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1-5

 やがて見えてくる街、建物が立ち並び、そこそこ大きな街であることが分かった

 その街の近くまで降り立つが、街から人の気配がしない

 街道を歩く人の姿もなく、物音すらたっていない


「誰も、いないの?」


 ひとまず街に入ってみることにし、ルーナは何の警戒もなく街に入った

 そこを突然魔法のようなものが襲う


「キャァ!」


 燃え盛る豪炎がルーナを襲うが、温かい空気のように感じるだけで、その身を焦がすには至らなかった

 やがて炎は消え、そこには何事もなったかのように無事なルーナが立っている


「ひるむな!全軍取り囲め!」


 どこからともなく声が聞こえ、街のあちこちから鎧を着た兵士たちが現れルーナを取り囲んだ

 その手には杖を持っている

 彼らは様々な魔法をルーナに打ち込んでくるが、それらすべては光魔法以外の魔法に完全耐性のあるルーナに効くことはなかった


「くそ!何なんだこの化け物は!」


 一人の兵士が言い放った言葉にショックを受け、その場にうずくまって謝り始めた


「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」


 それを見て兵士たちは攻撃の手を緩めた


「うろたえるな!相手は少女の姿をしているが得体のしれない化け物だ!」

「油断すればこちらがやられるぞ!」


 隊長らしき男の怒号が飛び、再び攻撃が激しくなった

 その中で、光属性を帯びた魔法がルーナに直撃し、背中にやけどのような傷を作る


「効いたぞ!聖魔法だ!聖魔法を撃てる者は最大出力で撃て!」


 そこから一方的に撃ち込まれ、小さく悲鳴を上げるルーナに構うことなく聖魔法が降り注いだ

 再生速度は異常に速いが、その傷が治る前に次の攻撃が当たり、新しい傷となることでルーナの体力をそいでいった


「いける!倒せるぞ!」


 やがて少女はピクリとも動かなくなった

 傷口も治っていない上に、おびただしい出血が彼女を着実に弱らせていることが分かった


「撃ち方やめ!」


 隊長が手をあげて制止する


「やったか?」


 一人の兵士が近づき確認する

 近づいて分かったが、確かに異様な翼、角、尻尾、そして体の毛並みがあるのだが、その顔は苦痛に歪み涙を流すただの少女の顔にしか見えなかった


「痛い、痛いよぉ…」


 か細い声が聞こえる

 兵士は報告を戸惑った


「どうした?生きているのか?」


「い、いえ、死んでいます」


 思わず兵士はそう答えていた


「そうか、皆よくやってくれた」

「宮廷魔導士様がこれの異様な気配を察知してくれていなかったらこの街は滅んでいただろうな…」


 ルーナに近づいた兵士はそうは思わなかった

 確かに下っ端だが魔導兵である自分にもその少女の力はびりびりと伝わってくる

 あれだけ攻撃を受けたのにそれでもこれほどの力を感じる

 しかし彼女には全く殺気がないのだ

 幾度となく行った訓練や魔獣討伐で殺気の気配は嫌というほど味わっている

 これほどまでに傷つけられたのに彼女はこちらに敵意を向けることなくただただ弱く謝り続けているのだ


「ごめんな‥さい…ごめ…ん…な、さい」


 兵士はそっと少女を抱きかかえる

 ぐったりとして手も足もだらんと垂れ、呼吸も弱い

 そのため遠目からはどう見ても死んでいるように見えた


「死体は自分が処分しておきます」


「あぁ、できるだけ街から離れた場所で処分しろ、何があるかわからんからな」


「ハッ!」


 下っ端の兵士はルーナを抱えて街から出ると街道から外れた森の中へ分け入っていった


 安全そうな場所まで来るとルーナを降ろして様子を見た

 苦しそうなものの、傷口は少しずつふさがっている

 彼は近くの川から水を汲んでくるとルーナにのませる

 弱弱しく水を飲み下すと、少し落ち着いたのか気を失ったようだ


「本当に宮廷魔導士様や隊長の言うように災厄の元凶なのかな?」

「僕にはとてもそうは見えない…」


 新人で下っ端である彼は入りたてでまだ顔も覚えられていない

 しばらく抜けていても気づかれもしないだろう

 彼はひとまず自分が子供のころこの森に作った秘密基地に運ぶことにした

 木を切って自分で組み立てた人二人が入るのがやっとの小さな小屋だが、ここならば誰にも見つかることなく過ごせるだろう

 少女が気絶したことで発せられていた異様な力の気配も幸い消えている

 しばらくは無事過ごせそうだが、問題は少女が目を覚ましてからのことだ

 もしこのことがばれれば自分は相応の処罰を受けるだろうし、今度こそ確実に少女は殺される

 もはや一人ではどうすればいいかわからなかった


 そこでふと思い出した

 近くに住む自分の師匠のことだ


 彼はこの森に隠れ住む賢者であり、かつてはその名を知られた素晴らしい魔導士である

 その彼ならば、師匠ならば少女を助けるすべを授けてくれるかもしれない

 彼の隠れ住む洞窟まではそう遠くない

 寝ているルーナを背負うとその洞窟へと歩き出した


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