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2-10

 勇者として活動すると決めてからはとにかく素早く行動した

 自在に空を飛び、気配を察知しては降り立ってその気配の元を絶つ

 たとえどんな敵だろうとルーナの相手にはならなかった

 一撃のもとに屠る姿にその可愛らしい容姿も相まって勇者としての人気をどんどん上げていく


 ルーナは探知範囲を広げ、より大きな気配を求めて探し続けた

 しかしながら魔王は一向にその尻尾を掴ませない

 そんな中、教皇の時以来の大きな気配を探り当てた

 場所は巨大な樹海の奥地、周囲を曲がりくねった木々が囲む不気味な場所だった

 その気配がより強いところへと空から降り立ったルーナは周囲を見回してみる

 いかにも何かが出てきそうで思わず身震いした


サニー、気配がそこかしこにあるように感じるんだけど


うん、お姉ちゃんもやっぱりそう思った? なんだか囲まれてるみたい


 大きな気配は周囲を取り囲むように感じ、まるでこちらを監視するかのように動いていた

 一つかと思えば複数、増えたかと思えばまた一つに戻る

 一体何者なのか、何人いるのかがまるで分らない


 やがてその気配が接近してくるのが分かった

 取り囲みをを縮小しながらこちらに迫ってくる


来るよ、おねえちゃん!


 サニーの声が頭に響いた次の瞬間何かがこちらに飛んできた

 すぐにそれに気づき地面を蹴って飛び上がると立っていた場所に木の棘が突き刺さる

 宙に飛び上がったルーナは地面に脚をつける瞬間に何かに足を絡め捕られた

 

「キャぁ!」


 木のツルが足に巻き付いている

 そのまま空中に逆さに持ち上げられあわれもない姿をさらす

 だが気にしている余裕などない

 鋭くとがった木がルーナを刺し貫こうと迫ってきていた

 尻尾を振って自分を掴んでいるツルを切り落とし、地面に着地すると迫っていた木の槍を躱し体制を立て直した


「なかなかやるわね、さすがは勇者と行ったところかしら」


 木の陰から女性が出てきた

 薄い緑色の肌、頭に真っ黒なラフレシアのような花を咲かせ、体は下半身が植物に覆われ、上半身は胸は葉っぱで隠されているがかなりきわどい恰好である

 その女性はゆっくりとこちらに近づいてきた

 優雅な動きは品位を感じさせる


「わたくしはアルラウネのセイラ、この世界を樹海で覆いつくす存在ですわ」


 自らをそう名乗るセイラという女性の目にはあの時の教皇と同じ怪しい光が宿っていた

 恐らくこの女性も何かに憑かれている

 ルーナはそう理解するとセイラの背後に一瞬で回り込んだ

 セイラは理解する間もなく気絶させられる

 倒れたセイラからは教皇の時のように口から黒い人型が這い出てきた

 魔王の分身だ

 

「っち、お前うっざいんだよ!」


 幾度となく自分の支配した者を撃破され魔王は頭に来ているようだ

 今まで順調だった計画はルーナによって全く進まなくなっていた

 

 ルーナはその魔王の分身を蹴りで弾き飛ばすと分身は空中で粉々に砕けて消えた


「ん、んんん」


 セイラが目を覚ます

 

「あれ? ここはいったい」


 きょろきょろとあたりを見渡すセイラ

 何が起こったのか分かっていないようだ

 

「大丈夫ですか?」


 こちらを見上げるセイラ、頭の花は美しい桜色になっている

 

「あなたは? わたくしはなぜこのようなところにいるのでしょう?」


「私はルーナ、一応勇者をやらしてもらっています」


 ルーナはセイラに今起こっていたことを詳しく説明する

 魔王に取りつかれていたことを説明するとセイラは驚いた様子だった

 なんでも彼女はここの管理人で、少し前まではこの森はそれはそれは美しく、空気の澄んだ森だったそうだ

 禍々しい木々の生えた森を見てセイラは悲しそうな顔をした

 この森の植物はみな彼女の子供のようなものなんだそうだ

 アルラウネの仲間内でも特に力の強かった彼女は一人でこの森を任されており、その役割通り非常によく森を管理できていたのだが、魔王のせいで森はめちゃくちゃになっていた

 元に戻すにはそれなりの時間がかかるだろう


「こんなんじゃ仲間たちに顔向けできませんわ」


 シクシクと泣きながらセイラは言った

 しかし、自分を解き放ってくれたルーナに感謝し、これから森を元に戻すために忙しくなるので仲間を呼び寄せるためルーナに別れを告げた


 彼女の気配は今までで一番強かったのだが、魔王の居場所などは全く判明しなかった


一体どこにいるんだろうね?


分からないけど、一つずつしらみつぶしに探していけばきっと見つかるよ


 二人でそんなことを話していると、突如空から魔法が降り注いだ

 まるで隕石の大群が降ってくるがごとく叩き込まれる日の魔法は周囲の木々を焼き尽くしながらルーナに迫って来た


危ない!


 とっさにサニーが防御のために結界を展開し、それと同時にセイラの森に危害が及ばぬよう燃え上がる木を消火して空に飛びあがった


「見つけたわよ。 化け物!」


 見たことのない少女がそこにはいた

 少女は真っ白なゴスロリ服を着ており、自分より少し年上と言った印象だ


「アスト様の力、返してもらうわよ」


 少女は持っていた杖を振るうと、目の前に氷の槍が出現した

 その槍をルーナめがけて飛ばす

 それを躱すが、あまりの数の多さに躱し切れず、幾本かが肩や腕をかすめた

 そのとたん、力を奪われる感覚がルーナを襲った


「うっ、なに、今の…」

 

 得体のしれない何かを感じたルーナは一旦逃げることを選択した

 翼を広げ、一気にはためかせると、少女からみるみる離れていった


「もう! 逃がしちゃったじゃない!」


 怒る少女を尻目にルーナは遠くへ遠くへと飛んでいく

 あの少女は何者だろう? という疑問と共に


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