2-8
気配を探る
いくつかの気配を手繰りながら翼を広げて空を舞う姿は天使のようでもある
怪しい気配はまだまだ多い。 一つ一つ潰していてはキリがない
大きな気配のみを叩くことにした
ただ、この気配は未だに少しずつ増えている
大本を叩かない限り終わらないことは確実だ
ただ、大きな気配もいくつかあるのでそのどれが大本なのかわからない
とりあえず一番近い気配に向かう
お姉ちゃん、ここから東に気配発見。 近いよ
うん、わかった
進路を東に向けて空を飛ぶ
段々と近づく気配、この世界ではかなり大きなようだ
見えてきたのは真っ白な城がそびえたつ全てが白い街
何もかもが白いその街は住人の着ている服まで真っ白だった
時折歩いている旅人の色の違う衣装に違和感が出るほどである
人に見られないよう近くの人気のない場所に降り立つと街に向かった
大きな気配はこの街の教会のような場所から感じる
住人たちにこの街について話を聞いてみると、ここは教会が絶大な力を持っているらしく、教皇が王のようなものらしい
教皇は優しく慈愛に満ち、すべての人々が安心して暮らせる世界を目指しているらしいのだが、ここ最近教皇の様子がおかしいらしい
急に街を白く染めるように指示したり、ほんの少しの罪、例えば喧嘩でなぐってしまったなどの罪でも罪人を捕らえて死ぬまで閉じ込めておくよう言ったり、どんな罪だろうと許さず、子供だろうと容赦がないようで、街の住人はいつ捕まるとも知れない恐怖にビクビクしていた
教会からの大きな気配、教皇の凶行、恐らくはその教皇こそその気配の元であると考えた
ルーナはいきなり教会に行くことにした
今のこの街の状態はとてもではないが人が暮らすには不健全すぎる
なにせこの街から出ようとする住人も捕まって投獄されてしまうのだ
元凶をすぐに断つしかない
教会に入るとそこに務めていると思われるシスターや神父がこちらを一斉に向いた
誰も彼も一様に疲れ切って青ざめた顔をしていた
「やぁ、お祈りかい?」
そう声をかけてきたのは優しそうな神父、しかし彼の顔は頬はこけており、今にも倒れそうだ
「こっちへおいで、我らが神にお祈りをしよう」
優しくルーナの手を引くと大きなこの世界の神と思しき像の前に連れてこられた
威厳たっぷりにこちらを見る像は良く手入れがされており、これもまた真っ白だった
神父の行動を見よう見まねでまねてお祈りを済ませると神父は満足そうにうなずいてルーナの頭を撫でて自分の業務へと戻って行った
さて、お姉ちゃん、この光景動見ても異常だよね
うん、皆疲れ切ってる。 まるでゾンビみたい
一応教会の人に話を聞いてみた
やはり教皇の話が出るのだが、街で聞いた話とは違い、どれもこれも教皇をたたえるものだった
だが、どう見ても言っている姿が苦しそうだ
まるで無理やり言わされているようである
眼に涙を浮かべているシスターもいるので無理やりというのは間違いなさそうだ
しばらく教会内を見て回っていると、いつの間にか傍らに豪華な衣装をまとった男がいた
その男は他の教会関係者と違ってふくよかで、顔は精気に満ち、一見すると優しいイメージだが、あの禍々しい気配はこの男から漂っていた
恐らくは彼が教皇なのだろうとルーナは分かった
「やぁ、初めて見る顔だね。 教会に興味があるのかい?」
「は、はい」
あまりに突然話しかけられたので思わずそう答えてしまった
教皇は不気味に笑うとルーナの腕をつかんで教会を案内し始めた
手を放してくれないので仕方なくそのままついて行った
色々話してくるが、主だったことは教会のことと神について、自分たちの在り様についてなど教会においては普通のことばかり、とても怪しいところはないのだが、次に案内されたところは教会には似つかわしくない異質な場所だった