2-14
「呪いを振りまいて殺すとか言っときながらそんな暇もなく死んじゃってるじゃない。 役立たずね」
リゼラスとルーナがお互いに今後のことを話していると突如後ろで声がした
そこにはキュレスとグリドが立っていた
キュレスはすでにこちらに杖を構えている
「ほらリゼラス、そいつを抑えてなさい。 あんた事吹っ飛ばすから」
完全に操られ、アストの命令のまま動いているキュレスには姉のように慕っていたリゼラスのことも捨て駒としか映らなかった
「キュレス…。 ルーナ、お願い、あの子を殺さないで、あの子はただ操られているだけだから」
ルーナはうなずいてキュレスとリゼラスの間に入った
「ほら何してんのよ。 後ろから羽交い絞めにするなり引き倒すなりなんか役に立ってから死になさい」
冷たく言い放つキュレスを見つめる
「リゼラスさん、下がっててください。 今からあの二人を無力化します」
動かないリゼラスに痺れを切らしたキュレス
「あんた、なにしてんの? まぁいいわ、ついでに殺してあげる。 もう用済みだもの」
杖を振り上げて呪文を唱え始める
その間姫を守る騎士のようにグリドが前に出た
「行きます!」
素早く走り込み一瞬でグリドの前に移動するとみぞおちに拳を撃ち込んだ
「グオッ!」
手加減を最大限にしていたため気絶させるには至らなかったがもんどりうって倒れた
「何してんの役立たず! ふんっ、あんたも帰ったらアスト様に消してもらいなさい」
呪文を唱え終わったキュレスは灼熱の火球を二人に向かって放った
じりじりと地面を焼く火球は普通の人間ならば骨すら残らない温度だろう
「ディメンジョンホール」
力の使い方を理解したルーナにとって火球など取るに足らないものでしかなかった
空中に開いたほの暗い穴
そこに火球は吸い込まれていった
どこに繋がっているかもわからない次元の穴、中に入った者はエネルギーに変換されて消滅する
「な!? あたしのとっておきが!」
キュレスは驚いていた
これ以上に強い呪文となると詠唱時間が足りない
唱えさせてくれるほど相手は甘くないと理解しているからこの場は逃げに徹することにした
「ほら、いつまで寝てんのよ。 逃げるわよ!」
うずくまるグリドを無理やり立ち上がらせて呪文で飛び上がると逃げ出した
勝てる見込みのない戦いはしない、それに、相手の強さを見誤っていた
とてもではないが自分では敵わない。 それどころか七英騎士の誰も倒せる者はいないとさえ思った。 それほどまでに実力が違うことが一瞬で理解できた
「なんとか、退けました」
「やはりすごいな、君は…。 それほどの力を一体どうやって手に入れたんだ?」
「分からないんです。 あの時、私と妹に光が落ちたあの日、その時から私たちに変な力が宿ったんです。 私たちの両親はその光から私たちを守ろうとして死にました。 力は私たちを暴走させて… それで、あなたのお父さんとお母さんを…。 私は…。」
泣きそうなルーナをそっと抱きしめた
この子は本当に悪くない。 理解してあげたいと心から思った。 憎くはあるが、それでもリゼラスは彼女を許すと決めた。 そして許されるなら共にいたいと思った
「ありゃりゃ? これは一体どういうことぜな?」
エンジンをふかしながら立つ者がいた
「え? なんで、こんなところに?」
そこに立っていたのはパリケルだった
「その人、敵さんじゃなかったっけ? 勘違いぜな?」
疑問に思うパリケルを見てルーナは驚いた
ここはパリケルのいた世界ではない
なのになぜ彼女がいるのか分からなかった
三人はこれまでのいきさつを話し合う
この世界の魔王は死んだ
もうとどまる意味はない
パリケルに言われるがまま一度オルファスに戻ることになった
ルーナ自身も気になっていたのでパリケルの提案を受けることにした
もちろんリゼラスも共に行く
アストを止めるためにルーナと行動を共にすることにしたのだ
前の話を4日に投稿する予定だったのに間違えて他作品と一緒に投稿してた
ボケてる最近