2-11
あの少女は追いかけてこないが、一つのところにとどまれば自分の位置を把握しているらしい彼女にはすぐ追いつかれてしまうだろう
得体のしれない何かを持つ少女、あれには近づいてはいけないと思った
とにかく場所を転々と移動しようよ。 あいつ私たちに追いつけないみたいだし
そうね、そうしましょう
二人でそう決め再び魔王を探し始めた
相も変わらず気配は増え続けている
あの少女に遭遇しないよう気を付けながら世界中を回るしかないので動きは制限されるが、遭遇したらすぐに逃げればいい
この時はまだそう思っていた
それから一日で幾体かの操られた人を救い、自ら魔王の配下になったという者も撃破してその日を終えた
魔王の情報は未だ入らない
数日後、魔王が支配する数よりルーナが阻止する数の方が増えてきた
魔王はイライラし始めていることだろう
そろそろ本体が釣れるかもしれない
探してダメならばすべてのたくらみを阻止して釣ればいい
ルーナは目の前の敵を屠りながらそう考えた
ところ変わってとあるへんぴな村
異世界から来た少女が自分をかたどった人形と共に歩いている
この世界にはそのような技術はなく人目を引いているのがわかる
しかし人の数は数十人と少ないのでたいして気にならない
少女は情報を収集するため大きな町に行くことにした
「さてと、食料も買えたし行くとするぜな。 ここから一番近い街ってどこぜな?」
少女は村人に道を尋ねる
少女の持つ人形はカタカタと自立して歩いているので少し不気味に感じながらも彼女の気さくな雰囲気に村人は警戒心を抱くことはなかった
これもひとえに彼女の人柄がなせる業だろう
ここから一番近い街、人間とエルフが住む街トルレインへの道を聞き、少女パリケルは歩き出した
いや、横を歩く人形パリケルちゃん4号を変形させ、まるでバイクのような乗り物へと姿を変えさせた
パリケルちゃん4号にまたがるとそのまま走らせる
村人は不思議そうにそれを眺めたが、特に気にする様子もなく普段の仕事に戻って行った
生活がこの村だけで完結している彼らにとってパリケルの人形は、どこかの国で新しい技術が生み出されたんだろうくらいのものだった
エンジン音を響かせ街へと向かうパリケルは顔に風を浴びながら颯爽と街道を駆ける
サングラスをかける姿が意外と様になっており、見る人が見れば惚れるかもしれない
「この道を真っ直ぐか、でも距離があるぜな。 燃料は魔素を吸収するから大丈夫として、問題は宿があるかどうかだぜな。 まぁ、いざとなれば野宿すればいいか」
誰ともなく独り言をつぶやき、本革とお尻を優しく包み込むクッションによって長旅でも大丈夫なバイクで颯爽と走っていく
すると、前方に亜竜の一種であるベノムリザードが飛び出してきた
強さはBランクとかなり強い
しかしパリケルは意に介すことなくそのまま突き進む
このままでは激突してしまう
「ポチッとな」
ハンドルに付いたボタンを押すと、前輪の上部からガトリングが飛び出しベノムリザードをハチの巣にした
「ふむ、なかなかの高火力ぜな。 もっと改良して強くしてやるぜな」
パリケルはまるで頭を撫でるように4号のハンドル部位を撫でた
心なしか喜ぶように4号は機械音をあげる
パリケルのルーナ探しの旅が始まった
変形するロボットはロマン
昔っからトランスフォーマーのDVD借りてよく見てました