表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/384

2-7

 しばらく冒険者たちと隠れて待機していると、あの女がどこからともなく現れた

 まるでルーナの転移のようだが、ルーナの者とは違って現れ方が幽霊のようで気持ち悪い

 

 女はまた女性を抱えている。 どうやら攫われた女性は気絶しているようだ

 女は周囲を見渡すと叫んだ

 その叫び声はバンシーのように不気味で冒険者たちの心をえぐる

 しかし、女性が囚われているので自らを奮い立たせて女の前に立ちふさがった


「そこまでだ誘拐犯! 囚われていた女性たちは全員救出した! 観念して捕まることだな」


 女は出てきた冒険者を一瞥すると手を向けてブツブツとなにかを言った

 そのとたん、男冒険者の体が浮かび上がり、空中ではじけた


 あたりに飛び散る血と臓物と肉片、生臭い匂いがあたりを覆った

 

「なんだ…今の力は」


 女は再び手をこちらに向けてくる

 そして、ブツブツと何かを唱え始める

 

「危ない!」


 ルーナは女の手と冒険者の間に立ち、女の攻撃をまともに受けた

 体が浮き始めるが、ルーナへの影響はそれだけだった

 体が少しだけ振動したような気がしたが、特になにが起こるわけでもない

 

「なんでよぉおお!! 何で弾けないのぉおお!!」


 女は驚いたようだ。 ルーナを化け物を見るような目で見ている

 拘束されていた体を少し動かすと簡単に解けた

 

「今です!」


 ルーナの掛け声と共に冒険者は一斉に女を取り押さえた

 呪文を吐かないよう口をふさぎ、完全に拘束した

 ボサボサの髪を掻き上げると整った顔立ちの美女が現れた

 しかしその顔には大きな傷が横一文字に走っている

 彼女は屈辱に顔をゆがめる


「んぐぅうう!! ぐぐぅうう!!」


 何かを言っているが口をふさいでいるためわからない

 一旦口の布を外すと


「見るな! 見るなぁあああああ”!!」


 と叫んだ

 どうやら自分の顔にかなりのコンプレックスがあるようだ

 

「私をぉお! 見るなぁあああ!!」


 女は泣きわめいている

 ひとまずもう一度口を塞ぐとギルドへと連れ帰った

 犠牲者が一人出たことを報告し、攫われた女性たちは全て無事帰還したことも報告

 ルーナの大手柄だった

 これによりルーナはCランクへとランクアップする。 異例の速さらしい

 女の事情聴取が始まった

 前回針まみれの男が情報を吐こうとして何者かに殺されたこともあるので事情聴取は魔力を一切遮断する部屋で行われた

 彼女は今までのことを切々と語り始めた

 

 昔彼女はとある貴族の令嬢だったのだが、ある日馬車で親戚の家へ向かっている途中のこと、盗賊に襲われた

 盗賊は彼女を散々もてあそんだあと顔にナイフで大きな傷をつけて捨てた

 国でも随一の美貌を誇っていた彼女は醜い傷をつけられ絶望し、死のうかと考えていた時に不思議な声が聞こえてきたそうだ

 その声は、若く美しい女を百人殺して血を浴びれば再び美貌が戻ると言われそれを信じたらしい

 もちろんそんな話は嘘であることは周知の事実、しかし彼女は藁にも縋る思いで飛びついた

 その際頭に何か違和感を感じたが、目先の野望のために動いた

 

 そこまで言い終えるとルーナは彼女の頭を見てみた

 そこにはわずかだが嫌な感じの魔力の塊が見て取れる

 ルーナは彼女の頭に手をかざして解呪を試みた

 すると、女の顔にはさっきほどまでと打って変わって精気が満ち、赤みが射してきた

 

「私は、私はなんてことを…」


 どうやら呪いの類だったらしく、彼女の倫理観を捻じ曲げていたようだ

 それを取り除いたことで彼女は罪悪の念にかられてむせび泣く

 

 幸いなことに攫った女性たちは恐怖はしていたものの傷一つない

 それに、彼女は洗脳されていたといってもいい。 保護観察はつくものの、彼女の罪は許された

 呪いには裏切り者を殺す効果もあるようで、彼女が魔力遮断の部屋を出ても先の男のように干からびて死ぬことはなかった

 後悔し続けている彼女をひとまず落ち着かせて、身柄はギルドが保護することとなった

 操っていた声の正体については彼女も何もわからないらしく、ひとまず保留となる

 

 もしかしたら陰で何者かが世界を混乱に貶めようとしているのかもしれない

 ルーナとサニーはそう考え、次なる気配を探してまた旅立つのだった



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ