな街だった


「みて、あれが街だよ」


「えぇ、素晴らしいわ。 どんなものが住んでいるのかしら」


 二人は街の前まで歩み寄った

 その街には大きな門があり、門番が立っていた

 彼らは二人を見て騒ぎ始める

 何を騒いでいるのか分からなかったためそのまま近づいて行った


「初めまして皆さん、私たちはメロとフィフィです」


 ぺこりと頭を下げたメロにいきなり槍が突き刺さった

 衛兵が突き刺したのだ

 その行為がこの世界の命運を分けた


「え? あれ?」


 メロには何が何だかわからなかった

 自分の腹部に刺さっている槍を見つめる


「ば、化け物め! 街に近寄るな!」


 二人の姿はこの世界にはないあまりにも異形な姿

 魔物すら見たことのない人間たちにとって脅威にしか見えなかった


「い、痛い? これが、痛い、なんだ…」


「メロ! メロ! あぁ、なんてこと、私のメロが!」


 駆け寄ってメロの傷口を確認するフィフィ

 槍を異形の腕で引き抜いた


「グッ」


 痛そうにするメロの傷口に異形の手を当てると修復し始めた


「大丈夫? 大丈夫?」


 痛がるメロに声をかけて励ます

 

「早くあの化け物たちを倒すんだ! この国始まって以来の脅威だぞ!」


 次々と出てくる衛兵たちは槍を剣を構えて二人に向かってきた


「メロ、メロ、あいつら滅茶苦茶にしていいかしら…? あら? この感情…。 これが、怒り?」


「そうだよ、そうだよフィフィ、それが怒りだ。 私のために怒ってくれてるんだね?」


「えぇ、あなたのために、私、怒ってるわ」


 傷口を完全にふさぐとフィフィは立ち上がった

 

「こんな世界、散っちゃえばいいの」


 異形の左手を空に向けると、手がまるで花のように咲いた

 

「挨拶はできなかったけど、メロを傷つけちゃったから仕方ないのよ」


 悲しそうな顔でつぶやくフィフィ

 しかしその悲しみはこれから散る世界や人間に向けられたものではなく、挨拶ができなかったということと、大切なメロが傷ついたということだけに向けられていた


「えいっ」


 少女の少し間の抜けた声が響き、世界は飛び散って終わりを告げた

 

 ばらばらに崩壊した世界を見つめながら世界の狭間で漂う二人


「終わっちゃったね。 まぁしょうがないよ。 フィフィは悪くない」


 泣いているフィフィをあやすメロ

 

「これが、これが悲しいなのね?」


「うん、そうだよメロ。 今はその悲しみを楽しもう」


「ええ!」


 狭間の世界で二人は次の世界を目指した


二人は後々いろいろ関わってくる予定なので少し話を進めました

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